雪がしんしんと降っている。 そこには何も感情がなさそうで、 ただひたすらに降り積もる。 積もった雪が音を吸収して、さらに静寂が辺りを響き渡らせる。 張り詰めた空気が、何も根拠のない胸騒ぎになる。 不安が襲いかかってくる。 何かに気付いたのか、彼は私の手を握り、ポケットへ差し込み温める。 彼のポケットが小さくて二人の手が中々入らない。 「ふふっ。そういう所だよっ」と笑う。 2人のとても小さい笑い声が、魔法の呪文だったかのように、一瞬で静寂な世界が消え去り、根拠
新しい靴。 ピカピカの靴。 靴底が剥がれるまで履かないと買ってもらえなかった靴。 靴にはひとつ、思い出がある。 小学生の頃、多兄弟の末っ子として産まれた僕は、 着る服はおろか、靴さえも、お下がりだった。 いつの日か不満や怒り、 不公平さを覚える歳になると、 いつも母親にねだっていた。 家計は火の車。 大家族の中で靴なんて、履ければいいもの。 それよりも食。明日への活力。成長の源。 なるべく良い食べ物をたくさん。 その中でも質より量を。健康への積み重ね
あなたは人間。 役職も肩書も、今も昔も必要ない。 わたしも人間。 人間であるために必要なものはある。 ひとりひとりが人間人間。 自問自答を繰り返し、 魂動いて心を燃やす。 燃え出す心は、 火力を増して、動き出す。 燃料くべり、煙をはき出し、汽笛を鳴らせ。 動き出す汽笛の合図はいつだって、 あなた自身の賜物よ。 人を騙し傷つける悪人も、 人を励まし寄り添う善人も、 ちきゅうのまわりは、人間だらけ。 どこへ向かうあなたの心。 レールの分岐、組み立て
1月晴天なり。 空が青い。 空気が澄んでるようで、 遠くに見える富士山も今日は、はっきりと見える。 今日も外は寒そうだ。 見慣れなかった景色が、日常になりつつある。 悲しい事だと痛感する。 レースのカーテンだけ閉めて、窓からの冷気を少し緩和させる。 空調は自動で温度調節をしてくれているらしいが、 雨が降ったりすると、やはり寒くなる。 そういう時は、軽いカーディガンを羽織る。 ベットに横になり、点滴をながめる。 静まり返った部屋の中でも、点滴の落ちる音も
家の前の通り、急な登り坂。 登り切る少し手前、左手にある水色の屋根の家 私の家。 祖父からの受け継いだ家。 築何年だろう。 屋根は、なんで水色なのだろう。 前は、黄色だったような。 どちらにせよ、少し奇抜。 じいちゃんの趣味。 引越して、6年目。 色々と、不便。 受け継いだ恩を忘れて、文句が出る。 それでも6年目。いつしか、住めば都。 自分の家になった。 自分の居場所になった。 坂道の登り切る少し手前、 左手にある水色の屋根の家。 登り切らな