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サニーデイサービス 「東京」

東京のジャケットを見ると、発売日に学校帰りに千葉PARCOのタワーレコードで手に取ったのを今でも思い出す。待ちに待ったせいか、アルバムの発売日まで正確に覚えているのはこのアルバムくらい。96年の2月21日。
春からの就職を控えた憂鬱な19歳には音楽だけが気持ちの拠り所となっていたけど、何かの始まりを予感させるこのアルバムは本当によく聞き込んだ。桜が咲いている3月ではなくて、2月に感じる春というのがよい。
サニーデイのアルバムジャケットでも一番好きです。

1曲目の「東京」を聞いた時の衝撃といったら。音楽にそれほど詳しくもなかったけれど、TVで流れていた70年代フォークとはどこか違った感触。前作「若者たち」よりもしっとりとしていて、リアルな90年代でもないどこか異世界な感じ。当時の渋谷系で流行っていたネオアコサウンドが色あせてしまうほどの威力。「東京」から「恋におちたら」の流れが実に素晴らしい。
後日談では、「96粒の涙」のタイトルで出す予定だったのが、スタジオ帰りのタクシーの中でラジオから流れてくる古い曲を聞いて急遽タイトルが変わったのだとか。この未発表バージョンの「96粒の涙」のアレンジもBeach Boys風でいいのだが、若干ポップすぎて他のアルバム曲からは浮くので、ジャケットとの相性も含めて「東京」がきて本当によかったと思う。

「会いたかった少女」「真っ赤な太陽」「いろんなことに夢中になったり飽きたり」「ダーリン」。このあたりの曲が特に好き。後のカントリー好きにつながる要素はこの影響が大きいかも。
古風で文学的な歌詞とカントリーな曲が揃った統一感。これがベストアルバムにはない、オリジナルアルバムの醍醐味だ。
唯一、「あじさい」だけが苦手だった。歌詞は素晴らしいのだが、曲の魅力が未だにわからない。シングルカットされたわけでもない「あじさい」があれほど人気曲になったのかいまだに謎である。

何年か前に20周年記念のBox盤が発売されたり、再現コンサートが行われたりで、懐かしくて足を運んだ。発売当時の渋谷クアトロでのライブでは曽我部さんは朴訥なロン毛の文学青年という印象だったのに、20年たって大分アッパーな雰囲気に変わって驚きました。(半ズボンだったのが若干引いたが・・)
当時よりも今の方がパワフルというか生き生きとしていてその活動には時々勇気づけられます。

常に聞いているわけではないけれど、春を待つこの時期になると聞きたくなるアルバムです。


CDの付録