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【北陸の鈍行といえばコレ】521系の撮影会に参加!

 みなさんこんにちは。今回は、令和6年10月5日に金沢市で開催された、「北陸三県並行在来線521系車両撮影会」でのようすをご紹介します。

 さて、北陸新幹線と「並行在来線」は、切っても切れない関係にあります。平成9年10月の信越本線(軽井沢駅~篠ノ井駅)の経営分離に始まり、平成27年3月の信越本線(直江津駅~長野駅)および北陸本線(直江津駅~金沢駅)、令和6年3月の北陸本線(金沢駅~敦賀駅)と、北陸新幹線の延伸にともなって、新幹線の並行在来線はJRの手を離れていきました。このたび金沢~敦賀間も三セクに経営移管されたことで、北陸本線の大半が三セク化されたことになります。

 このたび、石川県内の旧北陸線を運行している「IRいしかわ鉄道」が主催となり、北陸3県に所属する第三セクターの521系電車をまとめて撮影できる機会がありました。午前・午後の2部制で、なおかつ各回50名&事前応募制とのことで、ダメもとで応募してみたところ、午前の部に当選しましたので行ってきました。参加費用は、(私がIRいしかわ鉄道のファンクラブ会員ではないので)11,000円でした。

当日の様子

 当日朝、小坂でバスを降りました。撮影会参加者の集合場所はIRいしかわ鉄道の本社で、歩いて約10分で行くことができました。10時30分に受付が締め切られ、全体の説明を受けたあと、参加者みんなで撮影会場へ。

 元日に発生した能登半島地震以降、約9か月以上にわたって運休が続いている、七尾線の観光特急「花嫁のれん」号で使う車両がいました。

 今回の撮影会は、521系の0番台3次車・100番台・1000番台が集められており、見た目が統一されていたのがよかったです。それぞれの編成は、左から
・【0番台3次車】ハピラインふくい HF14編成
・【0番台3次車】IRいしかわ鉄道 IR18編成
・【0番台3次車】IRいしかわ鉄道 IR21編成
・【100番台】IRいしかわ鉄道 IR08編成
・【1000番台】あいの風とやま鉄道 AK22編成
 の順でした。

ハピラインふくい HF14編成
IRいしかわ鉄道 IR18編成
IRいしかわ鉄道 IR21編成
IRいしかわ鉄道 IR08編成
あいの風とやま鉄道 AK22編成

 撮影会の会場となったのは「IRいしかわ鉄道 車両センター」で、かつてはJR西日本の金沢総合車両所 運用検修センターの敷地だったところの一部です。現在もJR西日本は車両基地を持っていますが、令和6年3月16日からは「金沢車両区」に改組されており、さらにIRいしかわ鉄道と同居という状態です。
 令和5年春の時点で、金沢総合車両所 運用検修センターには「特急車両だけで」100両以上が在籍していましたが、現在は長編成の特急車両が1編成たりとも所属していません。なんとも寂しい光景になりましたね…。(現在は特急車両は、七尾線の「能登かがり火」号で使う3両編成×4本(12両)だけが、かろうじて生き残っている状態です)

特急車両がほぼ一掃された金沢車両区

 さて521系の話題に戻ります。 521系は、平成18年11月に運行を開始した、交直両用の普通用車両です。最初は滋賀県内の区間を中心に稼働しましたが、徐々に活躍範囲を北のほうに拡大し、現在では糸魚川駅から米原駅までの、いわゆる北陸本線のほとんどをカバーしているほか、七尾線(七尾駅以南)でも活躍しています。
 北陸3県の並行在来線三セクで活躍している521系は、多くがJR西日本からの譲渡車両ですが、あいの風とやま鉄道とIRいしかわ鉄道は、一部車両を自社で発注しています。今回の撮影会で展示された編成でいうと、0番台の3編成はJRからの譲渡車でした。

敦賀駅に停車中の521系
(JRからハピラインふくいへの譲渡車)
津幡駅に停車中の521系
(JRからIRいしかわ鉄道への譲渡車)
北陸線時代の能美根上駅に停車中の521系

 撮影会では、いわゆる青帯の、北陸本線で見慣れた仕様のほかに、ハピラインふくい・IRいしかわ鉄道・七尾線用(100番台)・あいの風とやま鉄道の仕様も並ぶということで、非常に華やかな雰囲気が漂っていました。

 今回の撮影会では、まず「普通 金沢」の表示で撮影がはじまりました。鉄道ファンからの注目が集まっていたのは、やはり北陸本線の青帯ですが、生活利用者としての見どころは、七尾線の100番台でしょう。
 それはなぜか?という話ですが、七尾線の普通列車はすべて、車掌が乗務せずに運転士だけが乗務している「ワンマンカー」のため、行先表示も「ワンマン」の文字がかならず表示されるのです。「ワンマン普通」ではなく「普通」単体の表示を(521系100番台で)見かけることはめったにないといえます。

 521系の青帯車両については、滋賀県内を主に走る0番台1次車(2両編成×5本)はJR西日本に在籍したままですが、大多数は第三セクターへ譲渡されており、各社の塗色に姿を変えています。令和6年3月に、新たに2両編成×16本(32両)がハピラインふくいに、同数がIRいしかわ鉄道に、それぞれ譲渡されました。
 塗色は譲渡後に変わるため、譲渡直後は青帯の車両がほとんどでしたが、塗色変更の進行にあわせて青帯の車両は減少しています。10月10日時点で、三セク所属の521系に残る青帯は、IRいしかわ鉄道に在籍している2両編成×2本のみになっています(3月にJR西日本からハピラインふくいに譲渡された編成は全車がハピライン仕様に変更済)。
 逆に考えるなら、青帯の車両は、(この撮影会を最初から想定していたかはさておき)なんらかのイベントをやるまでは残しておこう、という意図があったのかもしれません。 ※あくまで憶測です

左:ハピラインふくいの車両(通常色)
右:IRいしかわ鉄道の車両(七尾線以外)

 撮影会で登場していた、残り少ない青帯の車両(IR21編成)も、近いうちに、水色一色の顔に変わることと思います。

北陸線の普通列車といえばコレ!「青帯」
ハピラインふくいの塗色も、521系の帯デザインを踏襲しているといえます。
色は全く異なりますが。

 しばらくして行先表示の変更がおこなわれ、お次は「ワンマン普通」の種別幕がお目見えしました。旧北陸線の三セク区間では、早朝・日中時間帯を中心に、2両編成でのワンマン運転が行われていることが多くあります。朝夕のラッシュ時間帯は4両編成・ツーマンで運転されています(2両編成でツーマン運行のときもあり)。

 このとき、あいの風とやま鉄道の521系1000番台は「ワンマン普通 高岡」表示をしていて、私はよく見ずにスルーしてしまったのですが、石川県側から高岡止まりの列車は設定がないことをすっかり忘れていました。とはいえ高岡駅で折り返して富山方面へ向かう列車の設定は一定数あるため、「普通 高岡ゆき」自体は珍しい存在ではないといえるでしょう(富山県側)。

 そしてお次に行先表示の変更がされたときからは、徐々に鉄道ファンが沸き立つ要素が盛り込まれていきました。なかでもこの「ホリデー 金沢」という表示は、知る人ぞ知る名列車のイメージでした。

「ホリデー」の幕

 IR18編成が表示している「ホリデー 金沢」の表示は、平成29年春のダイヤ改正で津幡→金沢の片道1本が設定された「IRホリデー号」をイメージしたものでした。設定当時は津幡10時47分発→金沢11時00分着の各駅停車でしたが、ご丁寧にも「ホリデー」の種別幕を出していたようです。
 平成31年春のダイヤ改正で、先行する普通列車(富山方面から直通)が、多客時等に関係なく2両→4両に増車されたことで「IRホリデー号」の設定はなくなりましたが、「ホリデー」の種別幕を出している定期列車には、ぜひ乗ってみたかった気もします。

 ハピラインふくい線の車両は、「快速 敦賀」の表示に。開業にあわせた令和6年春のダイヤ改正で、JR時代に廃止された福井~敦賀間の快速列車が復活することになり、現在も運行され続けています。

撮影会場から東金沢駅方向を望む

 11時30分ごろに、「特急能登かがり火号が通過します」という社員さんの案内があり、しばらく待っていると… 来ました!
 和倉温泉発金沢ゆきの特急「能登かがり火4号」が通過しました。

 金沢に残っている数少ない特急車両は、サンダーバード号の増結車両などで活躍してきた、683系2000番台(R編成)です。3両編成×4本が金沢車両区に在籍中です。
 金沢車両区に在籍しているR編成の製造は平成17年と、北陸線系統の特急車両としてはそこそこの年数ですが、平成28年~平成30年にかけてリニューアル工事が行われたことで、観光客にもビジネス客にもウケのいい、多方面への需要をバランスよく盛り込んだ特急電車となっています。

 個人的に681系・683系は、なにかすごい特徴がある!という車両ではないな~と思いますが、観光客向けに装飾されているわけでもなく、ビジネスマン向けの設備が充実しているわけでもなく、万人受けする普遍性を持っていると思います。どんなときでも安心して乗れる、そんな印象があります。

 さて、特急「能登かがり火4号」が通過し、撮影会も終わりが見えてきたころに、行先表示の変更が始まりました。今回はヘッドマークも披露されました。

「臨時 津幡」
「試運転 松任」

 JR西日本の通勤車両(三セク譲渡車も含む)で、大きなヘッドマークが装着された姿を、生で見るのは初めてでした。JRでヘッドマークといえば、寝台特急のイメージが強かったので、通勤車両である521系に装着されているのを見ると、すごく頼もしい存在に見えてきます。

「IR21」の編成記号を外そうと模索する社員さん

 IR21編成が、JR時代の面影を強く残す貴重な車両なだけに、「IR21」という編成記号のシールをはがせないか、社員さんが模索している様子も見られました。結局剥離は行われませんでしたが、青帯の車両を撮ることができただけでも十分満足です。

 午前の部ということもあって、光線状態がやや心配でしたが、結果的には天候に恵まれて、いい撮影会になりました。

IRいしかわ鉄道の所属編成の並び
「あいの風ライナー」の表示
やや見えにくいが…。

 最後に、今回の撮影会にあわせてお披露目されたヘッドマークのあれこれを見学し、終了となりました。

感想

 今回は、定員制&11,000円での有料撮影会ということで、全体的にきわめて和やかな雰囲気で撮影を楽しむことができました。普段、私はあまり鉄道の撮影に赴くことはありませんが、鉄道の撮影は個人的に、場所取りやその体勢なども含めて、殺風景で競技をしているようなイメージがあったのです。
 その点において、50名という小規模な人数もさることながら、撮影可能な場所が広く確保されていたので参加者が密集することもなく、のびのびとやりたいようにできたのは大きかったといえます。また、行先表示の要望は一切受けないなど、会場を混乱させないリスク管理も、よく考えられているなぁと思ったものです。鉄道ファンが喜ぶような希少な表示も出しつつ、普段521系が表示する行先も見せることで、”日常”をしっかり感じられるような演出も抜かりなく行われていました。

 また、ハピラインふくい・あいの風とやま鉄道など、各鉄道会社の協力を得ていることもあってか、各社のグッズを数点ずつ、参加記念として参加者全員に渡してくださりました。車両の捻出や運用調整など、各社が協力しないとこのイベントが成立しえなかったであろうことは、もはや言うまでもありません。

 50分前後という撮影時間で11,000円という参加費用は、正直参加するまでは、これは高いなぁと思ったものですが、内容・雰囲気としては非常によかったと思います。おそらくイベント実施に関するさまざまな事務手続きに、それなりの費用がかかっているのでしょう。
 私としては、頻繁に横を通過する、旧・金沢総合車両所 運用検修センターの敷地に入ることができる貴重な機会でしたので、それ自体が、非常にわくわくする体験でした。

 筆者は、毎日というわけではないものの、週に何度かIRいしかわ鉄道線の列車に乗ることがあります。北陸線は、経営主体がJRから第三セクターになっても、地元にとって必要不可欠な日常の移動手段であることには変わりありません。北陸3県を日々走りまわる第三セクターの列車が、末永く、地元の通勤・通学などの足として活用され続けることを祈って、記事を締めたいと思います。
 おつきあいいただきありがとうございました。

 (余談)撮影会終了後は、東金沢駅から金沢ゆきの列車に乗りたかったところですが、いい時間に列車がなかったので、行きと同様に帰りも路線バスに乗りました。