運賃の引き上げが鍵『倉庫・物流』*日本経済68業界
日経平均株価(225銘柄)で登場する
合計68業界の動向を紹介します。
物流・運輸の『倉庫・物流』
▼業界動向
2014年→2019年 成長
2020年 下落
2021年 回復
2022年→2023年 横ばい
▼業界平均
・売上高 :3543億円
・営業利益率 :6.72%
・自己資本比率:46.58%
・ROE :17.38%
・ROA :6.92%
※用語の詳しい説明は文章下段の
【経営の基礎知識】から確認できます。
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1位 大和ハウス工業株式会社
増収減益:売上5兆2029億1900万円/24年3月期
総合デベロッパーとして、
マンションの開発・分譲・管理、
戸建て住宅、賃貸住宅の企画・管理
リフォーム・内装工事・修理などを行い、
住宅やマンション事業のイメージが強かった
大和ハウス工業ですが
建築事業である物流施設の開発に力を入れています。
1955年創業以来、
全国で数多くの倉庫を建設してきましたが、
製造施設などの工業化建築、
医療・介護施設・オフィスなどの事業用建築を
手がけながら、
物流施設を3000棟以上建築してきました。
2002年からは、
物流施設の設計・施工に留まらず、
物流最適地の提案から維持管理に至るまで、
顧客の事業スキームに合わせた特定企業向け
専用物流施設をコーディネートする物流プロジェクト
「Dプロジェクト」を始めました。
さらに、好立地で複数テナントが入居できる
マルチテナント型の物流施設の開発も強化。
2013年、「Dプロジェクト」によって開発する
物流施設のブランド名称を「DPL」に決定し、
共通ロゴを使用することで、高機能物流施設の
シンボルとして企業ブランドの向上を図っています。
不動産や金融など各分野を組み合わせ、
倉庫やトラックなどの資産を自社保有しない
ノンアセットや、不動産流動化などに対応する
物流不動産ソリューションを展開しています。
2位 日本郵船株式会社
減収増益:売上2兆3872億4000万円/24年3月期
子会社の日本貨物航空株式会社を
2023年7月、ANAホールディングス株式会社に売却。
業績寄与がなくなり減収。
アメリカの消費意欲が高く、
コンテナ船の需要は底堅い。
また、半導体不足の緩和により、
生産回復が進む自動車輸送の需要も高まり最終増益。
中東イエメンの武装勢力による商船への攻撃が激化。
多くの船会社が紅海の通航を諦めて、
アフリカ南端の喜望峰経由で運航しているため
運航日数が伸びることに伴って
需給が引き締まり、運賃が高くなっています。
ちなみに、
日本郵船株式会社は1870年に岩崎彌太郎が設立した
九十九商会を前身とする民間の会社で、
1871年に前島密が官営として郵便事業を開始し、
2007年に民営化した日本郵政株式会社とは
別の会社になります。
日本郵政株式会社のグループは、
・日本郵便株式会社
・株式会社ゆうちょ銀行
・株式会社かんぽ生命保険
3位 NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社
増収増益:売上2兆2390億1700万円/23年12月期
日本通運株式会社は、2022年1月、
単独の株式移転(新設会社への株式移行)を行い、
持株会社(ホールディングカンパニー)として
NIPPON EXPRESS ホールディングス株式会社を設立。
日本通運は、完全子会社(100%子会社)になりました。
24年12月期は半導体の荷動きが回復し
トラック運賃の引き上げで採算が改善。
また、2024年1月は、オーストリアの物流会社
カーゴ・パートナー社を完全子会社化するなど
人口減少に伴う国内市場の縮小を見据え、
欧米・アジア地域に強みを持つ海外同業の
買収を通じて国際物流の競争力を高めています。
積極的なM&A(合併・買収)で海外事業を拡大。
半導体関連やヘルスケア(健康教育や治療)などの
成長領域への投資も行っています。
主なグループ企業)
日本通運株式会社(自動車・鉄道・船舶・航空輸送など)
NX・NPロジスティクス株式会社(物流・運送など)
日通NECロジスティクス株式会社(貨物輸送)
NXキャッシュ・ロジスティクス株式会社(貴重品輸送)
NX海運株式会社(海上輸送)
NXトランスポート株式会社(自動車輸送)
NX商事株式会社(物流資機材・エネルギー販売)
株式会社NXワンビシアーカイブズ(情報管理)
NX情報システム株式会社(企画・開発・保守運用)
NXキャリアロード株式会社(派遣・請負)は、
2007年、株式会社シモムラビジネスワークスより
事業譲渡を受けたタイミングで、
日通リテイルサービス株式会社から
キャリアロード株式会社に社名変更。
2022年にNXキャリアロード株式会社に変更。
4位 ヤマトホールディングス株式会社
減収減益:売上1兆7586億2600万円/24年3月期
24年3月期は宅配需要の減少に加えて、
トラック運転手の残業規制がされる
2024年問題に対応したため、
長距離輸送の外部委託などのコストが増加しました。
25年3月期は法人向け運賃を引き上げる方針で
営業増益の可能性が高くなっています。
ヤマトは、
25年3月期はメール便や小型薄型荷物などの
配達業務を日本郵政株式会社に全て委託する方針です。
23年6月、日本郵政株式会社との協業が決まり、
「クロネコDM便」を「ゆうメール」に融合して
「クロネコゆうメール」に名称変更。
「ネコポス」を「ゆうパケット」に融合して
「クロネコゆうパケット」に名称変更。
荷物を共同で配送することになりました。
具体的には、
これまでヤマトが配送まで全て行っていましたが、
今後はヤマトが荷物を引き受けた後、
郵便局の配送網で効率的に顧客に届ける仕組みです。
つまり、
ヤマトは、配送の手間を省くことができて、
郵便局は、全国に構築した配送ネットワークを
フル活用できるようになります。
ヤマトは、日本郵政株式会社と協業することで
配送負荷を軽減し、利益率を高める狙いがあります。
また、
単身者向け引越しや大物家財の配送を手掛ける
ヤマトホームコンビニエンス株式会社の
株式51%をアート引越センター株式会社に譲渡し、
利益分配を受ける持分法適用会社としました。
通販による宅配需要などの成長分野である
中核事業の「宅急便」に集中する方針です。
主なグループ企業)
ヤマトオートワークス株式会社(車両整備・保険)
ヤマトシステム開発株式会社(システム開発・販売)
ヤマトボックスチャーター株式会社(企業向け貨物)
ヤマトコンタクトサービス株式会社(コールセンター)
ヤマトクレジットファイナンス株式会社(決済)
株式会社スワン(パン製造販売、カフェ経営)
5位 SGホールディングス株式会社
減収減益:売上1兆3169億4000万円/24年3月期
佐川急便株式会社を中核とする持株会社。
24年3月期は物価高の影響で通販による
宅配需要が減少したことで減収減益。
世界的な金融引き締め(金利高)で、
世界各社は投資がしづらくなっており、
国際物流事業も苦戦しています。
一方で、
25年3月期は運賃の引き上げが影響して
増益に転じる見通しです。
傘下の佐川急便株式会社では
24年4月に宅配便の基本運賃を約7%引き上げ、
値上げは2年連続で実施しています。
企業間物流(企業内の製造から小売までの物流網)の
大口顧客の値上げ交渉も個別に進める方針です。
また、佐川はヤマトよりも営業利益率が高く、
23年3月期、佐川が9.4%。ヤマトは3.3%です。
それは、2013年に佐川がAmazonから
撤退する決断を下したことが大きな要因です。
個人宅向けの細かな荷物は配送に手間がかかり、
1つ当たりの配送料も高くなく、
業務負荷は高まる一方でした。
佐川は細かい荷物からの脱却を図り、
高単価の大型荷物を中心に扱うようになったことで
利益率を高めることができています。
主なグループ企業)
・佐川急便株式会社(宅配・配送)
・佐川ヒューモニー株式会社(クレジットカード)
・SGムービング株式会社(イケア・ジャパン家具配送)
・株式会社ワールドサプライ(百貨店/商業施設へ配送)
・佐川グローバルロジスティクス株式会社(倉庫物流)
・SGHグローバル・ジャパン株式会社(国際物流)
・SGリアルティ株式会社(物流施設の開発)
・SGアセットマックス株式会社(不動産活用)
株式会社ザイマックスグループとの共同出資
・SGモータース株式会社(車両販売・整備など)
・佐川アドバンス株式会社(保険・防災備蓄など)
・SGシステム株式会社(業務システム)
・株式会社ヌーヴェルゴルフ倶楽部(ゴルフ場)
・佐川林業株式会社(森林の育成・管理)
SGフィルダー株式会社(派遣・請負・紹介)は、
グループの人材を調達する人材会社です。
2011年、
佐川アドバンス株式会社より事業継承し、
求人プラットフォーム「ジョブプラス+」を開設。
2022年、
人材紹介サービスサイト「キャリチャレ」を開設。
2024年、
登録スタッフが「働く喜び」を感じられるように
マイナビグループの株式会社エーピーシーズと、
登録スタッフ向けポイントプログラム
「フィルダーポイント」を共同開発・運用。
飲食店での割引や店舗での商品交換など
電子ギフトへの交換が可能なポイント制度です。
優良派遣事業者として
4回目の継続認定を受けている人材会社です。
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【経営の基礎知識】これさえ分かれば大丈夫!
[ 損益計算書(PL) ]
売上高(客数 × 客単価)
−原価 :仕入など製造原価、人件費など売上原価
−販売管理費:営業活動費、物流、広告、水光熱など
=営業利益
−営業外損益:銀行利息、為替損益、株式損益など
=経常利益
−特別損益 :突発的な損益、固定資産の売却など
−税金 :法人税、法人住民税、消費税など
=当期純利益
営業利益率(=営業利益 ÷ 売上)
5%〜10%で優良な経営状況といえます。
年間の経営活動で得た当期純利益を
利益余剰金として自己資本(純資産)に加える。
ちなみに、自己資本(純資産)と、
銀行などから借りた他人資本を合わせた
「総資産」が会社のお財布になります。
自己資本比率(=自己資本 ÷ 総資産)
少なくても30%、50%以上で優良な経営状況。
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[ 貸借対照表(BS) ]
ROE(=当期純利益 ÷ 自己資本)
自己資本(純資産)は、返済不要な資産、
ROEは、自己資本利益率の略になります。
10%以上で投資価値があると判断されます。
ROA(=当期純利益 ÷ 総資産)
総資産は、自己資本(純資産)+他人資本(負債)、
ROAは、総資産利益率の略になります。
5%以上で投資価値があると判断されます。