東京駅からすこし歩くと、女神に会える。
※「投げ銭」スタイルのノートです。どなたにもすべてご覧いただけます。
東京駅を降りてすこし歩くと、女神に会える。
背に大鷲の翼を広げ。
まだうら若い女の姿。
岩場の上に腰かける、勝利の女神。
名は、ヴィクトリア。
ここから見れば、初々しいむすめ。
恋人を夢みて、恥じらいに顔を染め、花輪を手にして。
ここから見れば、堂々たる女神。
勝利をみちびき、勝者に、月桂樹の冠をさずける。
大理石のあたたかく白い石肌に起こされた、
柔らかいしぐさと、やさしい手のゆび。
きれいな、はだしの足ゆび。
ゆったりと、流れるような衣。
女神は動くことがない
が、もしも腕をのばすことがあれば、
そのふるまいにふるえる空気は、
花が香るように見る者の心をそよがせるかもしれない。
女神は声をもたない
が、もしも声をあげることがあれば、
その唇からこぼれる言葉は、
海に差しこむ日差しのようにまぶしく輝くのかもしれない。
東京駅からすこし歩くと、女神に会える。
ビルとクルマの峡谷に、ひっそりと
ビルとクルマの峡谷に、ひたむきに
彼女はいる。
解説
こじんまりとした美術館、ブリジストン美術館の入り口に、それはあります。クリスチャン・ダニエル・ラウホ(1777-1857)作「勝利の女神」。大理石の彫刻です。
彫刻は、絵画とは違って、自分でその像を見る視点、角度、構図を選ぶことができます。いちばんしっくりくる向き合い方を探してみることができます。とくになんとも思わない角度や、多くのひとがよいと思う角度のほかにも、どこかとても美しく思える角度があることがあります。こんど彫刻を見る機会があったら、通り過ぎざまに眺めるだけでなく、あなただけの角度をみつけてみてください。間近で見れば、彫刻の息遣いすら聞こえるような気持ちになれるかもしれません。
も しこの彫刻が気に入ったなら、ぜひ行って、自分の目で間近に接してみることをおすすめします。入館料はそのときの展示によって変わるようですが、入り口ち かくにあるこの作品をみるだけなら、入場料すらいりませんから。もっとも、館内の常設展示にも素晴らしい作品がいくつもありますので、時間に余裕があると きは、中もゆっくり観てまわりましょう。きっと、豊かな時間を過ごすことができると思いますよ。
※「投げ銭」方式ですので、この後にあるのは、ただ感謝の気持ちだけです。
スキひとつじゃ足りないっていう気持ちになることがもしあったら、考えてみていただけると、とてもわかりやすくてうれしいです。