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短編小説『耐える人』

ある日、仲間と登山に行きました。マイペースの私は、いつの間にか皆んなとはぐれてしまいました。

慌てて、皆んなの所に戻ろうとしたら、足を滑らせて崖に落ちてしまいました。

勢いよく落ちていきましたが、私は、岩の僅かな隙間にしがみつき、落下を逃れました。

なんとか、耐えていると、
みんなの、声が聞こえてきました。
助けに来てくれました。

すぐ近くまで来てくれている。
気づいてくれ。
お願いだ。
私は、ここにいる。
声を出せたら、すぐに皆んなに気づいてもらえる。

しかし、“助けて”  と、少しでも声を出してしまうと、岩の隙間から指は離れてしまう。

気づいてもらって、落下していくか、
気づかれないまま、生き抜くか、

私が選んだのは、
岩にしがみついたまま生きていく事だった。

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