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20世紀梨

モーニング娘。のヒット曲「LOVEマシーン」のカップリングをご存知だろうか。
「21世紀」。わたしはこの歌を聴くと、涙腺が危ない。危ないどころか充血していることがある。世紀末の不穏なムードのなか、たった一人理解者らしきガールフレンドが「夢のつづきを教えてよ」と言ってくれたら、どれだけ雨の降る日のバイトの帰り道、救われただろうか。

田舎の道筋は似たり寄ったりで、否が応でも密になる人間関係に辟易していた。
あの頃は、当然YouTubeなんてなかった。赤外線で連絡先を交換できることを嬉々として、でもSNSなんてものもないから、どこで誰が何をしているかなんていうのは想像の範疇を超えなくて、にぎやかな未来を想像するには行き止まりで、テレビに噛りつくしかなかった。テレビにはやさしい嘘があった。

そんな時、よく読んでいた雑誌は「クイック・ジャパン」「テレビブロス」。まだ誰も掘っていないエンタメやいにしえの文化、どうでもいいガセネタ、多くを“サブカルチャー”とくくり、紹介していた。

天邪鬼で青田買いがすきな少年だったわたしは
<無罪モラトリアム>をリリースするかしないかぐらいの椎名林檎や
バカリズムのフリップ芸の原点のような、大喜利文化の金字塔のような
<バカドリル>(天久聖一×タナカカツキ)を
知っていることに悦に入っていた。

昭和の名残りからの平成の派手さ、そこにも馴染めなかった裏路地。

私はようやく居場所らしきものにたどり着けた気がしていた。

ところが、どうだろう。今はもうサブなんてものはない。
もっと言うなら、メインというものもない。あるにはあるが。
みんながみんな、自由に一等賞を決める時代だ。

先日、渋谷で私は面食らった。
ヴィレッジ・ヴァンガードに本の文化はなくなり、
アイドルグッズだらけになっていた。しかもネクストブレイク的な扱いの人たちではなく、もう一定層の固定ファンが間違いなくいる人らの。
蔦屋も驚いた。ここもアイドルやアニメのフロアが増えたのと、
ほぼレンタル映画DVDに力を入れていないに等しかった。セルの横に気持ち程度に置いている。
東急百貨店本店もまもなく55年の歴史に幕を閉じる。
クイック・ジャパンは、重箱の隅を突くのが特徴だったが、
今はトレンドの人らが表紙で、テレビブロスは月刊になった。

すこし話は変わるが、私は今は亡き三軒茶屋中央劇場でもぎりをしていた。
弐番館と言われる名画座だ。
一緒に働いていた上司は看板描きをやっていた。

彼は趣味でカメラをやっていて、写真のグループ展に誘われ、何度か行ったことがある。いつも彼の作品は街の中に例えば大村崑ちゃんのオロナミンCの看板があったとしたら、そこだけ残して、あとは青インクで塗りつぶす作品だった。

20代の私にはコンセプトがわからなかった。しかし、今ならわかる。

変わりゆく景観の中に「昭和」を探していたのだ。
まさに働いていた映画館も昭和そのものだった。

ただ彼と違うのは私は「昭和」なんぞ求めていない。
変わっていくことも大いに結構だ。

私は「夢のつづき」を考えているだけだ。

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