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追憶 夏の音 風 ひかり

日々のあれこれは、浮かんで消える。
浮かんでは、消える。

このところのあまりの暑さに
風鈴をさげてみた。
庭で風に揺れる様をぼんやりと眺めていたら、
幼き頃、亡き祖母が買い求め、縁側に下げていた風鈴の音や色形が記憶のそこで動き出す。

幼い私は、縁側に寝そべり青空にくっきりとした入道雲を眺めながら、その音色をきいていた。
ただ、ただ、それだけ。
風が吹く。
   風鈴を揺らす。

風鈴の下にぶら下がっている長細い紙は、なんという名前なのだろう。
それが、風に吹かれ宙を行ったり来たり、 
くるくる ひらり
    ひらり くるくる
ああ、もう少し。
    次の風で鳴るかな。

ぼんやり眺めながら、夏の空気や風、風鈴と私は一体になっていた時間。

やがてうまい具合に、風鈴から音色がひびく。

ちりーん、ちりーん。

夏の空と空気に、風鈴の音が放たれる。
ひととき、打ち水のような涼やかさに浸る。

遠い夏の記憶。
永遠のような、一瞬のような、思い出を抱きしめる。
追憶も、また たち現れては消える。




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