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うどんとプリン

 プリンは硬いほうが好き。
 みっしり詰まって壁のようにしっかりとして、食べ終わったときに満足感で腹をさすりたくなるような、どっしりしたプリンが好き。
 たまにはプッチンとするほよほよのプリンも食べるけれど、人生最後のプリンはどんなの食べる?と聞かれたら、硬いプリンを選ぶ。
 ちなみにかたい、という漢字はいくつかあって、それぞれに意味が違うらしい。調べてみると、
「堅い」の対義語は「脆(もろ)い」
「固い」の対義語は「緩(ゆる)い」
「硬い」の対義語は「やわらかい」
だそう。
 そしてうどん。
 うどんについては、最近テレビなどで紹介されて、そして福岡の生んだ偉大な物知りおじさんタモリ(敬称略)の発言で市民権を得た、「うどんにコシはいらない」派。柔らかくて噛まずに飲んでも胃腸に負担をかけなさそうなうどんが好き。
 讃岐とか伊勢神宮とか富士山の近くでうどんを食べた博多っ子が、
「これ煮えとらんよ!生煮えばい」
と言う気持ちに深く共感する、うどんは柔らかいのがいちばんだと思っている。
 もちろんその地域名産のかたいうどんが出てくれば、喜んでずるずるいただくが、心の奥底では、「なんじゃこりゃかたっ」と思うと思う。食べたことないけど。
 柔らかいうどんは、やわらかくてゆるくてもろい。すべての「かたい」に対義する。

 うどんとプリンといえば、小学生のころ、給食で必ずうどんとプリンがセットで出てきていた。大人になって想像するに、うどんを茹でるときの蒸気でプリンを蒸すと一石二鳥だったのだろう。プリンは蒸しプリンで焼き目もない。カラメルもない。そしてほんのり温かい。いまから数十年前の時代、給食とは児童の空腹を満たし、必要な栄養さえあれば十分で、食の豊かさとか食育なんて言葉はまだなかった(と思う)。とにかく予算内でお腹いっぱい食べさせることが重要だったのだろう。
 そして、うどんとプリンの給食にはフォークが一本ついていた。
 フォーク。
 うどんと、プリンを、フォークで食べるのである。
 「おうどん召し上がれ」と言われてフォークを添えられたら困惑する。プリンだってそう。
 とにかく予算内で栄養と満腹を両立させて、準備と後片付けのコストを考慮した結論なのだろうと思う。でも箸とスプーンがほしい。プリンは冷やそうよ。カラメルつけようよ。給食だから昔だから仕方がないと言われても、そういう問題じゃない。
 なのでいまでもなんとなく、うどんを食べた日はプリンを食べたくない。

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