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Kindle Unlimitedで今なら読める 2023.03 番外編 01 「南総里見八犬伝」

今月の読み放題タイトルを探していて、文学・評論カテゴリを眺めていたら、ふと1冊の本が目にとまりました。

1.2020年刊 小野英明訳

 本書は日本古典最長編の不朽の名著である「南総里見八犬伝」を、原文の格調を生かし、全十二巻に仕上げた完全完訳本です。

 縦横に活躍する八犬士の生き様は、人間とは如何にあるべきかという根源を問いかけています。立ちはだかる不条理に一途に立ち向かう八犬士の姿は、哀しいまでに凛々しく、私たちが求めるべき真実とは何であるかを、隠微として示しているのです。

お、この「原文の格調を生かし」というのが気になりますね。
ちょっと見てみたくなるではありませんか。
全10巻で、9巻まで読み放題。
10巻は2000円です。

他に読み放題で読める八犬伝には以下がありました。

2.1814年刊 国会図書館所蔵本

南総里見八犬伝 第九輯 (全 106 冊)

原本出版年:1814の国会図書館所蔵本のスキャンです。
かなり出版当時の姿に近いでしょう。

3.1911年刊 幸田露伴校訂本

南総里見八犬伝 幸田露伴校訂 全7巻

原文ですが、活字になっています。
ルビも充実しているので、読みやすいはず。

4.2017年刊 村井新吉訳

現代語訳 南総里見八犬伝 全訳/完訳 (全5巻)

(2021年10月 (無料アップデート版にて)改訂) 現代も『八犬伝』『里見八犬伝』のタイトルで多くの作品が翻案され、親しまれている『南総里見八犬伝』。 だが、1814年より28年の歳月をかけて刊行された、全98巻(全180回)にも及ぶ大作故に、原作そのものの本筋はあまり知られていない。 そこでこのたび、『南総里見八犬伝』を現代の人々にも手軽に親しんで頂くべく、平易な文章で訳した。 なお、曲亭馬琴が序文で触れているが、原作ではことわざや慣用句などが多く使用されており、また、文章のテンポも良い。 そういった点は、可能な限り原作の雰囲気を残すよう努めている。 また、挿し絵もオリジナルの図版を参照し、“現代語訳”に当たるとともに、理解の助けとなる地図や参考画像も多く取り入れた。 本編は、第一輯となる初輯(第一回~第十回)を収録。現代語訳で省略されがちな序文や後記も訳出。以下続刊予定。 全本と成すことは二、三年の間にしようと思う。


5.その他いろいろ

南総里見八犬伝 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫)

抄訳になっている角川ソフィア文庫は、まあ1冊で完結にまとめた入門編、という位置づけですからそれはそれで・・・。入り口はマンガだったり人形劇だったり映画だったりというのはよくある話です。

里見八犬伝 (全4巻) 2巻まで

八犬伝 (全15巻) 碧也ぴんく (著) , 滝沢馬琴 (その他) 7巻まで 

こちらは少女マンガ。

なんと言いましょうか。
日本の傑作娯楽小説がこうして公開されているのに、原本が読めないって、実はえらく損をしているのではないだろうか?、と今更のように思ったわけです。

それに、無意識に現代語訳の本に接していると、いろいろと知らない間に違ったイメージをすり込まれてしまう危険があるような気がするんです。

1814年刊の扉絵と、2017年本の扉絵を見比べて見てください。


1812年本


2017年本

どうですか?
知らずに見ていると、美意識が塗り替えられちゃうんですよ。
美人の基準は時代によっても国によっても異なります。
これは「現代語訳」する必要はない、むしろしてはいけない書き換えではないでしょうか?

3の1911年幸田露伴本なら、手書きが活字になっただけですから、そのまま芝居の台詞に出来るような原文の名調子が味わえます。意味が通じるという点では現代語訳が分かりやすいのは当然ですが、役者がそのまま使えるようなセリフにはなっていないと思います。

それでも2020年版小野訳は、できるだけ本来の語彙を残そうとしていることが感じられます。2017年村井訳は語彙も現代の用語に書き換えられている傾向が感じられます。

学校の教育内容によって、戦後の日本人は過去の文献が読めない日本人にされてしまいました。私も近年までそのことに危機感を抱いてはいませんでした。

しかし、ふとAmazonで無料本を漁っていると、西洋古典は(アルファベット文字が単純なので)大量に入手できるのですが、日本の古典籍が手に入りにくいことに気づきます。そして国会図書館蔵書はあるのですが、変体仮名が読めない、くずし字が読めないなどの問題にぶち当たります。

そう。そういうのは国文学専攻の大学生しか勉強してないんですよ。
しまった!
うっかり受験勉強のカリキュラムにしたがっていたせいで、日本の財産に手が出せない身体になってしまったではありませんか!

遅ればせながら、最近このことが腹立たしく感じるようになりました。
今からでもなんとか盛り返して、豊かな国書の山を堪能できるようになりたいなあと考えるこの頃なのです。

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