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「ツマミを下げ目にしたときに左右で音量違う気がする」は気のせいじゃないかも(2連ツマミとギャングエラー)

オーディオI/Fやミキサーなど、手元にある機材のヘッドフォン出力やスピーカー出力の音量ツマミを下げ目(時計の10時ぐらい以下)にすると、なんだか左右で音量が違うような…という悩みを持っている人向けの記事です。
ぼくもだいぶ悩まされ、自分の耳のせいかなあとだいぶ不安になりました。

結論からいうと、その症状はギャングエラーというアナログ音量ツマミの構造そのものに起因する左右の音量誤差です。
この記事では音量ツマミの構造の解説といくつかの解決策を提示します。

音量ツマミの構造の解説:

音量ツマミ(=ボリュームポット)とは

ボリュームポット。ギターパーツ売り場とかにある。
このように操作部分(本来はこの部分がツマミ)をつけて使う

音量ツマミの電子部品としての正確な呼び名は「(アナログ)ボリュームポット」です。
ほとんどの機材のヘッドフォン出力やスピーカー出力のボリュームはアナログボリュームポットを採用しています。
(一部のオーディオI/Fでは(モニター)スピーカー出力がデジタルボリュームの場合あり)
アナログボリュームポットは音声信号を通すときにツマミの回転によって抵抗値を連続的に変化させ、音量を減衰させる役割があります。

ボリュームポットの構造と問題

修理時でもここまでは分解しない

ボリュームポットの構造が電子的というよりかはけっこう物理的な力技なのがわかるかと思います。
そしてその物理的というところに音量差問題の原因があります。

1軸2連ボリューム

アナログ音声信号で用いられる電子部品は基本的にモノラル(1つだけのch)です。
ステレオ(2つのch)で使う場合、同じ部品を2つ束ねる必要があります。
アナログボリュームポットはモノラルボリュームポットの接点側を物理的に繋げる(2連式=ギャング)ことでステレオでの音量操作を実現しています。力技!

つまりこれと大差ない(フェーダー2本をビニテ留め)

物理で繋げているということは、2連ボリュームポットの製造時にどうしてもズレが生じます。しかも接点(2個上の画像の赤丸で示した部分)は金属を折り曲げたつくりなので、そこでも製造時のズレが生じます。さらに抵抗側も製造時の誤差が生じる可能性があり…
これらのズレや誤差は特に抵抗値が高いとき、つまり音量を下げ目のツマミ位置のときに顕著になります。これが2連式ボリュームポットによる左右の音量差、いわゆるギャングエラーです。


ギャングエラーを避けるには: 

アナログ式2連ボリュームポットでは根本的な解決策はありません。
たとえばヘッドフォンアンプなどの専用機材を購入しても、ギャングエラーは構造上どうしても発生します。(実際にぼく自身が2万円のヘッドフォンアンプで相当悩まされた)
自力でボリュームポットを選別して部品交換するという手段がなくはないですが、同じ仕様の2連ボリュームポットが見つかるとは限らなかったり、オーディオI/Fは部品交換が困難なつくりだったりするため、あまりいい解決策ではありません。

前段で音量を下げ、アナログ音量ツマミを上げ目で使う

ギャングエラーは抵抗値が低め=ツマミ位置上げ目であれば発生しない(誤差が小さい)ものです。経験上では時計でいう10時以上のツマミ位置なら気にならないことが多いです。
しかし単純に上げるだけではスピーカーやヘッドフォンから爆音が出てしまいますね。
だったら音量ツマミより手前の部分で音量を絞って、音量ツマミを上げ目で使い、結果的に同じ音量がスピーカーやヘッドフォンから出るようにすればOKです。
たとえばオーディオI/Fなら再生ソフトの音量を絞りましょう。ソフトウェア含むデジタルボリュームは左右での誤差が発生しないので。
DAWならマスターchのフェーダーを下げてもいいでしょう。書き出し時に戻すことをお忘れなく。
ミキサーであればステレオchにインプットしているシンセ側の音量を(ギャングエラーがでない10時以上までで)下げ、ステレオchのゲインを上げ目にする方法が考えられます。

後段にパッシブモニターコントローラーを入れる

ステレオボリュームポットはあくまで音量を減らすだけが役割です。
後段にステレオボリュームポットをもう一つ入れ、ギャングエラーが起きない位置にしつつ2段構えで音量を減らすという手段もあります。
パッシブモニターコントローラーは言ってしまえば、ステレオボリュームポットに端子とミュートスイッチや切り替えスイッチをくっつけて筐体に納めただけの機材です。うってつけですね。
Fostex PC-1eに適宜変換をつければ用をなすかなあと思います。(パッシブなのでInput/Outputを逆向きにして使ってもOK)
電子工作に自信がある人なら、固定抵抗もしくは有段階式アッテネーターを組み込んだ変換ケーブルを作ってもいいかもしれません。

デジタルボリュームの機材に買い換える

Focusrite Clarettのライン出力は確実にデジタルボリュームです。いわゆるお高めオーディオI/F(2in/2outで5万円以上)はデジタルボリューム率が高いです。ユーティリティソフトで前段での音量下げをやることもできます。
ギャングエラーの解決策としてはちょっと大袈裟すぎますが…

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