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ハマかぶれ日記220〜七夕の夜の悪夢

 きのう七夕の甲子園でのナイターは、阪神タイガースにとっては、「たなぼた」の勝ちを拾ったラッキーな夜だっただろう。相手のわが横浜ベイスターズがすべて得点に絡む内外野陣の4失策で、4点リードの優勢をわざわざ自分から放り出したのだから。9回裏、6対5で逆転サヨナラ勝ちしたタイガースの6得点のうち、ベイスターズ投手陣の責任となる自責点はわずか1点。失策した3人の「下手人」は全員、頭を丸めて、酷暑の中、懸命に腕を振った投手に土下座すべきだろう。
 最初は右翼手の度会。3対0から1点追加して4対0と勝ちムードが広がった局面で、ライト前のヒットを後に逸らして走者の生還を許し、追い上げ機運を献上した。続く5回には三塁手の宮崎が何でもないゴロを捕ったあと1塁に高投し、8回にも二塁手の牧が同じく簡単なゴロをお手玉して、それぞれ先頭打者を出塁させ、みすみす追加点を与える起点となった。
 仕上げは最終回。またも度会の出番だ。1点リードの2死満塁という切羽詰まった場面でタイガースの代打、原口が放ったライト前のヒットをグラブにおさめたまではいいとして、1塁にとんでもなく高く外れる返球をし、同点にとどまらずサヨナラとなる走者まで生還させてしまった。当たりのいい打球であり、1塁で刺してライトゴロ、ゲームセットという派手な幕切れを演出しようとギャンブルプレーをしたい気持ちはわかるが、あの返球はない。先の後逸といい、日頃の鍛錬不足を露呈するようなものだった。
 もちろん、敗戦の責任が全て野手にある訳ではない。9回裏、マウンドに立ったクローザーの森原が先頭打者の大山を四球で塁に出したのは、クローザーとしてあってはならない投球だった。
 試合後、いつもは温厚な三浦監督が珍しく憤慨した面持ちで「失策に先頭打者への四球。やるべきことをやれないと、こういうことが起きる」と吐き捨てた気持ちはよくわかる。「プロ野球ファンは、プロの技を楽しみに試合を見ているんだ。弱小高校の選手みたいな素人プレーを見せるんじゃないよ」。4時間近くも付き合わされた挙句の惨めな幕切れにさすがに熱くなって、なかなか寝付けなかった。寝ても寝覚めの悪い夢に祟られた。内容は、言わない。試合そのものが悪夢。 
 ちなみに、今シーズンのベイスターズのチーム失策数はこれまでに51で、阪神の53と肩を並べる突出した体たらくぶり。この夜、3連勝で首位・広島とゲーム差なしで並んだ巨人など、27でほぼ半分だ。個人失策数では、牧が11でトップを走っている。それを思えば、きのうが異常な試合展開ではなかったのだと、仕方なく、妙な開き直りをしたりした。
 きのうの昼間は、月に2回、稽古をつけてもらっているお師匠さんの勧めで、浄瑠璃から派生した三味線音楽「宮薗節」の「体験学習会」に参加した。「ほおずき」という題名の古曲を歌い、伴奏の三味線を弾く企画。生まれて初めて譜面に沿って三味線をはじいてみた。それでなくとも不器用な指は加齢で固まり、全く思うように動かない。「筋がいい」と褒められている同好のパートナーを羨ましく眺めていた。
 無茶苦茶に仕事も私生活もいい加減だけれど、なんだか憎めず、好きだった元の会社の先輩が音楽関係者の多い小パーティーで挨拶をするのを聞いて吹き出したことがある。「実は少々、楽器はやるんです。弦楽器に打楽器、吹奏楽器。何かって? まずは口三味線、ですね。次は腹鼓。吹奏楽器はと・・。ホラですね」。これはいけると思って、一度、真似たことがあるが、全くウケなかった。語り口、間合い、表情、仕草。笑わせるのには、熟練が必要と思い知った。
 本当に楽器の一つも扱えれば、人前で話題にできるし、場合によっては腕前を披露できて楽しかろうとは思う。でも今更、習熟するのは面倒だし大変。三味線はやはり、口だけにとどめておこう。
 ベイスターズの選手諸君。無芸大食の我が身なんぞと違い、もともとは優れた能力を持っているのだから、しっかり練習して己を鍛え直し、低調な現状をひっくり返して、チョーダイ。昨年、89歳で亡くなったコメディアン・財津一郎さんの口を真似て切にお願いしておきます。セ・リーグは4位までがゲーム差1以内でひしめく未曾有の大混戦。ここら辺りが関ヶ原だからね。

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