見出し画像

「きみたちはどういきるか」感想

巨匠から私たちに渡されたバトン

 「きみたちはどう生きるか」の感想です。この作品はアニメーションを通した描いた、彼の自伝だと感じました。ジブリ映画が好きな方はぜひ観ることをお勧めします。

  1. 素晴らしい映像美と音響

  2. 積み木

  3. インコ大王

  4. 斬新すぎるヒロイン

  5. 託されたバトン

素晴らしい映像美と音響

 映像美はジブリ作品の中でも最高の物と言っていい程、素晴らしいものでした。美しくも不気味な異世界やまるで実在するかのよう精巧に描かれた異世界の住人たちはさすが、宮崎監督です。特に最初の空襲の描写は空襲を経験した方が描いているだけあって、燃える街やそれ怯え戸惑う人々がありありと描かれていました。また、音響も素晴らしかった。疎開先の家から聞こえる虫のさざめきと風が木を揺らす音は、幼少期田舎に住んでいたことがある私がふとその頃を思い出して懐かしさを覚える程、よくできていました。今作は映像はもちろん、演出にも力が入っているなと感じました。

積み木

 今作を象徴するのはやはりこれでしょう。異世界の創造主が積んでいた積み木。恐らくこれは監督にとってのジブリとこの世界を表現しているのではと感じました。創造主は積み木が崩れないよう手を尽くしますがそれでも保つの精一杯です。そこで創造主は主人公に三つの積み木を与え、三日に一つ積めと言います。しかし主人公はそれを拒みます。その時、異世界の住人たちのまとめ役であるインコ大王が無理やりその積み木を積み、異世界を台無しにしてしまいます。これは、恐らくどんな物でも無理やり保とうとすればせっかく積んだ積み木が崩れるように台無しになってしまうという訓戒でしょう。この世界も同様です。インコ大王がやってしまったように強引な手段を使えば自分たちの住む世界を滅ぼしてしまうという教訓ではないでしょうか。

インコ大王

 次に印象に残ったのはインコ大王です。インコ大王は異世界でもっとも繁栄しているインコ達を導く指導者で、インコ達は彼のことを妄信しています。しかし、野心家な性格で異世界をインコ達が完全に掌握し、自分がその頂点に立とうと画策しています。冷酷でもあり、劇中で主人公を見つけた途端攻撃してきます。また、主人公が創造主に後継者として選ばれることも勘づいており、創造主に会いに行く主人公達の後をつける等陰湿な面もあります。そして、自分がこの世界の支配者になれないと知ったら、強引に後継者になろうとしましたが、結果は御覧の通り。強い一人の指導者を妄信し、すべてを任せていたら自分達が滅びる羽目になるという訓戒でもあると感じられました。これは戦中の日本の皮肉でもあるでしょう。

斬新すぎるヒロイン

 これには驚きました。ヒロインはなんと自分と同年代の頃の実母なのです。主人公は異世界で炎を操る謎の少女と出会い、異世界を案内されます。その少女が自分の母親なのです。少女の頃の自分の母親と異世界で冒険…やはり監督は僕達の先に生きてんな。

託されたバトン

 主人公が異世界から帰ってきたとき、主人公のポケットには創造主の積み木が一つ入っていました。君達のの人生はここから始まる。君達はどんな積み木を積み、どんな物を創るのか考えて生きろ、という異世界の創造主からの私達へのメッセージではないでしょうか。最後のアオサギが言ったように自分の作品はやがて忘れ去られるだろうけど、自分が伝えるメッセージは忘れないでねという渾身のメッセージも伝わって来ます。

総評

  創造主が監督で主人公は幼い頃の監督と観ている私達で、現在と幼少期の監督同士の対話に私達へのメッセージを織り交ぜた監督の自伝的映画と言っていいでしょう。ただ、全体的に展開が急で強引な感じは否めません。ジブリが好きな人は楽しめるかもしれませんが、純粋に映画を楽しみたい方は少々退屈に感じるかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?