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人生の事あるごとにそばにいた神田沙也加さん

【※アイプラ(IDOLY PRIDE)のネタバレがあります】


 希望と絶望が交錯する春。
 こと2022年の春において、個人的に絶望感のほうが圧倒的に強いのは、神田沙也加さんを思い出してしまうからだろう。

 春で神田さんといえばやはりこの曲である。

♪First Step/長瀬麻奈(神田沙也加)(2020)

 春だ。春が歌っている。パフォーマンスから季節を感じるのは不思議な感覚だ。

 この曲はあくまで『IDOLY PRIDE』の長瀬麻奈(ながせ まな)として歌っている。彼女はアイドル界の頂点に立とうとした矢先、不慮の事故で帰らぬ人となった。このアニメ1話は展開が早すぎて初見時は感情移入出来なかったのだが、今となってはここまで神田さんを重ねてしまうキャラクターも他に無いと思う。

 私にとって神田沙也加さんとは何だったのか。特別ファンでも無かったのに、どうして心に穴が開いたような気持ちが今も続いているのか。彼女の歌ってきた楽曲を中心に振り返りながら、その答えを探す。


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♪ever since/SAYAKA(2002)

 デビュー当初はSAYAKAと名乗った。この頃はまだ高校生だが、自ら作詞もしている初期の楽曲はどれもクールに歌いこなしている。母親の松田聖子さんのアイドル時代とは全くの別物であり、七光りという負の認識は私の脳内から早々に消え、あくまで一人の女性歌手として見て凄いオーラを感じていた。幼いながらも精一杯背伸びして歌おうとする姿勢が歌声から感じ取れる。

♪流星/神田沙也加(2011)

 高校卒業後、一時的な活動休止の末、神田沙也加として活動を再開した。
 それからしばらくは舞台出演がメインとなっていたが、デビュー10周年となる2011年は、6年ぶりのアルバムリリース、初のワンマンライブ開催、紅白に親子で出場と、歌手活動も再び盛んに行われるようになった。この頃には現在の歌い方が確立されていたように思う。

♪生まれてはじめて/神田沙也加(2014)

 神田さん本人にとっても運命が変わったという『アナと雪の女王』への出演と劇中歌唱。それまでJ-POPでしか彼女の歌声を聴いてこなかった私は当時驚いた記憶がある。子役4人と共に歌う動画からは歌のおねえさん感も出ている。

♪FLYING FAFNIR/TRUSTRICK(2015)

 と思いきや今度はバンドメンバーを引き連れてアニソンを歌い出す。この曲でアニサマへの出演も果たし、私はまさに“生まれてはじめて”彼女を生で見た。

♪longing/ユナ(神田沙也加)(2017)

 劇場版『ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』のARアイドル・ユナの声優と歌唱も担当している。世間的にはアナ雪のイメージが強いかもしれないが、アニオタの我々からすれば神田さんは紛れもない「声優」であり「アニソン」歌手だった。


『FNS歌謡祭』出演(マイ・フェア・レディ)(2021)

 これをリアルタイムで観た時は、生前最後のテレビ出演になるとは思ってもみなかった。本当につい最近の、昨年12月8日のことである。今見返しても、大好きなミュージカルを伸び伸びとやっているようにしか感じ取れない。不思議なものである。


私の想い

 振り返ると気付くのは、私は神田沙也加さんを見ようとして見たことはほぼ無いということ。ただ、習慣的に観ていた『Mステ』でたまたま歌っていたり、バラエティー番組でアイスの実のCMが流れたり、アナ雪の告知で『バイキング』に出ていたり、他の声優目当てで観に行ったアニサマで彼女の歌声に聞き惚れたりと、私の36年の人生において、事あるごとに神田沙也加さんはそばに居た。

 J-POPからアニソンからバンドからミュージカルまで、多彩なジャンルを安定して歌いこなせる女性歌手はそんなに多くないように思う。そして、どんなジャンルでも必ず印象に残る歌声を響かせてくれた。おそらく本当に歌うことが好きなのだろう。失ってから彼女の偉大さに気付く自分が情けない。もっとしっかり応援しておけば良かったと後悔が絶えない。これが心に空いた穴の正体なのだろうか。


 改めて、ご冥福をお祈り申し上げます。


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