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【雑記】千年王国は来なかった

ということで5.0も最終盤、アーモロートまでたどり着いた。
アーモロートはアシエン・エメトセルクが愛する古代の人々の営みがそのままそっくりに作り上げられた幻覚の都……災厄が訪れる前日を、いつまでも繰り返していた。
この事実がつらく苦しく、また悲しい。街を照らす明かりの中で、生きている人は一人もいない。

古代人:争わず個性のない、薄気味悪い人々

古代人たちはこんな人々だ。
まず争わない。それから個性を持たず、個性的であることは良くないことと思っている。そうして自分が作り出した「イデア」(これがイデアと呼ばれているのも面白い)を人々に共有する。楽しみは弁論や、イデアを作り出し共有すること。
そうして他者のために犠牲になることを厭わない。

なんだか社会主義っぽいなぁと思った。一応組織がイデアを一元管理していたり、十四人委員会が人々を取りまとめてはいるので、共産主義よりは社会主義のほうが近そうだ。

人々は争うこともないし、弁論するのもお互いを高めあうことが目的であり、口汚く罵りあうことが目的ではない。
みな穏やかで、順番待ちをすれば必ず自分の番が来ると言い争ったりクレームをつけることもせず静かに座っている。
魔力が少ないなら私が手助けしましょうと助け舟を出し、子供たちには丁寧に物事を教えてくれる。自分だけで知恵を独占するのは良くないからと、発明品は何の見返りがなくても共有してしまう。
恐らくこの世界には貨幣も存在しないし、地位の高い低いもない。

表層を見ていると理想的で、同時に気味悪さを感じる。
ジョージ・オーウェルの1984年とかこういう感じだよな~みたいな…いや、もっと全然違う内容なのだけれど。

この版はいい、解説をトマス・ピンチョンが書いているだけで手に取って、その解説を読む価値がある。

古代人は本当に完璧だったのか?

それはさておき、古代人たちには1984年に登場したようなビッグ・ブラザーは存在しない。
彼らの中で、こういう風にふるまうべきであるという考えがあったから、そのように振舞っているだけだった。
だからゾディアーク召喚後、初めて意見が割れてハイデリンが召喚された挙句人類は初めて戦争をした。その結果、ハイデリンがゾディアークを打ち破って封印、世界は14個に分かたれてしまった。

彼らは真の意味で完璧で、何でもできて、他人に対して優しかったのではない。古代人という社会が古代人たちにそう振舞うことを求めたから、そうなっていたにすぎない。だから争いが生まれたし、そうでなければハイデリンとゾディアークは生まれなかった。

エメトセルクは、たぶんそのことに気が付いていたはずだ。それでも彼は、古代人たち…つまり彼の家族や、友達や、恋人と再び再開することを夢見ずにはいられなかった。
同じ魂の色を持っていても、それが全く違う人になるだろうと想像がついていても、どうしても諦められなかった。
彼が目的を達成すれば、再びハイデリンを召喚した人々と意見が割れて戦争になってもおかしくない。そのことから目をそらしている。

なぜそう分かっていても、彼は止まらないのか?それについては順番待ち中隣に座って来たヒュトロダエウスは、エメトセルクに対してこんなことを言っている。

というか……根が真面目な彼のことだ、
厭だ厭だと言いながら、背負ったものを、
誰にも託せなくなっているんだろう。
……残酷な役回りだよ、本当にね

ヒュトロダエウスのセリフより

まさに彼は、誰かから託された役目でがんじがらめになった男だ。しかも仲間もほとんど死に絶えて、自分がやらねばと気負っている。
だれにも頼ることがなかったと言っていたアルバートとまさに同じだ。ただ本人たちは否定すると思う。

終末幻想アーモロート:千年王国は来なかった

アーモロートは古代人たちの中でも市民権を持った、特に優れた人々が住んだ街だったようだが、それでも滅びの運命からは逃れられなかった。
それどころかその後生き延びた人類の半分が命を捧げてゾディアークを召喚し、その生き残りのさらに半分が更に命を捧げ…最後に生き残った人々は意見の違いから戦争をすることになってしまった、とヒュトロダエウスは語る。

まさに終末戦争の様相を呈した彼らの世界は、ハイデリンの一撃で14に分かたれて……。その結末に対するヒュトロダエウスの感想が「そっか」という一言なのも、またつらい。

こうやって外側から見ているだけでも絶望感がすごい。
彼らのもとには救い主だったはずのゾディアークが現れたものの、それは救済の神ではなくなってしまったのだ。

いずれにしても、エメトセルクはこの絶望的な状況から更に絶望の淵に突き落とされ、そうしてアシエン・エメトセルクとして生きていくことを決めた。すべてを取り戻せると信じて。

エメおじはヒカセンに「あの人」を見ている

個人的には、十四人委員会がこの当時すでに13人に減ってしまっていたことが気になる。
つまり本来はアシエンになることのできる存在は14人いたはずだったが、一人いなくなってしまった…だから今のアシエンたちは13人になった。

そしてエメトセルクは、ヒカセンにこんなことを言う。

ことあるごとに、エメトセルクはヒカセンに何か期待している

さらにヒュトロダエウスは、エメトセルクとヒカセンと同じ魂の持ち主に浅からぬ因縁があると仄めかす…。

思うにこの14人目こそがハイデリンを召喚するきっかけになった人であり、ヒカセンと同じ魂の持ち主だったんだろう。
そうして、たぶんエメトセルクが一番大切にしていた相手がこの人だった。
だからヒュトロダエウスは「あの人らしい」なんていうんじゃなかろうか。

きっとアーモロートが崩壊した日、「あの人」はエメトセルクのそばにいなかった。
エメトセルクにとっての救済の神は、本当はゾディアークなんかじゃなくて「あの人」だったんじゃないか。アーモロートの古代人は「大切な人から離れてはいけない」と警句を口にするのは、あの日離れてしまったことをエメトセルクが猛烈に後悔しているからじゃないか。

いっそのこともっと妄想しよう。
エメトセルクは真面目一辺倒で意地っ張りだ。だからきっと「あの人」とハイデリンやゾディアーク、そして災厄の話をめぐって大喧嘩した。
それで喧嘩別れしてしまった「あの人」に、自分がやってきたことのほうが正しいことだと今でも見せつけてやりたい…ずっと意地っ張りで、誰にも任せることができず、全部ひとりで背負い込んでいるのはそのためだ。

だから魂がいくつか重なって、光のエーテルを自在に操れるようになったヒカセンが「あの人」であったことを思い出して、自分を認めてくれる日を待ち続けていた。
でもヒカセンはエーテルを操れなかったし、化け物にもなってくれないし、自分の考えに真っ向から反対してくる。

エメトセルクがあんなに怒り狂って自らの正しさを主張するのは、自分のやってきたことを暁に否定されたからじゃない。
あの日と同じように「あの人」に否定されたからだ。

エメトセルクはヒカセンに大嫌いだけど大好きな「あの人」をずっと見ている。
そうしてやっぱり魂は変えられないものなのだと感じている……。

ハーデス討滅戦やりたくない

ということでここまでつらつら妄想してきたけど、ハーデス討滅戦に至るまでがすでに辛すぎる。

ここまできてアルバートは、自分が生かされた理由を知った。
そうして彼の魂は消滅し、ヒカセンの体にだけ霊災と同じ現象が起こったために光のエーテルを受け止めることができるようになった。
更に、水晶公によってほかの世界の「あの人」が召喚される…。

エメトセルクはすごく嫌だろうな~~
ここまで来てもまだ「あの人」は、エメトセルクを否定する。生まれ変わって、いくつもに分裂した魂になっても、お前のやったことは間違っていると真正面からぶつかってくる。

エメトセルクは「あの人」のことが大嫌いで憎くて仕方ないに違いない。
だが同時に、大切で好きでいとおしくて堪らなかったから期待してもいたし、あいつなら理性を保ってくるだろうなと思ってアーモロートに住民登録までしている。

本当にエメおじは馬鹿だ。そうしてどうしようもなくいとおしくなってしまう。
こりゃあ人気出るよなぁ…それはそれとして本当に討滅戦、やりたくない…。

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