航空機が遭遇する環境

1.背景

航空機を開発、或いは航空機への搭載を前提とする装備品の開発を行う場合、それがどのような環境条件下で使用されるのかを考えておく必要があります。想定される航空機や航空機に搭載される装備品の使用環境において、飛行安全を確保する必要があるからです。航空機の運用条件は様々なものがありますが、その中に環境条件も含まれます。高高度を飛行する飛行機と低高度を飛行する飛行機とでは遭遇する環境条件が異なってきますし、ヘリコプターの場合には飛行機と振動のなどの条件が違ってきます。このため、航空機が遭遇する環境条件を想定し、その運用条件に見合う環境が証明対象となってきます。こうした環境条件を考える上で便利なのが、RTCA DO160です。

2.DO160に規定される環境

航空機や装備品には様々なな機能がありますが、こうした機能が、想定される環境条件下で適切に機能する必要があります。次の3.項に列記するものはDO160に規定される環境項目ですが、開発しようとする航空機や装備品によって、各項目の全て、或いは一部を証明する必要があります。また、特殊な環境での使用を考えている場合には、DO160の環境項目ではカバーしきれない場合があり、その場合は証明基準そのものを考えていく必要性があります。ただ、多くのケースではDO160に規定の環境項目の範囲に収まります。

3.DO160の各セクション

DO160は、26のセクションで構成され、冒頭の3セクションは、DO160の使用方法などを説明した一般的な内容で、実質的な環境項目はsection 4-26に記載されています。そこには自然環境や人工的な環境などがあります。

Section 4.0 – Temperature and Altitude
Section 5.0 – Temperature Variation
Section 6.0 – Humidity
Section 7.0 – Operational Shocks and Crash Safety
Section 8.0 – Vibration
Section 9.0 – Explosive Atmosphere
Section 10.0 – Waterproofness
Section 11.0 – Fluids Susceptibility
Section 12.0 – Sand and Dust
Section 13.0 – Fungus Resistance
Section 14.0 – Salt Fog
Section 15.0 – Magnetic Effect
Section 16.0 – Power Input
Section 17.0 – Voltage Spike
Section 18.0 – Audio Frequency Conducted Susceptibility – Power Inputs
Section 19.0 – Induced Signal Susceptibility
Section 20.0 – Radio Frequency Susceptibility (Radiated and Conducted)
Section 21.0 – Emission of Radio Frequency Energy
Section 22.0 – Lightning Induced Transient Susceptibility
Section 23.0 – Lightning Direct Effects
Section 24.0 – Icing
Section 25.0 – Electrostatic Discharge
Section 26.0 – Fire and Flammability

4.環境カテゴリー

各セクションに共通しているのが、各セクション毎に環境カテゴリーが規定されている点です。これは、証明要求の程度を示すもので、緩やかなものから厳しい環境条件まで規定されています。どのカテゴリーを使用するかは、最終的には航空機の運用で想定される環境条件次第です。或いは装備品単体での認証であるTSOAの取得にとどめる場合は、該当するTSOに指定されるMOPSの要件次第となります。

5.まとめ

どのような環境下で使用するかにより、証明すべき環境項目は変わってきますので、目指すべき航空機や装備品の使用条件が決まっていないといけません。DO160の環境項目は、様々な環境条件に対応できるようになっていますので、多くの場合は必要な項目を選択していくことになります。RTCA DO160は、500ページを超える技術文書で要件が
簡潔に記載されています。逆に言うとほとんど説明がなく試験要求が羅列されているだけともいえますので、要求を理解していくのもなかなか大変です。このため、補足のガイダンスとしてRTCA DO357が提供されています。海外のWEBには、動画も含めて、このDO160について解説したものがありますが、国内においては、そうしたものは多くありません。機会を見て、各セクションについて触れていきたいと思っています。

免責
記事の内容は、細心の注意を払って記載をしていますが、絶対的なものではありません。本記事の内容により生じるいかなる損害、不利益等についても責任を負うものではありませんので、あくまで参考としてご使用頂ければ幸いです。





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