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DO-160 section 20、試験カテゴリの選定

1.背景

今回は、DO160 section20, RADIO FREQUENCY SUSCEPTIBILITY (RADIATED AND CONDUCTED)についての概略を紹介したいと思います。

この試験は、航空機搭載機器の環境要求の一つであるHIRF耐性証明に強く関係するもので、航空機の証明である型式証明の2X.1317/23.2520/23.1308にも関係があります。この試験は、HIRFに関係する試験となっていますので、テレビ塔やレーダー波を模した高周波で証明対象機器(EUT;Equipment Under Test)を照射してEUTが持つ機能に悪影響が無い事を確認するための試験です。DO160 section20には、複数の試験カテゴリがあり、型式証明で証明しようとする航空機の電磁シールドの能力に応じて適切なカテゴリを選択する必要があります。section20には、多くの留意点がありますが、今回は試験カテゴリの選び方についてフォーカスしたいと思います。

2.DO-160 section 20の試験カテゴリの種類やその他の事項

DO160 section 20の試験は10KHzから18GHzの周波数レンジで試験が実施されますが、下記に示すように2種類の試験が要求されます。
1:CS試験(conducted sceptability)
2:RS試験(radiated scepatabily)

CS試験は、10kHZから400MHz、RS試験は100MHzから18GHzまでの周波数レンジで機器の機能の挙動が評価されます。この事を念頭に、DO160 section 20の具体的な試験カテゴリをみていきます。サンプルとして、CAT.WFを使って説明すると、前半のWがCS試験のカテゴリ、後半のFがRSの試験カテゴリとなります。CS試験は、低周波のRF周波数による試験なので、ケーブルに誘導する電流値(mA)で試験が規定されます。一方、RS試験は高周波であり、電界強度(V/m)による試験強度が規定されています。CS試験とRS試験のそれぞれについて、簡単に試験内容を述べたので、次に、試験カテゴリの試験強度について記載します。

DO160 section 20には、どのようなカテゴリがあるのか、下記に全て記載します。これらは、試験強度が異なること意味します。

CS試験のカテゴリ
M,O,R,S,T,W,Y

RS試験
B,D,F,G,L,R,S,T,W,Y

というように試験強度の異なる様々なカテゴリがあります。このそれぞれのカテゴリには周波数特性があります。実際にDO160をご覧頂けると良いのですが、copy rightのため、引用することができません。そこで、CS試験だけになりますが、コンピュータで再現したグラフを添付します。このグラフには3つの関数が表示されています。

1番外枠の青dotが、CAT.Mです。
黒dotが、CAT.Aとなっています。
後述しますが赤の実線がinternal HIRF environmentです。

グラフの説明

両軸とも対数プロット
横軸が周波数で、10kHz-400MHz
縦軸がmAの単位

上のグラフでCS試験の周波数特性を紹介させて頂きましたが、実際にはRS試験にも周波数特性があります。

非常に多くのカテゴリが存在することを説明させて頂きましたが、一体、どの試験カテゴリで機器試験をすれば良いのでしょうか? この目的に到達するには、external HIRF envirobnentとinternal HIRF environmentの違いを把握しておく必要があります。

3.External HIRF environment

External HIRF environmentとは、HIRF規則のAPPENDIXに記載されているテーブルを指します。PART23のamdt23-64以降では、ASTMにこのテーブルがあります。下記に、HIRF ENVIRONMENT-1と呼ばれるexternal HIRF environmentを示します。


PeakとかAverageとかありますが、細かいことは横におくとして、最左列に周波数があること、及びPeakやAverageの単位が電界強度(V/m)で規定されているに注目してください。この表は、航空機の外にある放射源の大きさを規定しています。機体の中の環境ではないことに注意して下さい。機体は金属などでできているので、機内ではある程度減衰します。これがシールド効果ですが、これは機体の材質や電磁シールドの有無によってその効果がかわります。こうした減衰特性のことをGeneric attenuationとして定義することができるのですが、今回は、CS試験の周波数領域について説明するので、この周波数帯域では機内で電磁波が減衰というより、機内にルーティングされた配線がアンテナのように作用して、機内に侵入してきた電磁波(もちろん減衰しているのですが)を効率よく受信してしまいます。これを結合といいますが、機外の電磁波を基準として、つまり、external HIRF environmentを基準とした時に、機内の配線にどれだけ結合するのかは、過去のSAE AE4の調査活動によって既に特定されていて、これをGeneric transfer functionとして、AC20-158Aに公開されています。結合の程度は、機体の形状やサイズにより異なるのですが、一番適切なものを選ぶ必要があります。

この記事では、小型の飛行機の場合に用いるGeneric transfer functionを参照します。

スクリーンショットで、左端が完全にキャプチャされませんでしたので、文書で補足しますが、このグラフで重要なのは単位です。mA/V/mです。つまり、1V/mあたり、何mAを機内配線に結合するかという意味になります。

これらを踏まえると、機内配線に誘導される電流は、external HIRF environmentにGeneric transfer functionを掛ければ良いことになります。この計算結果がinternal HIRF environmentになります。前述のコンピュータに描かせた赤の実線は、この計算した結果です。ここまでの説明で不足があるのがPeakとAverageですが、これはSAE ARP 5583Aを参照する必要があるので、本記事では割愛します。

4.どの試験カテゴリを選ぶべきか?

ここまでの説明から、選択すべき試験カテゴリは、機内の電磁環境、つまり、internal HIRF environment以上のカテゴリで証明された機器である必要があります。もう一度、コンピュータで描画させたグラフを見ていただきたいのですが、そのグラフの例では、internal HIRF environmenttpCAT.Aは完全に一致し、CAT.Mの場合は若干のマージンがあることになり、どちらの試験カテゴリを用いても良いことが分かります。

5.まとめ

今回は、DO160 section 20の試験カテゴリの選び方について記事にしてみました。この選定について、本文には記載しませんでしたが、この考え方は、レベルAシステムの場合に適用するものです。最近ではHCL-Aという表現の仕方もあるようですが、安全性解析からの導かれる結果です。最新のPART23やeVTOLの場合、若干の違いがあるようですが、基本的な考え方は同じです。より詳細な情報については、時期を見て記事にしたいと思います。

免責
記事の内容は、細心の注意を払って記載をしていますが、絶対的なものではありません。本記事の内容により生じるいかなる損害、不利益等についても責任を負うものではありませんので、あくまで参考としてご使用頂ければ幸いです。

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