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ハマかぶれ日記208〜マダックスとは何か

 驚いた。わが横浜ベイスターズがなんと7連勝だ。しかも、ドラフト5位の新人右腕、22歳の石田裕太郎が完封勝利。それをテレビではなく目の前で見たとあっては、ファン冥利に尽きるというものだろう。わずか1週間前には4連敗、借金6の泥沼状態で、この日記にも「負けに不思議の負けなし」などとヤケクソ気味の文言を並ベたてていたことを思えば、雲泥の差ではある。
 きのうの7連勝の舞台は、所沢市のベルーナドーム(旧西武球場)。30代の若い友人N君がネットで確保してくれたチケットで、西武ライオンズとのセパ交流戦最終戦を観戦できた。ワクワクの反面、30度を超える暑さなか、球場への満員電車に揺られ、いささか閉口したが、約30年ぶりのベルーナドームは東京ドームなどとは異なり、記憶以上にスタンド上端に広い開口部が巡らされていて、いざ席に着くと、外の明るい緑を通り抜けて吹き込む風が心地いい。「やっぱり、野球は現場、球場でだなあ」と機嫌を持ち直したら、試合もその通りの展開となった。
 1回表、いきなり先頭の桑原が左翼線2塁打、これを2番の渡会が中前ヒットで返してあっという間に先制し、主導権を握ると、1週間前にプロ入り初登板して初勝利の幸先いいスタートを切った石田が、コーナーに丁寧に投げ分けてライオンズ打線を抑え込む。打線の方もこれに応えて、オースティンの本塁打などの活躍で中押し、ダメ押しときっちり得点を重ねて5対0で快勝した。
 石田は投球数95、無四死球の完封勝ち。試合後のヒーローインタビューでは、度会ら若手選手が多用する「サイコーでーす」の絶叫をするかと見ていたら、割合、淡々とインタビュアーの質問に答えている。「ストライク先行でいけたのがよかった」「最後まで投げるとは思っていなかった。やっちゃったなあという感じ」。初々しくも自分の言葉で語っている印象で、好感を抱いた。
 球数が100以下での完封勝利を「マダックス」と呼ぶ。大リーグで1990年代を中心に活躍し、通算355勝を挙げた大投手、グレッグ・マダックスが13回も記録していることに由来して命名された。よほどコントロールよく投げ、相手に打たせて取る技術がなければできない芸当だ。
 実際、この日の石田はストレートの球速は最高でも146キロと、最近の投手では目立たない速さだったが、思い出す限りでは、確か2回あったノーストライクスリーボールのカウントからでも、きちんとストライクを投げて討ち取った。「監督に行くかと訊かれて、行きます」とマウンドに立った最終回など、わずか8球、すべてストライクで三者凡退。新人離れした内容だった。四球を出しては打たれて自滅するタイプの投手が多いベイスターズ投手陣にとって、落ち着いたゲームメイキングができる待望久しい「希望の星」となるかも知れない。
 登板2戦目の「マダックス」は、チームの歴史上、大エースとして一時代を築いた200勝投手の現野球評論家、平松政次さんが1967年に達成して以来とか。名球界入り選手の軌跡を辿るとはとても験がいいし、何より、スライダーやカットボールの変化球を使いながら要所をキレのいいストレートで締めるピッチングスタイルは、やはりドラフト6位の下位指名で入団し、努力でスターダムを這い上がった三浦監督の現役時代を彷彿とさせる。「お気に入り」となることは必至で、どんどん登板機会が与えられそうだ。
 なんぞとハイになった気分で、「(試合を)観ていても、勝つ時には勝つんだよね」と、このところ何度か「観なければ勝つ」とこぼしたのを思い出し、今朝の散歩の時、鼻の巣を膨らませてパートナーに言ったら、「あらあ、もうきふぼく、っていうヤツね」とのたまう。?? ああそうか、あれね。「盲亀浮木」ね。上手いこと言う・・。違う、違う。そりゃ、滅多にないってことじゃないか。
 まったく。口の悪さには、年々、磨きがかかっている。さすがに亀の甲より年の功。これ、褒めてるんじゃないよ。


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