『傷物語』感想

ご挨拶


 映画『傷物語』を見てきたので、登場人物を中心に感想をば。
 申し遅れました、わたくし『続終物語』まで小説で去年一気読みをしました(威嚇)、魑魅魍魎の観測者文学部文化人類学科にして妖怪変化のオーソリティ気取りオカルトマニア、くいなにございます。ついでに広告報酬で漫画版もエピソード戦のエピソードまで読んでます。お金は大切にする、実質貝木泥舟です。
 そうそう、傷物語に関するネタバレはしますので、ご注意を。他の物語シリーズの話はあまりしない。つもり。

 それでは限界オタクという現代怪異による駄文戯言うわごとそらごと、はじまり、はじまり。(はじめてのnote、見苦しいかも‥‥‥。)

阿良々木暦

 開始間もなく大炎上する人。阿良々木君は正義と意志の強さをセットにして考えろ、と『偽物語』でファイヤーシスターズに言ってた(気がする)んだけど、あれは自分にも言ってたんだね。自分より行き倒れの吸血鬼こそ生きるというのが正しそう、力を失った吸血鬼に襲い来るハンターたちを倒して両手両足を取り戻すのが正しそう、人を食べるのは正しくなさそう。その結果、自分は吸血鬼になっちまうし、人類の希望を倒しちまうし、キスショットの思惑に気づかないまま戦闘になる。『僕の軽はずみな行動がこの結果を招いた』というけれど、軽はずみな行動が意思なき正義を意味するならその通りだと思う。だからこそ、自分も周りも不幸になる結末を選んだラストが映える。そりゃ同族嫌悪しますわ。
 俺はね、阿良々木君には主人公でいてほしいんだけど、それは決して歪まない正義を振りかざしてほしいとイコールではないんだよ。身体は滅茶苦茶強いのに心がついてきてないガタガタの主人公。これこそ応援したくなる主人公ってもんじゃあないですか皆さん(両腕を広げて高らかに)。『十二大戦』の丑さんを見習えVS丑さんとは合わせず藻掻かせろ が戦っているわけですよ(握りこぶしを作って)。
 物語シリーズの魅力って阿良々木くんによるところが大きいと思う。阿良々木くんは激強だけど、荒事で解決することってごくまれなんだ。調べて交渉してぶつかって、最後に落としどころを見つける。この、話が整理される快感だけで去年を潰したからな僕は。わき道にそれたし、次に行こうか。
待った、最後に。
 人間強度の話はしないの!? 黒歴史を語りたくなくなっちゃったの!? あれがないせいで暦&翼じゃなくて暦&キ(以下略)になってたのがなあ‥‥‥まとまりがあると言えば聞こえはいいが。

キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード

 自殺志願の吸血鬼。ハンターを倒すごとに魅力が薄れていくって友達が言ってて爆笑した。くいなは足一本喰った後くらいが好きです(きもちわる)。
 こいつもこいつで精神が弱いんだよ。なんなの吸血鬼は。吸血鬼になればステが物理全振りになるの?
 そんないじっぱりHAぶっぱ命の珠もち(ただし底なしのHP)吸血鬼ですが。取り上げるとしたらやっぱりサッカースタジアムでのバトルかなあ。体力無尽蔵のHAぶっぱ吸血鬼と殴り合う。もちろん決着はつかないから、少ないメンタルのすり減らしあい。なんなんだお前らは。ドラゴンタイプか。
 でもこの殴り合い、滅茶苦茶楽しそうなんだよな。目の輝きが、壊れない玩具を見つけた少女のそれに似てた。適当なところでわざと負けて血を吸いつくされるつもりでいたってのは、たぶん本当なんだろう。でも楽しんでましたよね? 吸血鬼ともなれば、全力を出せる相手というのはほとんどいないんだろうな。初代眷属のあいつもいないし。退屈していた、か。

忍野メメ

 ずるでーす。中学生のころ考えただろこのキャラ。かっこよすぎるんだよ。気だるげで何もかもお見通し、飄々とした態度でつよつよ、それとイケおじ。何といっても、登場シーンに痺れたね。3人のハンターが生まれたての吸血鬼:阿良々木くんを一同に襲うシーン。元気いいなあ、何かいいことでもあったのかい。頼れない格好に頼れる能力をくっつけてなじませた特異点。
 でもさ、一つ言わせてくれ。傷物語未読の人にも配慮するから。あんた‥‥‥出番喰われてない? だってあんた、あんた‥‥‥。まあカットしても問題ないのかもしれないけどさあ、忍野メメという専門家の格が落ちてねえか!? 必要でしょやっぱり! ゆらゆらエピソードとカラスの大群に尺の取り合いで負けたの!?

羽川翼

 吸血鬼にあべこべビーム撃てばこの子になる。びびび。なんだそのメンタルは。
 といっても、こいつについては『猫物語』未読の諸兄に対して思いをぶつけることは叶わない。押しつぶしてしまうのではない。暖簾に腕押し、糠に釘なのである。いいか、『猫物語』を読め。
 ぶっちゃけ、化物語の時点で羽川翼ってそんなに好きになるようなキャラクターじゃないと思うんですよ。なんでも知っている、都合のいいヒロイン。
 そう思っていたあなたに届けこの思い。びびび。
 あ、ドラマツルギーに合気道が通じなかったのを見てバトル漫画を参考書として差し入れる羽川はどこですか? あれも結構大事じゃない?

ドラマツルギー

 巨漢。筋肉ほしくなった。初登場シーンかっこよすぎな。踏切を挟んで相対し、電車の結合部から覗く刃の光。見た目通りの大味な戦闘スタイル。そうそう、搦め手タイプも好きだけど結局こういうのに憧れるんだ。スマブラに出たらガノンのダッシュファイターになること請け合い。阿良々木を追いかけて校舎を駆け上がるシーンで、階段をそんなに飛ばして行かないのが可愛かった。足がデカすぎて段に収まらない、とか?
 なんでこいつが吸血鬼だということを説明しないんだ。阿良々木君が逃げ惑うシーンでキスショットとの会話の回想をするなりなんなりあるだろ。「回復まで2日はかかる‥‥‥」で伝わると思うなよ。これが物語初めの人にとってはぽかーんだろ。察しを強要する場所じゃない。

エピソード

 どこから襲ってくるか分からない恐ろしさを表現しているんだろうけど、炎をバックに決め顔をして近づいてくるカットが滅茶苦茶繰り返されて超ウケた。執念を表しているってのもあるかも。でも‥‥‥忍野メメに出番やってくれねえかなあ? いや、ゆらゆらじゃなくて。超ウケるーじゃなくて。
それと、なんでこいつが吸血鬼と人間のハーフだということを説明しないんだ(既視感)。吸血鬼の霧になれる能力ってそんなに一般知識じゃないからな。瞬間移動にしか見えない。羽川が言い残した「相手は霧なんだから‥‥‥」の意味を汲めた人、少ないんじゃないのか?

ギロチンカッター

 好き。手段を選ばないカルト教団司祭のイケオジ、ドラマツルギーやエピソードと違って純正の人間なのにキスショットの両足を保有する強さを持ちつつ、相手の弱点を調べてから勝負に挑む抜け目のなさ。こういうのだよ。悪役たるものこういうやつでなくっちゃ。強い悪役は好きだけど、確かな理想と自分の弱さの清濁併せてがぶ飲みできる器のデカい悪役は大好きなのだ。
声優さんもさすがと言うかなんというか、「不愉快ですねえ」の台詞で空気が変わった。
 が、これも説明が足りねえ。100%人間であること、カルト教団の司祭であることなどなど‥‥‥ハンターたちに関して、製作スタッフは何かしらの縛りプレイをしてるのか? もったいないよ、こんなに良いキャラなのに。

所感

 説明が足りないだの尺が足りないだの文句をつけてきたが、アニメーションに関しては圧巻の一言だった。質感まで伝わるリアルな描写を重ねてきたと思えば、突然アクの強い画風になったり、外連味(だったっけ)を出して息を抜いたり。
 シャフト空間もすごかった。特に印象に残っているのは2つ。
冒頭の駅、キスショットのいるホームへのエスカレーターには下りしかないんだよ。もう引き返せなくなることを暗示しているのかな。頑張れば引き返せることを暗示しているのかな。
 もう一つは羽川と阿良々木がVSキスショットの前に言葉を交わす体育倉庫。自殺を考える阿良々木くんに、天井から十字架型の光が漏れて差す。それを背中で遮って阿良々木くんの上に覆いかぶさる羽川。っかーっ! たまんねえなオイ! 死は救済ってか!? それは真の救済じゃないってか!?吸血鬼の弱点であり、聖なるアイテムである十字架の使い方がうますぎる。制作、お前が今日からエピソードだ。
 こういうのができるから映像は強いな。小説の中で詩をやる、みたいな。まどマギ続編も期待してます。

おわりに

 映像、音響の暴力になすすべなく殴られ続けた2時間半だった。
 未視聴の諸君、公開終了を迎えた映画館もあるようだが、1500円(大学生料金)の価値はあるぞ。
 映画視聴済みの諸君、小説版を読め。【君の知らない物語】がそこにはあるぞ。
 小説映画を制覇した諸君、得意げになるのはまだ早い。漫画版を読め。原作者すら知らない展開が君を待っている。きっとエピソード大好きになるから。
 それでは。
 何かいいことあるなら働く。 お相手は魑魅魍魎の観測者文学部文化人類学科にして妖怪変化のオーソリティ気取りオカルトマニア、くいなさんでした!

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