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3次元CADとワークステーションの歴史

最近では、Soilidworksなどの3次元CADが使えるコンピューター、ワークステーションの性能が以前よりも安価でかつ、比較的手に入りやすくなり、自作でも実現できる環境になってきました。
筆者も、この2年間で、Solidworksが動くPCを2台ほど自作しました。
CPUの高速化・高性能化が主な原因として挙げられます。
そこで、今回は、筆者の経験を交えて、Solidworksに代表される3次元CADと、それを動かすためのワークステーションの歴史について、筆者の経験を交えてお話ししてみたいと思います。

1990年代後半

筆者が3次元CADを使用し始めたのは、大手電気メーカーに入社してからしばらく経った1990年代後半になってからです。
それまでは、A1(新聞紙と同じくらいの大きさ)の紙製図面用紙に定規、コンパス、それに鉛筆を使って完全に手書きで図面を作成していました。それから、数年後に、CADを導入するという検討が始まり、Pro/ENGINEER(現、Creo)と言う3次元CADを導入することになりました。
当時は、今のようにミッドレンジの3次元CADも数が少なく、ほとんどがハイエンドでかなり高価でした。
それと同時に導入したワークステーションは、DEC(Digital Equipment Corporation)のもので、当時、科学技術計算がかなり得意とされていたアルファチップのCPUを搭載しており、かなり人気がありました。

Pro/ENGINEER Wildfire版


こんな感じのワークステーションで、モニターもCRT。

2000年代前半

しばらく、Pro/ENGINEERとDECのワークステーションで機械設計業務をしていました。
ほぼ毎年といっていいほど台数を増やしていっていました。
毎回、導入するワークステーションのスペックを決めるために数社のワークステーションを評価していきました。
ある時点でアルファチップを搭載したDECのワークステーションよりも、IntelのCPUを搭載したワークステーションの方が、高い性能を示すようになりました。
それ以降は、IntelのCPUを搭載したワークステーションを導入することになりました。
当時、IntelのCPUは、Xeonと呼ばれるサーバーなどに搭載されるCPUでした。Xeonは、高性能PCに搭載されており、今でも存在します。
使用していたワークステーションは、主に、サーバーに使用されていあたコンピューターで、かなりの重量級。
Pro/ENGINEERのメーカーによる社内セミナーなどの際には、事前にでっかいワークステーションが送られてきて、それをセミナー当日に使用するといったこともしていました。

2000年代後半

上記のような環境で、しばらく設計業務をしていました。

2010年代前半

この時期になると、持ち運びが可能なラップトップ型ワークステーション(以下、モバイルワークステーション)が登場し始めました。
代表的なメーカーに、DellやHPがあります。
持ち運びがかなり容易になりましたが、3Kgくらいの重量があり、かなりの高価でもありました。
当然ながら、性能はデスクトップ型のワークステーションよりも劣るものでしたが、3次元CADを使えるくらいの性能はありました。
持ち運べるのはかなり有利でした。

Dellのワークステーション
HP Zbook 15 G2

かなりの重厚感があるように見えると思いますが、デスクトップ型より、かなりダウンサイジングされた。

2010年代後半

この時期になると、モバイルワークステーションも、技術の進歩により、小型・薄型・軽量化および高性能化が進みました。

具体的には、
・ディスプレイの縁(ベゼル)がかなり細くなった
・モバイル用のCPUとGPUも高性能になった(AMDのおかげかも)
・SSDの出現でストレージの占有容積が極端に小さくなった
・DVDドライブが排除されていった
という感じでしょうか。

Solidworksなどの3次元CADが満足して動くモバイルワークステーションも15.6インチのモニターで1.8Kg程度にまで小型・軽量化が進みました。
代表的なのがDellのPrecisionの15.6インチのものです。

Dell Precisionシリーズ

2020年代前半(現在)

さらに、小型・軽量化が進み、14インチのモニターで1.4~1.5KgのモバイルワークステーションがHPやLenovoから登場しました。

しかしながら、スペック上からは、3次元CADがちゃんと動くか疑問になります。実際には、試したことがないので、確かではないですが。

Thikpad P14s
HP Zbook Firefly 14inch

今後の期待

筆者の知っている範囲で書いてきましたが、最後に今後の期待についてお話ししてみたいと思います。

さらなる小型・軽量化が進み、14インチ以下のモニターで1.4Kg程度のモバイルワークステーションを期待したいです。
モバイルワークステーションは、ゲーミング用PCほど性能を要求しないので、十分に実現可能だと思います。
この傾向の背景は、モバイル用CPUの性能がデスクトップ用の性能に追いついてきており、その差がかなり小さくなってきていることにあります。
2021年の終わりから2022年の始めにかけて発売されたIntel第12世代CPUにより、この傾向が顕著に現れてきています。
2022年にはゲーミング用ラップトップPCとして、ASUSから13.4インチのPCが発売されました。第12世代Intelの高速CPUが搭載されています。

ASUS  ROG Flow Z13


また、AppleのM1チップにより、Apple製のデスクトップPCとラップトップPCの性能差がほとんどなくなってきています。
しばらく、この傾向が続くと思います。

M1 PROとM1 MAX

その先は、ちょっと遠い将来になると思いますが、3次元CADも、クラウド上で操作できる世界が来ると思います。現在よりもかなりの高速通信と高性能なクラウドコンピュータが必要になることでしょう。

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