5次元の宇宙に生命は存在しない

生命が生まれるには液体の水が必要だと言われており、宇宙で生命が生まれることができる(液体の水が存在できる)領域をハビタブルゾーンと言います。地球は太陽から程よい距離の軌道を持っていたので生命が生まれることができました。

しかし、5次元より高い次元を持つ空間ではそもそも惑星の公転軌道が安定ではないので、生命は生まれないと考えることができます。今回はニュートン力学の下で高次元での惑星軌道の不安定性を示したいと思います。

惑星軌道の不安定性

2つの物質の質量が$${m_1,m_2}$$、距離が$${r}$$のとき、万有引力$${F}$$の強さは次のように表されるのでした。

$${F=G \frac{m_1m_2}{r^2}}$$          (1)

ただし、$${G}$$は重力定数とします。

このとき、重力場$${\boldsymbol{g}(\boldsymbol{r})}$$は以下の式を満たします。

$${\nabla\cdot\boldsymbol{g}=\frac{\partial \boldsymbol{g_x}}{\partial x}+\frac{\partial \boldsymbol{g_y}}{\partial y}+\frac{\partial \boldsymbol{g_z}}{\partial z}=-4\pi G\rho}$$          (2)

$${\rho (\boldsymbol{r})}$$は質量密度です。

さて、高い次元においても式(2)が成り立つとします。太陽の質量は球対称と仮定すると重力場も球対称なので、

$${\boldsymbol{g}(\boldsymbol{r})=f(r)\boldsymbol{r}}$$          (3)

です。N次元では$${r=\sqrt{\Sigma ^N _{i=1}x^2_i}}$$なので、

$${\frac{\partial r}{\partial x_j}=\frac{x_j}{r}}$$          (4)

式(3)と式(4)より

$${\nabla\cdot\boldsymbol{g}=Nf(r)+r\frac{\partial f}{\partial r}}$$     (5)

太陽の外では質量密度0より、$${\nabla\cdot\boldsymbol{g}=0}$$であるので、式(5)を解いて

$${\boldsymbol{g}(\boldsymbol{r})=-\frac{A}{r^{N-1}}}$$      (6)

となります($${A>0}$$は定数)。

地球の重力を$${m}$$とすると重力は

$${\boldsymbol{F}_{grav}=-\frac{Am}{r^{N-1}}\boldsymbol{\^r}}$$      (7)

となる。力の方向は太陽に向かうである。簡単のために地球の軌道は円であるとする。このとき遠心力は

$${\boldsymbol{F}_{cent}=\frac{mv^2}{r}\boldsymbol{\^{r}}}$$      (8)

ここで遠心力と重力が釣り合うから、

$${\boldsymbol{F}_{grav}+\boldsymbol{F}_{cent}=0}$$      (9)

さて、地球から太陽までの距離が$${r}$$から$${r+\delta r}$$に変化したとする。このとき重力と遠心力がそれぞれ$${\delta \boldsymbol{F}_{grav},\delta\boldsymbol{F}_{cent}}$$だけ変化したする。力の変化全体は$${\delta \boldsymbol{F}_{grav}+\delta\boldsymbol{F}_{cent}}$$である。

摂動しても安定に保たれるとき、地球の軌道が摂動↓方向とは反対の方向に力が働かないといけない。つまり、摂動$${\delta \boldsymbol r}$$と$${\delta \boldsymbol{F}_{grav}+\delta\boldsymbol{F}_{cent}}$$が反対向きであるので、軌道が安定な時は

$${(\delta \boldsymbol{F}_{grav}+\delta\boldsymbol{F}_{cent})\cdot\delta \boldsymbol r <0}$$      (10)

が成り立つはずである。

遠心力の変化を計算するために、角運動量が保存されることを使うと

$${mrv=m(r+\delta r)(v+\delta v)}$$     (11)

である。十分小さい摂動を問題にしているので、$${\delta r\delta v}$$の項は無視できて、

$${\delta v=-\frac{v}{r}\delta r}$$      (12)

が成り立つ。(8)と(12)から

$${\delta \boldsymbol{F}_{cent}=-\frac{3mv^2}{r^2}\delta \boldsymbol{r}}$$      (13)

さらに(8)と(12)から

$${\delta \boldsymbol{F}_{grav}=(N-1)\frac{Am}{r^N}\delta \boldsymbol{r}}$$      (14)

(9)より$${v=\sqrt{\frac{-A}{r^{N-2}}}}$$なので、

$${(\delta\boldsymbol{F}_{grav}+\delta\boldsymbol{F}_{cent})\cdot\delta\boldsymbol{r}}$$

$${=((N-1)\frac{Am}{r^N}\delta \boldsymbol{r}-\frac{3mv^2}{r^2}\delta\boldsymbol{r})\cdot\delta \boldsymbol r}$$

よって、(10)より、$${N>4}$$では軌道が安定しない。

おまけ

「なぜこの世界は3次元なのか」という問いには答えが出ておらず、様々な宇宙論の研究者が今なお研究がされています。しかし、この世界が5次元以上だとそもそも惑星が存在しないので、我々人間が存在し得ないでしょう。これは人間原理に頼った少しぼんやりした考察ですが、次元の謎を考える一つのカギになると思います。

「なぜ1次元、2次元ではないのか」という点については、相転移あたりがなにか重要な役割を果たしているのではないかと思っています。また、「なぜ4次元じゃないのか」については、私もよく分かりません。なにかご存じの方がいれば教えていただければありがたいです。

参考文献:Roel Snieder『完全独習 物理で使う数学 完全版』

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