成人のお祝い
息子の「着たい」にこたえたい。
中学生の時、浴衣を着て同級生と花火大会を楽しんでいました。あれから六年経ちますが、その体験がよかったそうで、今年の夏、また着たいと話してくれました。そこで、成人式に着物をすすめてみると、
「うん、着るでしょ。着物、着てみたい。〝和〟って感じがする」
と、思いがけない返事がありました。一生に一度の新成人のお祝いに、記念に残ることをしたい。どんな着物がいいだろうと、想いをめぐらせます。
平成四年四月一日。法改正で、成人年齢が二十歳から十八歳に引き下げられました。同じ年に、息子は十八歳を迎えました。
いわゆる成人式は、二十歳が対象でした。令和五年の成人の日は、「二十歳の集い」として、ほとんどの自治体で、本来の「新成人」がいない成人式が開催されていました。これについては、様々な問題提起がありますが、当事者本人はというと、成人の日は大学受験の真っただ中で式典どころではありませんでした。ぜひ二十歳で、お祝いの日を迎えたいところです。
早速、男性の着物を探しはじめました。生地はどんなものがあるのだろう。紬はふだん着で式典には向かないかな、縮緬になるのかな。あ、御召なら地織模様があってかっこいいかも。色は、黒・紺・グレーが無難なところだよね。えーっと、帯は角帯。羽織は着物とアンサンブルで、羽織の裏地もこだわりたいな。羽織紐は留めやすいものにして、そうそう、長襦袢や肌着、草履も忘れてはいけないなあ。と、お金のことはさておき、妄想がどんどん大きくなりました。
ところで、呉服店では、振袖はよく見かけるものの、男性用の着物は見かけません。男性の店員さんに聞くと、最近では、男性の着物は女性用の反物で仕立てることが多いとか。ただ、着用される方の腕の長さによっては、幅の広い男性用の反物でないと、裄が足りなくなるようです。
別の呉服店も訪ねてみました。店頭には、女性向けの小紋の反物が並んでいます。「男性物は手に入りにくいと聞いたのですが」、と話すと、奥から出して見せてくれました。数は少ないけれど、お願いすれば、探して入荷してくれるそうです。ちなみに、そのお店で見せていただいた着物のざっくりした見積は、一式揃えると四十万円くらい。
化繊のものにすると、もう少し安くなるのですが、金額だけ見ると、やっぱり考えこみます。長く着ることができる着物、と考えると、高くはない気もします。安いものにすると、傷みやすいかもしれないし、悩みどころです。今度は、レンタルも探してみようと思います。
成人年齢を迎える家族をお持ちの方は、節目のお祝いに着物を用意するかどうか、同じように悩み始めているのではないでしょうか。娘なら「振袖」ですが、息子となると、入学式と成人式の両方で活用できる「スーツ」を準備する方が多いようです。それでも、成人男性へのお祝いに、贈り物として着物があったらいいな、と思う気持ちは変わりません。
「二十歳の集い」まで、あと二年。着物への想いをかたちに残して、そして、期待に応えたい。
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