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何某

母と喧嘩した。オープンスクールに行けなかったからだ。確かに俺の勉強に対する姿勢は、傍から見れば良くないかもしれない。模試の成績もさして良くない。兄みたいに出来た人間でもない。それでも俺は愚鈍な人間なりに足掻いてんだよ。なんて思ってしまった。親心なのは分かってる。でも反抗してしまう。
将来の夢は明確にある。でも、まだ自分が何者かが分かってない。自分がどんな能力があるのかわかんないし。能無しとしか思ってない。趣味のギターも人様に見せれるようなもんじゃない。恥ずかしい。

最近些細なことでも母が怒る。ほとんどが理不尽なことだ。地雷を踏まないように気をつけても、地雷から近づいてくる。俺にどうしろってんだよ。こんな当たりしかないクジを引き続けたくないから、背伸びして県外の大学を志望するようになった。

父親に説教された。怒りのない、諭すようなやつだった。自室のドアを開けた時に涙が溢れてきた。勉強しても成績が一向に伸びないこととかの、これまで我慢してた色々な感情がうわっと押し寄せてきた。父の愛情に触れた気がした。
邪険に振る舞うのは、新しく確執を生みたくないから。部屋に籠るのは、両親の喧嘩を聞きたくないから。そんな不器用な接し方しかできない自分にも腹が立つ。

兄から久しぶりにLINEが来た。母から今回のことを聞いたようで、話を聞いてくれた。俺に寄り添うような文面で、俺はまた泣いた。そんなに甘やかされたら口だけ達者になっちゃうのに、そう思った。でも、本心からはそう思えなかった。この時、自分の心が疲れてるんだなと感じた。多分俺はずっと、心の拠り所が欲しかったんだと思う。俺の気持ちを理解してくれる飛びきりに温かいやつが。

そろそろ夏休み。兄と姉が帰省する時期は母もあまり怒らなくなる。ずっと夏休みが続けば、俺もこんなビクビクせずに母と接することが出来るのだろうか。もっと優しくなりたいな、俺が何者だろうと。


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