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Autechre〈オウテカ〉、ライブ音源のおすすめ


全部聴きなさい。

と言いたいけど、それは難しいよね。君もそう思ったからこの記事を読んでいるのかな。

Autechreは30年以上コンスタントに作品を発表し続けているため、LP,EPを合わせるとかなりの量になる。

さらに、それに加えて、ライブ音源が膨大にある。

LP,EPはどれも最高だが、ライブもとても素晴らしいものばかり。

私はいっぱい聴きましたから、おすすめを教えますよ。


◯種類


Autechreのライブ音源は、4種類ある。

1.AE_LIVE

これは、2014年から2015年までの計28公演の公式音源。
全体的に激しく攻撃的なサウンドで、リズムに重きを置いている。グリッチの効いた美しいメロディパートも魅力。

構成(セット)は大きく2つに分けられる。
①.KRAKOW~KATOWICE (2014年9月~2015年8月)
②.PORTLAND~DENVER (2015年9月~2015年10月)

2014/15のAE_LIVEは、新しいトラックを後ろに追加していくという方式を取っている。公演を重ねるたびに新しい曲が増えていき、特に2015年9月から爆発的に曲数が増えている。だから上のように2つに分けた。結果的に②は①をぎゅっと前半にまとめるような形になっている。バリエーションに富んでいるのは②だが、1つ1つの曲をじっくり聴くときは①がおすすめ。
さらにそれぞれの公演ごとに微妙な差異があり、1度しか流していない曲もある。

ちなみに、アルバム『elseq』と『NTS Sessions』はこのライブで演奏された曲が多く収録されている。(だから「elseq」が「Edited Live SEQuences」の略ではないかという説がある)


2.AE_LIVE 2016/2018

2016年と2018年の計7公演の公式音源。
全体的にアンビエント志向のライブ。チルい。NTS Sessionsの3から4にかけての音楽性に近い(実際にNTS Sessionsの曲を多く演奏している)。また、かっこいいトラックやビートのあるトラックも存在している。

セットは2種類。
①2016年の5公演
②2018年の2公演

そこまで大きな差異はない。すこし演奏している曲に違いがあるくらい。


3.AE_LIVE 2022-

2022年の7公演の公式音源。しかしハイフンがついているため、これからも追加される可能性が高い。
非常に抽象的なサウンド。2014/15のような激しさと、2016/18のような空間の広がりを兼ね備えた音楽性。これまでのライブよりもさらにトラックの移り変わりが分かりづらくなっている。

セットは2種類。
①↓以外の6公演
②LONDON B 

②と①は完全に異なるトラックで構成されている。また、まだリリースされていないが、2023年以降のライブでは新たなセットが使用されている。(YouTubeにあった海賊版を聴いた感じでは、②に新しい物を組み合わせた感じ?)


4.非公式、海賊版

公式からリリースされていない、YouTubeやInternet Archiveで聴くことができる音源。サウンドボード録音によって綺麗に録音されたものから、歓声などの雑音満載の直撮り音源まで様々なものがある。ファンの間で必聴とされているものも数多く存在しているため、チェック必須。


○おすすめ

三段階評価でおすすめしていく
S:必聴
A:最高
B:良い

[S]

・LONDON_071022_B (AE_LIVE_2022-)

2022年ロンドン公演の2つ目。
個人的に、aeの歴代のライブの中でも最高峰の出来だと思う。2022のライブは複雑なものばかりだが、このLONDON Bだけは万人受けするようなかっこいい音楽になっている。クールな旋律とノリやすいドラムパターンが特徴。特に、40分以降の盛り上がり方が凄まじい。スクラッチ音のようなものを取り入れ、非常にファンキー。その後合流する終盤のドローンサウンドは鳥肌もの。
1秒たりとも聴き逃すな。

・ Live at Echoplex 2008/04/04 [replication] (非公式) 

2008年、ロサンゼルスで行われたEchoplexフェスの音源。熱量のあるライブ。
かなりとっつきやすくキャッチーであるため、ライブ音源はまずこれから聴き始めるのがいいかも。終始安定したビート(最近に比べたら)でとにかくノリやすく、踊り続けられる。メロディも聴き心地が良い。Quaristiceの曲を何個か流している。

※タイトルに「replication(複製)」と付いているのは、これがファンによって再現されたものだから。つまり実際の録音ではなく、ファンメイドやカバーのようなもの。長い歳月をかけて、aeがリアルタイムで行っていたつまみの動かし方までもコピーした珠玉の逸品。現地で録音されたものと比較するとわかるが、音質がかなり良く、再現度も文句なしであるためこちらをおすすめに挙げた。

・Live at Glasgow 2005/04/15 (非公式)

2005年、スコットランドのグラスゴー美術学校でのライブ。
おそらく非公式音源の中で最も人気の高いものはこれ。これもとてもリズミカルでとっつきやすい。緻密なドラムパターンで大いに踊れる。Untilted、Quaristiceから何曲か演奏されている。特に、満を持してLCCが始まるところが最高。


[A]

・Live at Toronto 2001/05/09 (非公式)

2001年、カナダのトロントでのライブ。オペラハウスで行われた。
Confield期のライブでかなりとんがっている。不規則なビートと、とても冷たい雰囲気が最高にクール。抽象的で実験的ながらも盛り上がる音楽。今聴いても未来の音楽な感じがする。

・KRAKOW_200914 (AE_LIVE)

2014年、ポーランドのクラクフでのライブ。
公式リリースのAE_LIVEの中で一番古い公演である。トラックの数が最も少なく1つ1つの曲の長さが長いため、2014/15の公演を聴くならここから始めるのがおすすめ。 ハイライトは20分前後のグリッチメロディ。哀愁漂う美しい音色が心を震わせる。

・BERGEN_021122 (AE_LIVE_2022-)

2022年、ノルウェーのベルゲンでのライブ。
aeのライブ音源を初めて聴くという方は、2022のライブは後回しにしたほうが良いかもしれない(LONDON B以外)。複雑に入り組んだ音で構築されているため、理解するのに非常に時間がかかる。しかし、音のみの空間に身を委ね五感を耳だけに集中させたとき、この音楽の虜になるはず。ここ数年の音源はかなり極まっていて個人的に大好き。
BERGENの公演では終盤にLONDON Bの冒頭のメロディを持ってきているのだが、それもめちゃめちゃ良かった。

・Live at Flex 1996/02/15 (非公式)

1996年、オーストリアのウィーンでのライブ。クラブFlexで行われた。
3曲のみのライブだが、最後まで高い熱量を保ち続けて駆け抜ける。1曲目が特にかっこよく、重厚感のある力強いメロディと変化し続けるビートを楽しめる。私はこの1曲目をAnti EPのLostなんじゃないかと思っています(真偽は不明)。
また、Tri Repetaeの人気曲であるClipperとEutowを聴くことができることも魅力。(Clipperはもはや別曲みたいになっているが)


[B]

・DUBLIN_150718 (AE_LIVE 2016/2018)

2018年、アイルランドのダブリンでのライブ。
16/18の音源はアンビエント主体であり少し盛り上がりに欠けるため、個人的なおすすめ度は低くなってしまった。しかし、精密に練られた奥行きのあるサウンドは非常に厳かで美しく、私たちを深淵へと いざなう。さらに後半では、ビート主体のかっこいいトラックもちゃんと用意されている(ファンサービスありがとうございます)。他のライブをいくつか聴いてからがおすすめ。
16/18の中ではこのDUBLINか、HELSINKIをすすめる。名曲column thirteenを聴けるので僅差でDUBLINを挙げた。

・Live at Domino 2010/04/09 (非公式)

2010年、ベルギーのブリュッセルでのライブ。ドミノフェスで行われた。
Untilted期やQuaristice期のようにアップテンポでキャッチーであり、Oversteps期のエッセンスもある。

・PORTLAND_240915 (AE_LIVE)

2015年、アメリカのポートランドでのライブ。
14/15の中での後半のライブであるため曲数が多く、展開が目まぐるしい。しかし初期のセットよりも落ち着きがあるように感じる。ずっしりとした重たい音がかっこいい。
KRAKOWなどの前半のライブを聴いた後に聴くことを推奨する。


○終わり

とりあえず10個挙げてみました。

1つも聴いたことがないという人は、とりあえずGlasgowEchoplexから入るといいと思います。いきなり公式音源から入ろうとすると体がびっくりしてしまうかもしれませんからね。お風呂でヒートショックを起こさないためにかけ湯をするようなものです。

この文章を読んでいるような人は全員知っていると思いますが、Autechreはかならず会場を真っ暗にしてからライブを行います。ですので、部屋を真っ暗にして聴くことを推奨します。

ちなみにこの記事で使ってる画像は、何かの手違いでライブ中に照明が点いてしまったというレアな状況。



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