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6月5日は「落語の日」


6月5日は、「落語の日」です。

もともと落語は、昔の「落し話」といわれる、大衆芸だったのですね。

それが、いつの間にか、伝統芸術に発展しました。

大衆は、そのうちに、芸術として落語を鑑賞するようになりました。


父は大の落語ファンでした。

私が中学生の頃、父はしきりと落語の講釈をたれていました。

「目黒のさんま、という落語があるが、目黒は当時、未開発の野山で、鷹狩りの地としてお殿様は訪れたのじゃ。お昼時となると、近くで何やら百姓の娘が七輪で魚を焼いていて、とても良い匂いがした。お殿様は娘に問いかけると、《秋刀魚でございます。》。そこでお殿様は、《一匹所望致す。》と問うと、娘はお殿様に秋刀魚の焼きたてを差し出した。あまりの旨さにお殿様は感激して、お城に帰ってから、料理番に、《秋刀魚を所望いたす。》。そこで、料理番は、秋刀魚を築地で仕入れ、それを焼き、骨を取り、身をくずし、毒見をおこない、お殿様に差し出した。お殿様は一口食べると、《これは不味い、やはり秋刀魚は目黒に限る。》と答えた。身がくずれ冷え切った秋刀魚が旨いはずがない。ここで、観客から《お殿様は何て馬鹿なことを言うのだろう。秋刀魚だったら魚河岸の築地だろう、なんで山奥の生きの悪い秋刀魚が旨いなどと、非常識なことを。》と爆笑し、権力者をあざ笑い、大衆は溜飲を下げる。しかし、今や、目黒は都内でも有数な高級住宅街となり、秋刀魚だって新鮮なものが手に入る。しかし、昔は山奥で、新鮮な秋刀魚が入るわけもない。そんな時代的背景があり、笑いが起こったのだが、現代人には、目黒の秋刀魚という落ちが分からず、笑えない。」


大衆が落ちを理解出来ない大衆芸に対して、革命家が出没しました。

林家三平です。

まるで、大衆に媚びを売るかのような芸に、落語会の異端児とされましたが
林家三平は、落語会に大衆芸をもちこんだ、偉大な落語家ですね。

しかし、林家三平も、大ネタが打てる
実力者であることも事実です。



私は、社会人となり、新宿末広亭に落語を見物によく行きました。

出しものに、「目黒の秋刀魚」が演じられたのですが、最後の落ちである
「秋刀魚は目黒に限る。」というところで、笑ったのは、私一人だけでした。






          おしまい