やはり白紙撤回しかない❗️「みちのく風力発電事業」事業者の変更案の疑問点まとめ

【「みちのく風力発電事業」事業者の変更案の疑問点まとめ】

 3月18日(土)に、八甲田周辺での風力発電事業「みちのく風力発電事業」について、事業者のユーラスエナジーホールディングスによる説明会がありました。

  ユーラスからは、事業区域を北側と南側に分け、風車の数を最大71基、最大出力を32万kW程度とする「変更案」が示されました。

変更案での、自然環境、景観、陸奥湾の水循環、地域の文化、観光業や水産業等への影響は、当初案と比べて軽減されているわけではありません。やはり白紙撤回しかない、と言うのが私の考えです。以下に問題点を示していきたいと思います。

【変更案】

①北側事業 最大38基

説明会資料より

 県道清水川滝沢野内線周辺の、青森市と平内町の境界から、北側の尾根と、小毛無山~大毛無山~三角岳~烏帽子岳と平内町の清水川源流域をぐるりと囲んでいる。青森市側では、野内川の水源地帯にも風車設置予定区域を伸ばしている。

②南側事業 最大33基

説明会資料より

 田代平北側の、柴森山~七十森西~折紙山までが事業区域。こちらも駒込川・野内川の源流域にあたる天然生林に事業を計画している。


(1)自然環境への影響

・北側事業

①大毛無山~三角岳~烏帽子岳の清水川上流域は、「青垣の山」と呼ばれる緑豊かな水源林として、林野庁「水源の森百選」に選ばれている。この最上流部である峰部で大規模な地形改変、1基あたりコンクリートポンプ車200台分のコンクリートを投入することは、森林の水源涵養機能に重大な悪影響を及ぼす恐れが高い。また民有林と思うが所有者は風力発電計画に同意しているのか?

②この区域の森林は、治山事業で水源林としての森林整備を行っている。すると、保安林1級地となり保安林解除ができないが、作業許可で実施予定か?作業許可は本来的には一時的な使用を想定するものであり、事業終了後の原状回復が必須となるが、この規模の事業では原状回復ができるとは到底考えられず、不適当である。また、水源林として整備してきた箇所にこうした施設を設置する進め方について所有者は同意しているのか。

・南側事業

①事業区域の全域が130-160年生の天然林であり、ここに風力発電事業を実施することは水源涵養の面から悪影響があり到底容認できない。

②事業区域に至る道路「田代オンコ沢林道」は、幅員3m程度しかない狭隘な路線であり、巨大な風車部材を運搬するためには大規模な拡幅が必要である。

③「田代オンコ沢林道」の一部は国立公園区域内であり、これを拡幅工事することは、国立公園保護の観点から不適当である。

④事業区域に至る道路「嘉瀬子内(かせしない)林道」は、現在ほぼ廃道状態であり、巨大な風車部材を運搬するためにはほとんど道路新設と同じような大規模な工事が必要である。

⑤そもそも事業区域の約6割ほどは既設道路がないため、峰部に新規に大規模な道路の作設が必要であり、それに伴う環境への影響が非常に大きい。


(2)景観への影響

(事業者説明+「国立・国定公園内における 風力発電施設の審査に関する技術的ガイドライン」に沿って地理院地図の断面図機能を使って推定)

①アスパム展望台から、青森市東側の山を見渡すと、45基の風車が視認できることとなっている。市内の至るところから風車が見える風景は市民、県民は望んでいない。

①ロープウェイ山頂駅、赤倉岳、井戸岳

→山頂駅からは、66基が見える。赤倉岳からは69基も見えてしまう。しかも南側事業区から4kmしか離れていないので、大きく見える。井戸岳もおそらく同様

②大岳

南側は一部見える。北側も烏帽子岳周辺が見える。

③小岳、高田大岳、雛岳

南側、北側ともに見える。見え方は赤倉岳とほぼ同様と推定。

④不動滝、松風塾高校からの景観に大きな悪影響がある。主稜線の切断で問題。距離は1.5kmしかない。


(3)事業の進め方について

①今回の変更案をそもそも青森市ほか関係自治体に説明していないときいている。地域の理解を得ようという態度とは思えない。


(4)観光業・水産業など地場産業への影響

①青森市内、また八甲田山域からの景観への悪影響により観光業への影響は甚大であると思う。基金を作って年1000万円ほどを拠出すると言うが、到底その程度で賄えるものではない。

②北側事業区の清水川源流域は、ホタテの産卵域である陸奥湾東側の水循環の要である。ホタテは、陸奥湾東側で産卵し、幼生プランクトンが陸奥湾の流れに乗って陸奥湾東側(青森湾)へ回遊しながら大きくなると明らかになっている。この源流域で大規模な環境改変は、ホタテ養殖に甚大な影響を及ぼす恐れがある。


(5)地域の文化

①八甲田山域は、三浦敬三氏、三浦雄一郎氏を生んだ、山岳スキー文化のメッカである。その眺望や環境を破壊することは、文化の断絶につながる行為である。

②北側事業区の清水川源流域は、地域の信仰の対象となっており、風車設置を予定している峰部にも御堂などが立地している。地域の信仰を破壊する計画である。

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