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こいちじかんとりっぷ

近所に「似鳥」という表札の一軒家がある。

こういう場合、私はふと立ち止まり、妄想を膨らませる。

ピンポン。

「はい」「似鳥様のお宅でしょうか」「そうですが、どちら様でしょうか」「いや、似鳥様のお宅かなあ、って」「そうですよ、だからどちら様なんでしょうか」「いや、あの、お値段以上、のですよね?」「はい?」「いや、だから、表舞台に出るときは片仮名の?」「ああ…そうです、そうですよ。だからなんですか?」「はあ…感動だなあ…」「え?」「いや、だって、こんな近所にいるわけないと思ってましたから。あ、急ですが、握手したいので出てきてもらえないですか」「無理です無理です。怖いですから。しかも今から家族とドライブするので」「あ、そうですよね。お忙しいですよね。そうか、残念だなあ。こんなに近いのに」「え、弊社の商品、そんなにお好きなんですか」「いや、ひとつも持ってません。基本、Francfrancで買います」

みたいな、かりそめの会話劇をぐるぐる回転させながら、呼び鈴は当然押さず、大塚家具へと走り出すのである。

だれか、早急に殺してくれないだろうか。


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