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市場動向の確認と経済ニュースの注目点(7/7~7/13)

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<マーケットチェック>

各国選挙の影響などを注視していましたが、米国のCPIや日本政府の為替介入などイベントの多い週となりました。米国の動きを見ていますと、短期的にはトレンドの変化点となる可能性が出て来ている可能性があると感じます。
 

株価


株価は週末にかけて大きく動きました。これは米国の株価が特に個別で大きく動いたことにあります。また、日本株はこのところ、上昇ピッチが速く、それが円安による業績修正を素直に織り込んできていたこともあったため、為替には敏感であることを改めて示しました。日米ともに物色が偏っていたこともあり、何らかのきっかけがあれば反動が大きくなる可能性があることを、示したといえます。
米国の状況を見てみると、11日に発表されたCPIの数字はマーケット参加者から見てかなり安心できるものであったと思います。コアCPIの値は年率0.8%ですから、インフレ退治に成功したと言えそうです。コアサービス(除く住宅)も問題だったわけですが、これも明確に鎮静化しており、文句を付けるのが難しい内容です。
これだけ物価が鎮静化すると、景気も鈍化しているのではないかとみられるわけですが、NYの物色を見ている限りその様な懸念はしていないようで、「インフレ鎮静化は起きているものの、景気の心配はする必要がない」と判断しているようです。そうなると、大型テック中心の物色から中小型も含めたローテーションが大きくなる可能性が出て来ています。
変動が大きくなっている日本株に少しだけコメントしておきます。チャートで見ると金曜日の下げで一旦高値を付けたように見えますが、騰落レシオや先導株比率で見たテクニカルな過熱感は強くありません。外国人投資家は6月第4週~7月第1週に1.5兆円(現物+先物)買い戻していますが、4月以降6月第3週まで2.1兆円売り越していたので、一部買戻しに過ぎません。ドルベースの日経平均は2021年2月の高値をまだ抜いていないので、日本株を依然出遅れとみる外国人投資家は多いと考えられます。
 

金利


日銀が9日に開催した銀行グループを対象とした債券市場参加者会合では、2年後の国債買い入れ額として月3兆円程度が望ましいとの意見が多数あったことが複数の関係者の話で明らかになりました。
同会合に先立って日銀が参加金融機関を対象に実施した調査では、減額の幅やペースなどについて多様な意見が出されていますが、複数の関係者によれば、9日の会合ではメガバンクの1行が、買い入れ額を段階的に減らして月間1兆円とすることを主張したそうです。メガバンクは相対的に体力があり、日銀の買い入れ額を早い段階で縮小することを支持しているようです。一方で、地方銀行などは緩やかな減額を主張したとみられています。個人的には、日本の金融機関が思った以上に買い余力があるのだなと感じました。また、米国も秋口以降の政策金利引き下げの確度が高まってきたこともあり、金利が上昇すると言ってもその幅は限られてきている様に感じます。
 

為替


米国でインフレ鎮静化を示す指標が出てきたことで、米国の政策金利は引き下げ方向であれば、日銀が金融引き締め方向に動いていることで、円安トレンドの反転。少なくとも円安の勢いが鈍りそうな局面で、日本政府が週末にかけ介入を行ったことで激しい値動きとなりました。急速な円高が介入なしで発生しているならばこれは「大きい巻き戻しのスタート」の可能性も意識する必要があったわけですが、報道通り、介入によって引き起こされたものであれば、フロー的には引き続きしぶとく円安水準に留まるのかなと思いました。
 
 
 

<注目したニュース記事>


7/7日経 太陽光、迫る大量廃棄

<要約>
東日本大震災後の急速な普及に伴い、多くの太陽光パネルが2035年頃に耐用年数を迎え、大量廃棄の問題が顕在化します。政府はリサイクル義務化を検討していますが、不法投棄防止や発電事業の継続に関する対策はまだ不十分です。

リサイクルには高度な技術とコストが必要で、有害物質の扱いも課題です。特に輸入パネルの多くが中国製であり、有害物質の情報開示が不十分な点が問題となっています。経済産業省や環境省の推計によると、年間数十万トンのパネル廃棄が見込まれており、埋め立て処分の限界も指摘されています。

再資源化コストの高さや一時保管場所の確保など、多くのハードルが存在します。さらに、リサイクル義務化が進む中で、不法投棄の増加を防ぐための対策も必要です。国際的な規格統一やデータベースの整備なども求められています。

将来の大量廃業を防ぐためには、持続可能な発電事業者へのインセンティブや配慮が必要です。再生可能エネルギーの普及には、ライフサイクルアセスメント(LCA)の視点から環境負荷を総合的に評価し、製造から廃棄までの環境対策を進めることが重要です。

<河北コメント>
電力の大量消費とCO2削減を両立させることの必要性から、今後も様々な技術が出て来ると考えられますが、技術の果断な導入と共に、それらを導入することによる環境負荷も考えなければなりません。
投資でも新技術を評価する際に、製造から廃棄までを踏まえた環境コストまで考えて、市場規模を評価していく視点が必要になります。

7/8日経 株式持ち合いは日本だけか

<要約>
株式保有を巡る議論が活発化しています。取引維持のための「持ち合い」だけでなく、売買目的での「純投資」にも関心が高まっています。長年持ち合い問題を分析してきた専門家は、近年のガバナンス上の問題提起により、企業が株式保有の合理性を問われることが増えていると指摘します。

バブル時には5割を超えていた広義の株式持ち合い比率は現在1割強にまで減少しましたが、ゼロになることは難しいと考えられています。将来のユニコーン育成や地元企業へのリスクマネー供給など、持ち合いには一定の意義があるためです。

国際比較によると、企業の株式保有は日本特有の問題ではなく、ドイツや他の地域でも見られます。日本の民間企業による株式保有比率は2割で、中国・欧州の約1割、米国の3%と比べて高い水準です。

近年、金融庁は企業の純投資目的の株式保有に対する監視を強化しています。企業が投資家への説明を怠らないよう、保有株の開示制度も整備されています。

今後、企業が株式を保有する意義やガバナンスの在り方について、さらに議論を深めることが求められます。

<河北コメント>
 株価上昇と投資家からの要請もあって、株式持ち合いは急速に解消されてきています。純投資であったとしてもそもそも企業が株式投資をするのかという疑問を解消する事は出来ないでしょう。基本的には戦略的投資に限られてくると思います。
 ただ、ポイントとなるのはどの様に持合いを解消し、自分達の資本構成を変えていくのかというところで、日本ではその議論がしっかりと出来ていないと思います。今後そのような議論を展開していきたいと思っています。

7/9日経 半導体再興へ5兆円計画

<要約>
ソニーグループや三菱電機を含む日本の主要半導体メーカー8社が、2029年までに5兆円規模の半導体投資を行う計画です。AIや脱炭素市場の拡大を視野に、電力制御のパワー半導体や画像センサーの増産を進め、経済安全保障上の重要な物資としての半導体産業の再興を目指します。

財務省の法人企業統計調査によると、半導体関連の設備投資は2022年度に2兆1085億円と、5年間で30%増加しました。製造業全体に占める割合も11%から13%に上昇し、今後も継続的に設備投資を牽引する見込みです。

各企業の投資計画
ソニーグループ:半導体画像センサーの増産に21~26年度に約1兆6000億円を投じ、長崎県と熊本県で新工場を設立します。
三菱電機:炭化ケイ素(SiC)製のパワー半導体生産能力を26年度までに5倍に増強し、熊本県内に約1000億円を投じて新工場棟を建設します。
東芝とローム:両社で約3800億円を投資し、パワー半導体の増産を図ります。

背景と今後の展望
日本の半導体市場は1988年に世界シェア50%を占めていましたが、90年代以降、韓国や台湾の企業が台頭し、日本企業は先端開発から相次いで撤退しました。近年、米中対立や新型コロナウイルスの影響で、半導体の国内生産能力確保の重要性が再認識されています。

AIや電気自動車(EV)の市場拡大に伴い、電力効率を向上させるパワー半導体や、最先端の頭脳用半導体の需要が増加しています。ラピダスは北海道千歳市で2ナノメートル技術の最先端半導体の生産を目指し、25年4月に試作ラインを稼働させる計画です。

これらの巨額投資により、日本の半導体産業は再び世界の競争力を取り戻すことを目指しており、国内設備投資の重要な推進力となるでしょう。

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