久々の「あつ森」で大騒ぎした話

私には、少ないながらも、長くお付き合いのある友人がいる。
それぞれ、住んでいる場所も年齢も性別も性格もバラバラだが、私のような飽き性で、腐ったオタクと仲良くしてくれるのだから、本当にありがたい存在だ。心から尊敬している方々ばかりだ。

そんな長年の友のひとり、Aさんが最近、Xであつ森について呟いていた。私はすっかりご無沙汰になっていて、自分の島がずっと気になっていたが、なかなかゲームを立ち上げられなかった。億劫になっていた。プレイ総時間約600時間、自分がやりたいことを見失って、一種の燃え尽き症候群のようになっていたのだ。

もちろん、それは私の遊び方が極端だっただけで、「あつ森」そのものは、とても面白い。前作の「とび森」では、家具集めやすれ違い通信、別の友人との夜な夜な南の島ツアー等、心ゆくまで娯楽に興じた。今回の「あつ森」は、島まるごと改造できると知り、発売前からワクワクしていた。当時、Switchがなかなか手に入らず、早く遊びたいと日々ドキドキしていた。
何度かの抽選の末、本体購入の権利を得た時は、「これで、あつ森ができる!」の一念しかなかったし、入れたソフトもそれ一作。やっと住民になれた喜びを、画面を見る度に噛み締めた。スタートすれば、予想通り、日常を忘れるほど癒される空間だった。幸せな時間だった。

その一方で、私はやたらと熱中しすぎた。無駄に凝り性な一面が発揮されてしまった。
島クリエイトが解放されるや否や、元の島の地形がまったく残らないほどに整地しまくった。道も、敷地も、川さえも直線的に仕切った。家具を集め、材料を揃えて、思い描いていた施設を次々と建てた。
三段の高低差がある住宅街、果実園、遊園地、野外のBAR、温泉街、野点が出来そうな竹林の和室、ほか諸々。夢中になって、自分の理想を形にしていった。素敵な島にしたかった。

結果、まったりスローライフとはほど遠い、多忙すぎる島内での生活になってしまった。気ままな島DAYS、どころの騒ぎではなくなった。仕事終わりの帰宅後、あるいは休日、ほとんどの時間を「あつ森」で過ごし、なにかあると攻略サイトをチェックしにいく毎日だった。欲しいアイテムがあれば、某掲示板に張りついて、物々交換してもらうのが日課になった。

当然、そこまですれば、いずれ出来ることがなくなってしまう。我が島は、自分の想いをいっぱいに詰め込み、どこもお気に入りばかりで、だからこそ各所は作り替える気になれなかった。広めのスペースはほぼ使い切ったため、新しく開拓するスペースが、どんどん狭くなった。こまかな飛び地ばかりになった。また、アイデアも浮かんでこなかった。
そしてある日、「もう疲れちゃったかも...」と、気力ががくっと下がってしまった。集中が切れてしまったのだ。

そんな塩梅で、「あつ森」から離れたのだが、ここ数日、リプのやりとりで、友人も同じように熱狂し、そこから長くログインしなかった状態からの、再び島ライフ、と知った。なるほど、それなら私も、と勇気をもらい、うちの「パラネシアン島」に帰ってみた。住人が「お前、2年10ヶ月ぶりだぞ!」等、教えてくれたので、そんな長期不在だったのか私は、と驚きつつ、大好きな住人たちに挨拶されて、とても嬉しかった。

アプデにより、新機能として料理レシピが増えていた。材料さえあれば、自炊が可能になり、「畑を作らねば!」など、俄然、意欲が湧いてきた。
苗を買ったりコンプリートしてない美術品を集めたり。パニーの広場を充実させたり。喫茶店も開店させたりと、まだまだ、手つかずの要素がある、というのは、私にとっては十分な魅力だった。

さらに、もしかしたら近々、友人が一緒に遊んでくれるかもしれない、というお返事があった。あまりの喜びに、私は、予定は未定だというのに、ソワソワと落ち着きをなくした。お互い、都合の合う日時の調整に苦労するかと思うが、とにかく興奮し、歓喜し、その日が待ち遠しくてたまらなくなった。

「よし!少ないけどせっかくレシピを覚えたし!遊びに来てくれた時の、おもてなし料理を作ろう!」

とち狂った私は、唐突に、おもてなしの夕食を用意すると決めた。我ながら、おままごとに誘われた子供が、砂場で「最高の泥おにぎりをあげなきゃ!」とはしゃぐみたいだな、と思ったが、その時は名案だと密かに自画自賛した。歓迎したい気持ちに取り憑かれていた。多分、クリスマスイブの深夜だったこともあり、諸々がおかしな具合に噛み合ってしまったのだろう。まあ、世間のイベントに関わらず、いつも私は様子が妙ではあるのだが。

「畑の横に、採れたて野菜でクッキング、お食事できるよ、みたいにしよう!旗(?)を立てたら、歓迎っぽくていいかもしれない!」

まずは、野菜を育てる区画を整備し、そこにキッチンとテーブルを置いて、以前のハロウィンで収穫してあったカボチャでスープを作った。最初は、それだけのつもりだった。材料がないし、夜中だし(?)、復帰して間もないし、と。

「いやでも、なにか魚が釣れたら、もう一品、増やせるよね!」

繰り返すが、クリスマスイブの午後11時半くらいである。もう少ししたら、日付が変わろうと言う時間帯だ。寝る方もいれば、聖夜に盛りあがっている方もいるだろう時に、私はやおらゲームの海で釣りを始めた。おもてなししたいんだ!と、やたら張り切ってしまった。

「桟橋付近だと、カジキやマグロがいるんだよね。この辺からトライしてみよう!」

久しぶりだったが、幸運にも早々に、お目当てのカジキが釣れた。「これはカジキのカルパッチョが作れる!」と、私のテンションはさらに上がった。スープと魚料理で、なかなかいいんじゃないか?と、ひとりで悦に入った。

ここでやめておけば、まだ微笑ましい逸話になったかもしれない。「今年のイブは、あつ森で迎えたんだよ!」と笑い話になっただろう。

...が
「メインディッシュは二品、欲しいよねー!やっぱり祝い事なら鯛だよ鯛!」

この辺から、私は本当に変だった。ちょっとどうかしていた。いかに美味しい料理を作ろうが、ゲームはゲーム。メインディッシュなんて、どうだっていいんだよ、と我に返った今なら分かるが、ハイになってしまった私は、次の狙いを鯛に決め、サイトで魚影を確認した。釣竿をわざわざ金の釣竿に変えた。アジでもヒラメでも、ましてやスズキでもない、鯛こそ我々の再会を祝うにふさわしい、とかなんとか、自分でも意味がわからない勢いだったが、とにかく真剣だった。大真面目にそう考えてしまった。

正直、レア魚を釣りたい時、鯛がよく引っかかるので、まあ少し釣りを続けたら、鯛いけるでしょ、と甘く考えていたところはあった。あまり手間はかからないはずだった。ぱぱっと釣って、ささっと料理して、このほとばしる想いを料理にするのだ、なんてアホな試みに胸を踊らせていた。調子に乗った私の脳内ではなぜか、長州力の「パワー・ホール」が流れていた。作曲者ヒラサワの大ファンだから、と言ってしまえば、それまでなのだが。

「鯛...鯛一匹でいいんだよ...。なんでなんだよ...」

けれど、そんな時に限って、鯛が釣れない。まったく釣れない。レア魚のリュウグウノツカイばっかり何匹も当ててしまう。嬉しいのに、嬉しくない。今はお前を求めていない。私は鯛をゲットして、アクアパッツァとやらを作りたいだけなのに。想像してなかった事態に、私は焦り、戦いた。意気消沈していった。

いつの間にか1時間、2時間と経過した。クリスマスイブは、とっくにイブではなくなっていた。眠気もどんどん強くなり、自分がなんでこんなに必死なのかと顧みる余裕もなく、

「Aちゃーん...鯛が釣れないよー。鯛料理でお出迎えしたかったのにー。鯛が釣れないんだよ、Aちゃーん...」

なんと、友人の名を呼びながら、私は半泣きになっていた。共にあったはずの長州もヒラサワも、どこかに消えてしまっていた。勝手に始めた「おもてなしメインディッシュ二品目」なのに、勝手に名前を呟かれ、さぞ友は呆れるだろう。あるいは、爆笑してくれるかもしれない。

「鯛は諦めて、別のにしようかな...」

いよいよ目が霞んできた私は、もうワカメのスープでいいじゃない、とはじめの目標すら捨てた。とんだランクダウンだが、今の私には精一杯なのだと割り切ろうとした。ワカメなら、浅瀬を潜れば、いらないほど採れる。下手するとスズキより容易い。眠いし、目的のものは捕れないしで、私は海に潜ることにした。

「Aちゃーーーーん! ワカメが手に入らないよー!ロブスターとかイソギンチャクばっかりだよー!私、ワカメのスープすら作れないBBAだよーー!」

知らんがな、という有様だ。完全にイカれてきているので、もう寝ろ、といった状態だ。さすがにご近所迷惑なため、ぶつぶつと口の中で叫んだだけだったが、それにしたって取り乱しすぎだ。騒がしすぎる。私が「あつ森」をやっていると、だいたい、こんな風になってしまう。のめり込んでしまうのだ。

それだけの魔力が、「あつ森」にはある。好きに過ごしていい、あったかい居場所。愉快な島ライフ。私のように、ムキになってしまう方もいるだろう。ちっともリゾートにらならない日もあるだろう。でも、楽しいのは間違いないのだ。新要素の「料理レシピ」が増えただけで、謎の行動に走った私がいるように。

その夜の戦果は、格闘(?)すること約2時間半、胸にもう一度パワー・ホールを響かせて、無事に鯛を釣り上げた。念願のアクアパッツァを作れた。ついでにパンプキンパイも。オレンジスムージーも。主食からデザートまで、しっかり数品、整えられた。スープだけのつもりだったおもてなしディナーは、そこそこ見栄えがよくなった。

ようやく寝られる安堵感と、料理を5品も準備できた達成感で、私はしばらく、並べた品を眺めては、口元をだらしなく緩めた。あつ森内での、何年かぶりの高揚だった。

いい大人が泣いて笑って、一晩でてんやわんわし、どっぷりハマりこんだのだが、以来、私は毎日、また自分の島にやってきては、こまかな部分を修正している。性懲りもなく、歓迎のディナーメニューを模索している。住民たちと触れ合い、はにわを集め、今度こそ美術品をコンプリートしたい、青い薔薇も作りたい、と、前よりいくらかのんびり、島でのひとときを満喫している。

最後に。
ここに、私の「パラネシアン島」の夢番地を記しておく。

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もし、お時間と興味などがあれば、よかったら夢見で遊びに来てください。
私の、愛と情熱と、こだわりと、若干の狂いっぷりが、ぜひ伝わるといいなと願っています。
文字通り「夢で逢いましょう」
ちなみにうちの住民たちも、自分なりによりすぐりの可愛い子ばかりですよ。

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