【ショートエッセイ】美味しいもの定義
「今日は頑張ったから、美味しいものを食べるんだ!」
と先輩が言ったので、何を食べるのだろうと考えた。
焼肉かな、お寿司かな。
聞けば良かったけれど、ご飯に連れて行って欲しいとねだっているように聞こえたら申し訳ないし、他の誰かと食べる予定が既にあるのかも知れない。
当たり障りのない言葉を探した結果、
「いいですね!」
というひと言になってしまった。
就業後、駅まで一緒に歩くことになった。いつもは曲がる道を直進して、先輩が行きたいというコンビニエンスストアに向かった。先に帰ってもいいよと言われたけれど、何か甘いものが欲しくて一緒に行くことにした。
コンビニスイーツは誘惑のかたまり。新商品という文字に引かれながらも、1番好きなシュークリームを選んだ。
「いいね!シュークリームも捨てがたい。」
と後ろから声が聞こえて振り向くと、カルボナーラとプリンを手にした先輩がいた。どうやら今日の晩御飯らしい。
そうか、美味しいものってそういうことか。
先輩にとっては、”好きなものを食べること”が”美味しいものを食べること”だった。
「わたしも美味しいもの食べます!」
と先輩に伝えてレジへ向かった。
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