Netflixを解約するまで後28日〈トークサバイバー1話〜3話〉

とうとうNetflixに堕ちてしまった哀れな人間による恥の多い備忘録である。せめて心までは堕ちぬよう抵抗していくために筆を取る。
Netflix、お前は「キャンセルや解約は簡単にできますのでお気軽にどうぞ！まっどうせそんなことできないでしょうけどね！こぉ〜んなに面白いコンテンツだらけの我がNetflixですから！」とのたまっているが、絶対に思い通りにはさせない。

『トークサバイバー』第1〜3話

去年千鳥と佐久間宣行がタッグを組んで鳴り物入りでNetflixで公開されたバラエティ番組。
学園ドラマコントをしていきながら途中でエピソードトークや大喜利のお題を出され、その中で結果が芳しくなかった者から脱落しコントの中でも死亡扱いとなる。まさに「トーク」で「サバイブ」する番組だ。
この番組の情報が解禁された時に自分は強くこう思った。
「とうとう俺もNetflixに入る時がきたな…」
そこから加入まで1年以上経過した。旬を逃し続けている自らの半生にことごとく嫌気がさす。

しかし実際「Netflixに入らなくては…！」と強く思ったのはこの『トークサバイバー』がきっかけの１つだったのは間違いない。
ネット配信のバラエティ番組で言えば、やはり『ドキュメンタル』や『内村さまぁ〜ず』、『有田と週刊プロレス』などを有するAmazonプライムが頭一つ抜けており、テレビバラエティのアーカイブも大量に残っているのもあったため、正直アマプラにさえ入っていればバラエティ欲は満たされるだろうとタカを括っていた。
そこに現れたのが『トークサバイバー』である。

「Netflixオリジナルバラエティ番組」で「千鳥」と「佐久間宣行」というこのマジ感。「これ上手く行っちゃったらどんどんNetflixでしか観られないバラエティ番組が増えていくのでは…？」という懸念は速攻で的中し、今ではAmazonプライムと遜色ないほどのコンテンツ量となってしまった。この間たった1年である。エンタメの情勢は移り変わりが早すぎる。

そんなわけで1年越しに視聴した『トークサバイバー』だったが、1年経っても現役バリバリの実力派がひしめいているので視聴に対する安心感がすごい。状況に応じての対応力が求められるこの戦場ではかなりのタフネスがある人材しか選ばれない、そんな自信を持ったキャスティングのように思えた。

構造としてはかなり佐久間宣行感が強い。コントとアドリブの融合という意味では彼の代表番組である「ゴッドタン」や「ウレロ⭐︎未確認少女」に近い立ち位置と言える。キス我慢の劇場版が分割ドラマで観ているような満足感があった。
本筋のストーリーのようなものは確かにあるのだが、そこは演者としてずっとコミカルな大悟と外からツッコむノブがやはり素晴らしい。
DMMTVの「インシデンツ」ではどうしてもストーリーが重きになっていく構造で演者もコント師としての実力派ばかりだったので温度差をガッツリ楽しむ作品だったが、トークサバイバーは逆に「結局お笑いでっせ」のままシームレスに進んでいく。バラエティ番組としての観やすさという観点ではテレビと遜色ない楽しみ方ができるだろう。

その中でNetflixらしさがどう出ているか。もちろん潤沢な予算による必要がないほどのドラマセットの作り込みや役者の選出などはあるが、配信であるが故のちょっとしたブレーキの緩さが今回のキモかと思えた。
もちろん演者は全員テレビタレントなので大きくハズすようなハメの外し方はしない。その中で際立つのが唯一非芸人かつ女性参加者の峯岸みなみだ。

「誰にも言っていない秘密」というトークお題で彼女はミニスカートの制服コスプレのまま足を机に置き靴下を脱ぐ、少しセクシーなポーズのまま薬指と小指の大きさの違いで笑いをとるのだが、そこでふと思う、「ちょっと峯岸足の裏汚いな…」そう感じた瞬間に劇団ひとりが「お前って案外足の裏汚いんだな」とクリティカルにイジるこの流れ。
別に地上波でやっても爆笑だったろうけど、この一連の流れはネット配信かつNetflixオリジナルバラエティという普段と少しだけ違う戦場であるが故の薄らぼんやりとした緊張感の中で生まれたちょっとした外し方が大きな笑いを生んだように思えた。
「女子メンタル」で覚醒した峯岸みなみの強心臓はこのシーン以外でも十二分に発揮され、現場に良いアクセントをもたらしたまま、彼女は名誉の死を遂げた。生き残った芸人たちがどんどん苦しんでいる姿を観ると、『トークサバイバー』とは果たして生き残ることが最も得なことなのか考えされられる。それほど峯岸みなみの輝きと散り方は美しかった。真っ白な灰になった矢吹ジョーのように、全てを出し切った美しい敗北である。

キリが良かったので3話までで視聴を止めているが、どうやら4話以降はキャストもガラッと変えてお送りされるらしい。どうか新しいキャストも華々しく散る姿がカメラに映っていることを祈る。

思ったより長くなってしまったので内さまワールドの人間ドック回についてはまた今度。

Netflixを解約するまで後28日