タコ焼きは冷めた方が美味い

タコ焼きってさ、熱すぎると思わないか。
なんだあの熱さは。あれどう考えても口の中で炸裂させていい熱さじゃないだろ。

そんなわけで僕は出来立てのタコ焼きを上手く食えた試しがない。
噛んだ瞬間あのマグマが俺の口内を蹂躙していくのだ。あんなものはただの拷問である。味なんてわかったもんじゃない。この世でタコ焼きで火傷しなかった人間など存在するのだろうか。

でもタコ焼きの味は大好きなんだ。そしていくら熱いとはいえタコ焼きと言えば出来立てアツアツで食うもんだ。ハフハフしながら火傷しながら口の中の皮をベロベロに剥がしながらそして血まみれのままその1日はもう痛くて何も食えなくなりながら食うドマゾの一品、それがタコ焼きなのだ。もうこれはしょうがないのだ。

ある日、アツアツタコ焼きを食うのを忘れ、部屋に放置してしまったことがあった。ズボラな僕は再度のレンチンすら億劫だったので、その冷めたタコ焼きをそのまま食べたところ、

え！！？？美味い！！！？？？

なんと今まで食ってきたタコ焼きの中で1番美味かったのである。
正しく言うならば「今まで食ってきたタコ焼きの中で1番味が分かった」のだ。
タコ焼きそのものはなんの変哲もない、ただのコンビニで買ってきたタコ焼きである。
それなのにも関わらず、ダシの旨味やソースの芳醇さ、タコの食感、青ノリの香りその他諸々がガツンと舌に届いたことに僕は驚きを隠せなかった。
そして１つの仮説が浮かび上がったのだ。

そもそも「アツアツ＝美味い」ってまやかしなのでは？

こういうことを言うと必ず言われるのがこれだ。
「それは食い方が下手なだけ。舌先で食うから熱く感じるんだ。舌の奥で食えば大丈夫。」
いやオメーは馬鹿か。そういう食い方をせにゃならん段階で欠陥じゃろが。

あと熱いの苦手なのが猫舌だと決めつけるんじゃねえ。こちとら舌どころか口の中全部にダメージ受けてるしなんなら飲み込む時だって食道や胃にダメージ与えとんじゃいもっと広い視点を持てインド行けインド自分を探せ原宿で満足してんじゃねえ。

もちろん僕だって今まで努力をしなかったワケではない。それこそどうやったらタコ焼きが上手く食えるようになるか調べたりもしたとも。そこで見つかったアンサーがこれだ。

「一度つまようじでタコ焼きを割って冷ましてから食べましょう！」

結局冷ますんじゃねーか！！！！

しかもなんだその冒涜的な食い方は！！なんのためにタコをクルクルしてひと口サイズにしとんじゃ！おやっさん泣くわ！いくら薄利多売の大阪とは言えおやっさんだって家族養うために必死でクルクルしてんだよ！その努力をふいにしちゃダメだろ！「お年玉貰ったけどポチ袋毎回捨てるの面倒だからピン札でくれればいいのにー」じゃねーんだよ！！お前の性根が気に入らない！！

そういう意味でもこのタコ焼きという料理。
熱いことにメリットがなさすぎる！！
熱すぎて味も分かってもらえず、人の口の中を傷つけ、しまいにはその熱さ故に一度割られて結局冷まさざるを得ないという二度手間！！
かわいそう！！タコ焼きかわいそう！！

とりあえずこれを読んだ方は一度タコ焼きを常温クラスにまで冷ましてから食べていただきたい。タコ焼き本来の旨味や風味を、熱さという雑音ナシで味わうことができるでしょう。
そして「もしやこの世の全ての料理は冷まして食った方が美味いのでは？」という感情が生まれるはずです。

そう、その通り。

この世にある全ての料理は冷まして食った方が美味いのです！！！

つづく

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