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AIでイラストレーターってどうなんだろう? 30年後には絶滅してるのかな。

「AIがすごいのは分かるんだけどイラストレーターってどうなんだろう? やっぱり30年後には絶滅してるのかな。」

絵を描くことが趣味の友達にこんなことを聞かれました。彼は、僕が画像生成AIの話をしたときに興味津々で聞いてくれるんですが、画像生成AIを実際に試したことがなく、ちょっぴり敵視しています。
そんな彼と同じような人は、皆さんの周りにもいるんじゃないかと思いましたので、僕がその時彼に話した、画像生成AIによってイラストレーターがどうなるのかをイメージしてもらいやすいような例えた話を共有させてください。


「画像生成AIとイラストレーター」は「AI翻訳と翻訳家」から考える

最近、AI翻訳がものすごく進化していて、大体9割正しく翻訳できます。逆にAIの仕組み上、それ以上の正答率は出せません。

これって、プロの絵師が描いたようなイラストが生成できるけど、細かいところは本物のプロの絵師に比べると劣っているイラストしか生成できない画像生成AIになんだか似ています。
このまま技術が進めば、違う言語同士でも会話が成立するくらいのスピードで翻訳できるようになっていき、学校で英語の教育が必要なのかということすら考え直さないといけなくなるでしょう。

こんな状況ですから翻訳家たちは全員失業する、、、なんてことにはなりません。翻訳家という職業が変化するだけです。
翻訳家たちは、まずAI翻訳を使って翻訳し、その後英文と翻訳された文章を比較しながら修正していくようになります。以前よりも時間効率が何倍もよくなっていき、翻訳家にとっても便利な世の中になります。
ただしほとんどの文章はAI翻訳で十分なので、必要な翻訳家の人数は減ってしまいます。

あるAI翻訳について書かれた本で「一度しか読まない文章はAI翻訳が翻訳し、何度も読み返す文章は翻訳家が翻訳する」になるといったことが書かれていました。
つまり、ネット上に転がっている英文を翻訳する際には大体意味が分かればいいのでAI翻訳を使って読み、何回も読み直すような好きな海外の小説は翻訳家によって書かれた美しい翻訳の文章を読むということです。僕個人としては、これからこんな世の中になるというよりは、既にそうなってるように思います。そのくらい、当たり前の話というか、「まあ、考えればそうなるよね」と腑に落ちるんじゃないでしょうか。

そして、これをそのまま画像生成AIに置き換えると「一度しか見ないイラストは画像生成AIで良くて、何度も見返すイラストはイラストレーターが描く」ということになります。
もちろん、イラストレーターは時間効率を良くするために、画像生成AIによって生成されたイラストを修正することが仕事のメインになり、僕らが想像するような純度100%のイラストレーターは、趣味としては成立してもビジネスとしては成立しなくなっています。

ここまで聞いて、
「じゃあ、本当に実力のあるイラストレーターだけが生き残るんだな。これからを生き抜くイラストを描けるようになるにはどうすれば良いか、、」
と考えるかもしれませんが、それも違います。

僕ら一般人が何回も見返すイラストって、ほんの数%しかありません。漫画なら大丈夫かというとそうでもありません。ネットで連載されているような有象無象の漫画であれば、ほとんど読み返さないのでコスパの観点から画像生成AIが選ばれるのも時間の問題です。簡単にイラストが生成できるとしたら、趣味で漫画を制作する人が無限に増えます。プロの漫画家さんは、大量に溢れる無料の漫画と戦わなければなりません。
そうなるとワンピースやドラゴンボールの作者のように、国民的スター以外は画像生成AIを使うことが前提になるでしょう。

だから、冒頭の質問に答えるのであれば、「イラストレーターは絶滅しないけど、今とは違うものになってるし、そうなるのは多分10年もかからない。」となり、友達が以前言っていた「AIに仕事を奪われないようにするにはどんなイラストを描いたらいいか」みたいな画像生成AIと敵対する視点の戦略はことごとく無駄になるので考えても仕方ないと思ってます。



ほとんどのプロクリエイターが失業する代わりに、ちょっと便利になる

ここまでざっくりいうと「画像生成AIがイラストレーター含めイラストを描く職業の人たちの仕事を奪う」という話をしてきましたが、「人間たちのイラストを描くという楽しみを奪う」という話ではありません。
これまで通り、好きにイラストを描いても何の問題もありません。イラストを描くことが職業として成立しずらくなっただけです。むしろ、画像生成AIのおかげで僕らお絵描きが趣味の人たちは、もっと自由に便利に表現しやすくなります。

僕の中のいる楽観的な一面では「僕ら趣味で創作する人にとっては楽園じゃないか。背景や色塗りだけAIに頼ってもいいし、自作ゲームを制作している人たちはイラストを調達するハードルが一気に下がるし、漫画だって絵が描けなくても作れるようになって、AIが小説投稿サイトの文章を読み込んで全自動で漫画を作ってくれるようになって、創作の世界はこれまで以上に一気に花開くんだ。才能がなくてもイラストが作成できるって素晴らしいことだよ」と言っています。

逆に悲観的な一面では「これまで自分が描いてきたイラストはすべて無駄だったのかな。もし今後AIがイラストや音楽や映像や台本を生成してくれるようになったら、創作に関してデッサンができるとかピアノが弾けるみたいな技術的なハードルがなくなり、あとはセンスのある人が優位に立つのかな。何だか何していいのか分からなくて辛い。」と言っています。

こんなふうに相反する二つの考えがぶつかっているせいで「AIってのはつまり、、、」という安易な書き込みを見ると微妙な気持ちになります。

ここだけの話

僕も絵を描くことが趣味で、画像生成AIに比べれば落書きみたいなイラストをたまーに描いていて、実は友達には話していませんが、画像生成AIを初めて触った日から明らかに絵を描く頻度が減りました。
ここ数ヶ月、画像生成AIのStable Diffusionを使って、耐えず更新される新機能で定期的に遊んでいて、画像生成AIに対して友好的な立場をとっていたつもりだったんですが、ほんの数十秒でプロのようなイラストが生成されるのが思いのほかショックだったみたいです。
なので趣味で絵を描いている人たちに対して、「これからはAIで創作が変わるんだ!!今のうちに触って知っておかないと置いていかれるぜ」と手放しに画像生成AIを人に勧めるのもどうかと思うわけです。

皆さんはどう思うでしょうか?


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