チョコとバニラの思い出
私の母は非常に不器用な人であった。
手先が不器用というわけではなく、生き方がとても不器用だった。
おそらく今でいうところの「なにか」を持っている人だったんだと思う。
ただ、子供視点でいうとその「なにか」が明確に判らない。
もしも現代であの手の人がいたらカウンセリングないし、病院できちんとサポートを受けていただろう。
今回はそんな不器用な母親との思いでの一つを綴りたいと思う。
もちろん、食べ物に関する話だ。
以前、書いた記事の通り私は甘いものに対して少し苦手意識がある。
それでも少しずつ改善されていったのだが、どうやら改善されなかった部分があった。
それはチョコレートだ。おかしなことに私は小学生の頃にはチョコボールのキャラメルを喜んで食べていた。
コアラのマーチもだ。
チョコレートのお菓子は喜んで食べていた記憶は確かにある。
しかし母と半分こにして食べていた唯一のものがある。
それがホームランバーというアイスだ。
半分このホームランバー
昔のホームランバーはチョコとバニラの二層になっているアイスだったように思う。
あの細長いアイスの上の部分がチョコで下がバニラになっていた。
母はなぜかホームランバーのチョコが好きだった。
そしてそのチョコだけを食べてバニラの部分を私に食べさせてくれていた。
「おかあさんはチョコだけが食べたいから」と言ってバニラ部分を渡された。
なので私はチョコアイスを食べずにいつもバニラアイスをもっしゃもっしゃと食べていた。
でも、大人になってうっすらと忘れかけていた味覚の記憶をたどるとおそらくその母の「食べたいだけ」というのは嘘である。
何故ならその半分こは私が小学生になるころには無くなっていた。
そもそもホームランバーすらも母は買わなくなっていた。
本当にチョコアイスだけが食べたいのであれば、母はホームランバーのチョコアイスを買っていたはずである。
しかし母は買っていなかった。彼女が好んで買っていたのは抹茶アイスだった。
別にチョコアイスが好きだったわけではなかった。
確かに私はチョコに対して苦手で口に入れる事がなかった。
母はそれを把握したうえで少しでもアイスを食べさせてあげたいという気持ちもあったのだろう。
当時のアイスは幼い私にはどれも大容量で、一口アイスなんて都合の良いものもなかった。
母の中でちょうどよかったものがホームランバーだったのだろう。何よりも安価だったからね。
今もホームランバーは売っている。
復刻版パッケージとして販売されているアイスは記憶の中のパッケージと同じだ。
しかしあの頃に見たチョコとバニラの二層の物は売っていないようだ。
アイスの味はあまり覚えていないけど、バニラとチョコの境目にほんのりと苦みを感じたチョコアイス。
バニラのまろやかな甘みは4歳のつたない味覚と記憶補正なんだろうと思う。
ちなみにその後の私はスーパーカップという濃厚で爆発的においしいアイスを知ってしまい元々バニラアイス一択の人生がより濃密なものになった。
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