きのうと、今日
ねえねえ、きょうのぼくと、きのうのぼく。どこがちがうでしょう?
朝の会が始まる前の教室。さとくんが話しかけてきた。
えー?
うーん、と。
どこかなぁ?
身長が2メートルのびた?
などと、お笑い半分に返していると、
じゃじゃーん!
なんと!ここの歯がぬけたの。
いーっ という顔をして、下の歯を見せてくれた。
ほうほう。
これはいい空間ができましたな!
ここからプリンやゼリーをニュルニュル出せるね!
歯抜け記念日おめでとう!
そういうと、さとくんはにやにやして納得!という顔をし、着席した。
歯がぬける。
8歳の子どもにとって、それは自分が大きくなることを実感出来る変化なのだろう。ついこの前までしっかりと根をはっていた歯がグラグラし始めて、ついに抜ける。そして、その、全貌を目の前に現す。
ほほう、こいつだったのかあ。
しげしげと眺める。
ちょいと舌で口の中を確かめてみたり、鏡をみながら大きく口を開けて抜けた歯の跡を眺めたり、感じたりしてみる。
おや。
なんか、ちっこいのが出てきてる。
子どもにとって歯が抜けることというのは、昨日の自分と地続きでありながらも、段差の大きい階段を上がったような感じなのかな。
もう、すっかり大人になった私にその感覚は思い起こせない。
小さな変化だけど、大きな変化。
だから、子どもたちが歯が抜けた〜!と叫ぶと
歯抜け記念日おめでとう
と伝え、金色の折り紙を入れた小さなビニール袋に入れて持ち帰ってもらう。
赤ちゃんのころ、可愛い歯ぐきから姿を現し、ここまで体を大きくするために、たくさんはたらいてくれた、乳歯。その役目を終え、永久歯にバトンタッチする。
まさにそんな時期を生きている子どもたち。
昨日の僕と今日の僕、同じようででも、違う。
大きくなってるもの、ね。
ああ、君たちは今を生き、これからを生きていく。
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