再エネ賦課金から考えるエネルギーのあり方

電気代の高騰が家計を直撃しています。
6月から東北電力管内では標準的な家庭で2,110円の値上げです。
国民負担率が50%に迫っている中、更なる可処分所得の減少は大変な問題です。
特にここ雪国青森では、電気使用量が冬場は自ずから増えますから、電気代高騰は家計に避けようのない出費を強いるものです。

家計だけではなくお店やオフィス、病院や工場への電気代高騰の影響は非常に大きいです。
あるスーパー経営者の方によると電気代が今冬は昨冬に比べ数百万円の単位で増加したといいます。
企業経営者の方々からは「昨冬ですらなんとか乗り切ったというのに、次の冬を乗り切れるのか不安」と言う声が上がっています。

企業への電気代高騰は、例えばコスト削減のためのボーナスを抑制するとか、あるいは商品を値上げせざる得ないなど、さまざまな形で家計にも響いてきます。

値上げの主な理由はロシア・ウクライナ戦争など国際情勢の変化に伴う石炭・天然ガス・石油などの燃料費の高騰とされています。
青森市議会の政治レベルで、ここをなんとかするのは現実的には難しいです。
しかし、市民の暮らしを守るために、電気代高騰を少しでもなんとかしなければいけません。

そこで電気代の領収書を見ると
・燃料調整費
・再エネ賦課金

の2つが加算されているのがわかります。

燃料調整費はまさに燃料費の高騰です。
では、再エネ賦課金とは何でしょうか?

【再エネ賦課金とは】
簡単にいうと、再エネの発電コストと再エネ以外の発電方法のコストの差を、私たちで負担しているものです。
再エネの発電コストはまだ再エネ以外の発電方法より高く、自由競争にすると再エネは普及しないので、その差を埋めようというものです。
この再エネ賦課金は売電事業者が集めて、再エネ発電事業者から固定価格買取(FIT)やFIP制度(FIP制度:再エネ発電事業者が卸市場などで売電したとき、その売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せする)で電気を買う際ににかかる費用として再エネ発電事業者に支払います。

私は常々、この再エネ賦課金に以下の理由で疑問を表明してきました。
①資金力のある再エネ事業者に対する一種の補助金を電気代という国民全員があまねく負担しているものから集めるのは、所得の逆分配ではないか?
②再エネの目的は地球温暖化防止による環境保全だが、FIT制度やFIP制度による補助で、コスト面で本来不可能な巨大開発事業が可能になってしまい、自然破壊に結びついている。本質的には八甲田や十和田湖・奥入瀬渓流周辺に風力発電が無秩序に計画されているのもそのせいでは?
③本来の再エネの利点は、巨大なプラントがなくても電力の小規模個別化による地域でのエネルギー自給や最低限の電力の安定供給が可能になる点ではないか?巨大な再エネ発電施設に対しても補助することは、この環境保護を目的とする再エネの趣旨に反していないか。
④そもそも二酸化炭素削減という目標に対して費用対効果の悪い政策とされている

【再エネ賦課金は廃止、せめて一時凍結すべき】
上記のように、再エネ賦課金には政策的な整合性などの点でも大きな問題があります。
よって再エネ賦課金は廃止するべきというのが私の考えです。
急激な廃止はひずみが大きいのは当然ですから、
①すでに稼動済みの再エネに関しては、段階的に固定価格買取額を引き下げる
②①と合わせて、自家消費による電力消費量拡大につながる蓄電池設置などに補助
③FIT/FIP認定済みだが稼動していない施設に関して、認定時の買取価格を現在の買取価格水準まで引き下げる※すでに太陽光は一部措置済み
②一定の基準を超えて電気代が高騰した場合、再エネ賦課金の徴収を停止する措置をとる
これは、電力事業者及び再エネ事業者にも電力高騰の痛みを分けあうことが必要と考えるからです。公共のインフラであるので、当然安定供給が使命であり、市場原理に任せて置けない部分もありますが、現行の再エネ賦課金制度では電力政策への国民の不信感が募るばかりです。

【再エネが普及すると再エネ賦課金は下がると聞いたが本当か】
 結論から言うとしばらく下がる見込みはなさそうです。今年度は再エネ賦課金制度導入以来はじめて単価が下がりましたが、これは再エネ電力の調達コストが下がったからではなく、燃料費の高騰により、既存の発電方法による電力調達コストが爆上がりしたため、再エネとのコスト差が縮まったことによるものです。この燃料高でも再エネ電気の調達コストの方が高い状態は「産業の血液」である電気を低コストで作るというエネルギー政策の根本を忘れているのではないかと疑問です。
 近年は、固定買取価格の低下やFIP制度の導入で再エネ調達価格が下がっているのは確かですが、認定未稼動の風力・太陽光発電(固定価格買取価格が高い時代にFIT認定されたもの)が稼動し始めて売電し始めることもあり、賦課金は高止まりすると予想されています。(一財)電力中央研究所は2030年の再エネ賦課金単価を3.5-4.1円/kWhと推計しており、これは過去最高だった2022年度の再エネ賦課金単価3.45円/kWhを上回る水準です。家計負担は、標準家庭(300kWh使用)では月額約1,050円-1,230円となります。

【今後青森県に風力発電の立地すると再エネ賦課金はどうなるのか】
今後立地する風力発電は、FITやFIP制度による売電単価相当に低下すると予想されます。そのため、2035年以降ぐらいの時間軸では、2022年度の再エネ賦課金単価3.45円/kWhよりは、多少単価が低下するかもしれません。ただ、量があまりにも増えると再エネ施設1ヶ所あたりの発電コストがいくら安くても全体では莫大なコストが必要になり、その総額を国民全世帯で割っているのが再エネ賦課金ですから、単価が低下するかどうか、確実なことはわかりません。
ただ、確実なのは2030年時点でも依然として再エネの発電コストは火力や原子力より高いと予想されているため、再エネ賦課金制度が続く限り、国民負担は発生し続けるということです。

【これからの地域のエネルギーのあり方】
 とはいえ、激変する国際環境や、人口減少に伴い円安がさらに進むであろうことを考えると、エネルギーの自給を目指していく必要はあります。その意味では再エネは有効な手段ですが、国民負担や環境破壊を伴わない形で普及させなければ本末転倒です。
 そのためには、系統連系(=電力の送配電網に接続)をしない独立型の再エネが必要と考えています。
系統連系しないことで、
①再エネ発電の不安定さを補うための「系統安定化」費用が生じずに済む
②系統連系しないので、再エネ賦課金という形の国民負担を増やさない
③自家消費前提なので、巨大な施設にならない
④需要地に近いところで発電するので自然が豊かな山岳部には発電施設が立地しない
といったメリットが生まれます。
 再エネ本来の利点は
①巨大な設備がなくても発電できる
②①により電力を消費する場所での発電も可能
③燃料価格に左右されずに発電できる
といった点です。
こうした利点を活かすことで、災害や国際情勢の変化があっても最低限の電気を地域で確保することこそ、再エネの本当のあり方と考えています。


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