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小雪捜索記。長いです

2024年6月20日

自分の不得の致すところなのですが、二日間、仔猫を耐えがたい状況下に置き、多くの方にご心配をかけた大騒動が終わりました。

いなくなった猫が帰ってきた幸せを噛みしめるのに、どうでも良い映画などをつけて平常を装ってみたり、道路で出会えた不思議を思いため息をついたり、夢でないか確認したり、そわそわ。


16日。

こゆき〜!こゆき〜!
こゆき〜!こゆき〜!

こんな時に生かされる、腹式発声。
脱走した3匹のうち小雪が帰っていないことに気づいた、日曜酔歌終了時刻21時半。
静まり返った田舎の夜の上宇部地区に、ご近所迷惑どころではない騒音が響きます。

これにびっくりして、近くにいたであろう怖がりの小雪は縮こまったのか、2日間の逃走を決めたのか。

一箇所弱っていたリビングの網戸ストッパーの隙間を突破し皆の脱出を促したほいてまは、遊んで帰り繋がれたウッドデッキでくつろいでいる。

家しか知らない仔猫のこと、遠くには行かないだろうとタカをくくっていたけれど、夜通し優しく呼びながらどれだけ近所を歩いても、もうそろそろ鳴くだろう、もうそろそろ見つかるだろう。うんともすんとも返ってこない、呼んだら超高音でにゃあと鳴くはずの、仔猫。

ここから他の全ての時間は停止し、酔歌のセッティングは残したまま、グラスは溜まったまま、洗濯は溜まったまま、化粧の顔とコンタクトレンズはかぴかぴのまま、いつ終わるかわからない、終わりが来るかもわからない、小雪の目の前の景色の想像、暗闇の始まり。


17日。

夜が明け、自分の目だけでは見つからないと、目撃情報求む貼り紙を自分の家の塀に貼り出し(一軒家っていいね)、警察と保健所に連絡、返事のにゃあを待ちひたすら呼び歩く。

朝方は、鳥たちがそれぞれとても綺麗な声で鳴いていて、小雪に似た声もあって、返事かと耳をすませばリズムにのった鳥の声、カラスがカーカー嘲笑う。

真っ昼間も、一人遠くさまよう小雪の足取りを思えばぎらぎらの暗闇。小道という小道をゆく。お参りにも行く。

夕方、疲れてソファで小休憩、二時間ほど寝て、小雪が帰った夢をみる。雨の匂い。SNSの掲示板などに投稿を始める。

夜、大雨。
雨で仔猫は動かない、腹をすかせた泥だらけ、自分だけたらふく食べられない。窓の外に、匂いを届ける餌を設置。おまじない設置。
朝方にかけて、大量のビラを作成、コピーの写真と手書き、願掛けのつもりでひたすら手を動かす。少し気持ちが楽になる。きっと見つかる。
匂い作戦、魚やらイカでも外で焼こうかな(一軒家っていいね)、たくさん焼いてもそんなに食べられないな。


18日。

日の出に目覚ましをセット、ちょうど雨も止み、餌は誰かが食べていた。
住宅街は人の家の倉庫や裏に入れなかったから、ポスティング、ビラ配りと称してちょっと侵入、すみませ〜ん、こんにちは〜、こゆき〜。

うちも猫ちゃんいるから、と優しい言葉をくださった女性もいた。同級生の実家のお父さんにも会った。
ボロボロの外観、中の様子で空き家と思って薮に侵入したら若い男の子が網戸の中、布団にいて、あっこんにちは、猫を探しています、見つかるといいですね。
ボール遊びの小さい子、この猫前に窓から脱走しようとしよるとこ見たよ!それほいてまね。今度はおねいさんに教えてね。
ここ、昔遊びに来てたゆうこちゃん家だ、ウイズっていうゴールデンレトリバーがいた、子どもをもらえるって約束したのに、母にだめと言われて泣いた。
お参りにも行く。


暑い暑い、昼下がり。
ポスティングもほぼ終わり、少し休憩。
窓から、道ゆく人が貼り紙の感想を言いつつ歩く声が聞こえる。

夕方、18時。
母から40分間のいつものウォーキングに誘われる。
疲れていたが気分転換に一緒に歩く、夜になったらまた動こう。
母と歩いた帰り道、十回以上は歩いた小道に寄った。もう一回だけここ入って帰ろう。

こゆき〜、

、、、にゃあ!


!!!!!!!!!!!
どこから聞こえた?排水溝??

にゃあ、にゃあ、にゃあ!小雪の声。姿が見えない。ごそごそやっていると、ご近所のおばちゃんが、見つかった?出られないのかしら、消防?

それから、わらわらわらわらと、その塀の持ち主のおじいちゃんが上から掘ってみてくれたり、角のおじちゃんが誘き出しに寸切り棒で餌を入れてくれたり、おばあちゃんたちが野次馬的に集まったり応援したり、結局誘き出しの長期戦に落ち着き、みんなそれぞれ帰って行った。


怯えた仔猫、出てきたら、土管から土管へ、溝から溝へ、走る走る。懐中電灯で戦う。
どこかの裏口から草むらに飛び込んだ、そこは始めに小雪を保護してくれた、うちの向かいのおばちゃまの家。
おばちゃまも出てきてくれて一緒に探すも、返事なし。

見つけたのに、捕まえられなかった、、、。
肩を落として。


月明かり、23時。
いるエリアがわかったから、朝までゆっくりお気に入りの鈴のおもちゃで誘き出そう。
庭に、ガーデンチェアを出して、シュークリーム出して、むしゃむしゃ食べた。家の電気を全部つけて、外のシンクにほいてま繋いで鈴もて遊べば、いろんなものが忍び寄る。
小雪に出していた餌狙いで来るようになった、クロちゃん、ともくん、新しいグレーの仔猫ちゃん。

深夜に跳ぶほいてまとたくさん遊んで、こっそり隣のお庭に近づくと、、、
にゃ、にゃあ、にゃあ、にゃあ。

ゆっくり歩いて、自分から再びマミイの手にくるんと小雪ちゃん。
しっかり抱えて連れて入って、やっと家の時と光が動き出しました。



19日
朝。
ずっとマミイの腕にくるんと小雪ちゃん。ごろごろ。もういいよマミイ。

神様仏様、心配して祈ってくれた皆様、近所の皆様、本当にありがとうございました。ごめんなさい。もう二度と脱出させません。
最近ばたばただったけど、幸いにも予定が入ってなかった2日間。
雨の後に入ったであろう排水溝、小雪の居場所をたまたま歩けた幸運。
砂漠で砂を見つけるような作業だと、でも歩いてなきゃ出会えない、諦めなくてよかった。
いろんな道を発見したり、腹ばいで土管を覗き自分史上最多の団子虫と遭遇したり、私も大冒険。
朝早くから動いてると一日って長いんだね。
空き家でも紫陽花は綺麗に咲くんだね。



見つかった旨、嬉しい報告ポスティングをして回ったら、見つかってよかったわねと一件おばあちゃまから電話があった。
覚えてらっしゃるかわからないけど、中学生の時痴漢にあった私を道ばたで助けてくれた、たくさん猫飼ってる生花教室の先生だった。


塀の貼り紙
写真とセットで配ったビラ


おまじない
洗われた小雪
見つかったよ貼り紙


見つかったよビラ


一晩中のぎゅう
二日ぶりの平和


小雪が返事をした排水溝






































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