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国際線の事業規模拡大『空運』*日本経済68業界

日経平均株価(225銘柄)で登場する
合計68業界の動向を紹介します。

物流・運輸の『空運』

▼業界動向
2014年→2019年    横ばい
2020年                  下落
2021年→2023年    回復(2019年水準)

▼業界平均
・売上高   :5152億円
・営業利益率 :5.80%
・自己資本比率:42.79%
・ROE          :8.33%
・ROA          :3.89%

※用語の詳しい説明は文章下段の
 【経営の基礎知識】から確認できます。

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1位 日本郵船株式会社
減収増益:売上2兆3872億4000万円/24年3月期

空輸事業を手掛ける子会社の日本貨物航空株式会社を
ANAホールディングス株式会社に売却する時期を
2024年7月から2025年3月31日に再延期(4回目)。

半導体不足の緩和で生産回復が進む
自動車輸送の需要が高まるなど
主力の海運事業が牽引して最終増益。

2位 NIPPON  EXPRESSホールディングス株式会社
増収増益:売上2兆2390億1700万円/23年12月期

日本通運株式会社は、2022年1月、
単独の株式移転(新設会社への株式移行)を行い、

持株会社(ホールディングカンパニー)として
NIPPON EXPRESS ホールディングス株式会社を設立。
日本通運は、完全子会社(100%子会社)になりました。

国際航空輸送事業として、
1000路線以上のグローバルネットワークを駆使し、
日本→世界、世界→日本への貨物輸送を提供。

人口減少に伴う国内市場の縮小を見据え、
欧米・アジア地域に強みを持つ海外同業の
買収を通じて国際物流の競争力を高めています。

積極的なM&A(合併・買収)で海外事業を拡大。
半導体関連やヘルスケア(健康教育や治療)などの
成長領域への投資も行っています。


3位 ANAホールディングス株式会社
増収減益:売上2兆559億2800万円/24年3月期

高単価の欧州路線を中心に増便し、訪日外国人や
日本発のビジネス客の需要を取り込んでいます。

一方で、各航空会社が日本発着便を増やしたため、
座席の需給が緩み、客単価が下がっています。

コロナ禍で便が減ったことでコストを抑えられていた
機材整備費の増加もあり、最終減益になっています。

航空事業は、
ANAブランド主軸としており、

近年では、東南アジアの経済成長に伴う
移動需要や旅行需要を取り込むべく、

日本と東南アジアを結ぶ国際線を中心とした
中価格帯ブランドとして
Airjapanという新ブランドも始めています。

また、短距離移動をメインとするLCCのpeachでは
低価格でシンプルなサービスを提供しています。

航空貨物については、
スペースに空きが出やすい昼間限定で
国内貨物料金を最大10分の1に引き下げました。

トラック運転手の時間外労働に上限規制が
適用される「2024年問題」を迎える中、
代替手段として航空貨物需要を掘り起こしています。


4位 ヤマトホールディングス株式会社
減収減益:売上1兆7586億2600万円/24年3月期

航空貨物輸送(空運)事業としては、
多品種少量、短納期、JIT納品(必要なものを
必要な時に必要な量だけ/ジャストインタイム)など
物流に対するニーズが高まる中、

小口輸送から設備などの重量物輸送、
危険品の取扱いに至るまで、
スピードを重視した国際輸送に対応しています。

主力の陸運事業では、
24年3月期は宅配需要の減少に加えて、

トラック運転手の残業規制がされる
2024年問題に対応したため、
長距離輸送の外部委託などのコストが増加しました。

25年3月期は法人向け運賃を引き上げる方針で
営業増益の可能性が高くなっています。


5位 日本航空株式会社
増収増益:売上1兆6518億9000万円/24年3月期

2010年1月、日本航空(JAL)は
事業会社としては戦後最大2兆3000億円の負債を
抱えて、会社更生法の適用申請により倒産しました。

経営破綻の原因は、
・本業以外のホテルリゾート開発(1300億円の損失)
・原油先物買い(1900億円の損失)
・日米貿易摩擦解消のための
 ジャンボ機の大量導入(2兆2600億円の損失)
・地方空港の乱造
・高い公租公課(国から徴収される公的負担)
・政治家圧力による不採算路線への大型機就航
など、放漫経営と歪んだ航空行政によるものです。

倒産しても、
インフラとして事業を継続しなければならず、
社員の給与は3割〜4割カットなど
大幅な労働条件の切り下げが強行されました。

再生を図るため、政府から強い要請を受け、
2010年2月、会長に就任したのが稲盛和夫氏。

稲盛和夫氏は、
・京都セラミック株式会社(現・京セラ株式会社)
・第二電電株式会社(現・KDDI株式会社)
の創業者であり、経営の神様と呼ばれています。

『利益なくして安全なし』

当時のJALは、
どの部署の人も言い訳しかしない体質で、
あからさまに他部署を批判するような
会社だったようです。

さらに当時のJALには、利益を追求し過ぎると
ろくなことがないという考えが支配しており、

利益を追求すると、
・安全面にしわ寄せがくる
・労働組合員が賃上げを要求してくる
・国は運賃を下げろと言ってくる

だから、
従業員は利益追求ではなく、
飛行の安全を維持するために、

とにかく良い部品を使い、
とにかく良い整備作業をやって、
とにかく品質を高めることにお金を注ぎ込み、

利益のことは、
他の誰かがやってくれていると
考えられていたようです。

『JALを社員の意識の高さにおいて世界一にする』

社員の意識を変えることが改革の第一歩として

一流大学を出て現場経験なく経営方針を決めていた
幹部10名くらいで構成されている企画部を廃止し、
現場経験者を幹部に引き上げています。

また、役員や部長、将来性のある若い人など
選抜された52名を対象に、
ほぼ毎日1時間行われたリーダー教育が改革の原点。

JALの将来を託す人物の見極め(評価基準)は、
「JALを一番愛し、真面目で一所懸命で明るい人」

『君は誰のために仕事をしているんだ?』

社員、お客様、銀行、株主の皆さんのため、
「利他の心」で再建を進めることが重要で、

半年のうちに幹部/従業員一人ひとりの経営者意識が
高まったことがJAL再建の成功要因と言われています。

稲盛和夫氏は、
『人生/仕事の結果=能力×熱意×考え方』の
方程式を用いて、どんなに能力があっても
熱意がなければ大きな掛け算にならない。

考え方がマイナスだと結果もマイナスになる。
何事にも前向きだと結果はプラスになる。
と唱えています。

生涯を終える2022年まで、
2012年取締役名誉会長
2013年名誉会長、2015年名誉顧問を歴任し、

JALは2016年にV字回復を成し遂げました。

2024年3月期、
JALの主力事業である航空輸送事業は、
国内と国際線ともに旅客需要が回復し、
特に国際線はインバウンドが増えて単価上昇。

需要に応じて価格を柔軟に設定する
「レベニューマネジメント」に注力し収益改善。

2025年-2033年度、欧州エアバスと米ボーイングの
新機材42機を国内線・国際線で随時導入するなど

国際線の事業規模は、北米やアジアを中心として
2030年度までに現状の1.4倍へ増加する見込みです。

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【経営の基礎知識】これさえ分かれば大丈夫!

[ 損益計算書(PL) ]

売上高(客数 × 客単価)
−原価   :仕入など製造原価、人件費など売上原価
−販売管理費:営業活動費、物流、広告、水光熱など
=営業利益

−営業外損益:銀行利息、為替損益、株式損益など
=経常利益

−特別損益 :突発的な損益、固定資産の売却など
−税金   :法人税、法人住民税、消費税など
=当期純利益

営業利益率(=営業利益 ÷ 売上)
5%〜10%で優良な経営状況といえます。

年間の経営活動で得た当期純利益を
利益余剰金として自己資本(純資産)に加える。

ちなみに、自己資本(純資産)と、
銀行などから借りた他人資本を合わせた
「総資産」が会社のお財布になります。

自己資本比率(=自己資本 ÷ 総資産)
少なくても30%、50%以上で優良な経営状況。


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[ 貸借対照表(BS) ]

ROE(=当期純利益 ÷ 自己資本)
自己資本(純資産)は、返済不要な資産、
ROEは、自己資本利益率の略になります。
10%以上で投資価値があると判断されます。


ROA(=当期純利益 ÷ 総資産)
総資産は、自己資本(純資産)+他人資本(負債)、
ROAは、総資産利益率の略になります。
5%以上で投資価値があると判断されます。

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