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論点深掘り・新型コロナワクチン接種健康被害救済制度について

健康被害救済制度については、幾度となく青森市議会で取り上げてきました。

市議会での論点は

「ワクチンは国策で推進してきた以上、接種にかかる健康被害は必ず救済しなければならない。申請の窓口となる市の姿勢は?」

という点です。

市側は

新型コロナワクチン接種による健康被害への対応は、健康被害救済制度により国の負担により実施されるべき。市としては、接種券送付の際や、市ホームページや広報あおもりを使い副反応や救済制度の周知を図っている。

というのが基本姿勢でした。

周知方法については、再三の要望により、ワクチン接種は強制ではないということや、接種後の副反応について、文字が大きくなったり、見出しをつけていただいたり、内容も具体的になったりと、情報発信が充実してきたところです。

しかし、接種後の体調不良に苦しむ方からは「接種後の体調不良に関する専門の相談窓口設置」「申請にあたっての市独自の補助制度の創設」といった目に見える形で体制を整えることを求める切実な声が寄せられていました。

1年以上の長期にわたり副反応に苦しんでいる高校生の方の親御さんは

「一番苦しいのは、体の倦怠感やしびれなどの症状を、周囲から仮病ではないかなどとなかなか理解してもらえないことです。もし、市に副反応の救済申請に関する補助制度があれば、ワクチン接種後の副反応というものが実際に存在しているということを市民の皆さんに分かっていただくことができ、症状に対する周囲の理解につながるのではないかと期待しています」

とお話しされていました。


1 専門の相談窓口設置について


(木村淳司)今後、青森市でワクチン接種の副反応相談窓口といった、そういった専門の窓口を設置するお考えがあるか、市の見解を簡潔にお示しください。

(市側答弁)予防接種健康被害救済制度の相談等については、現在、感染症対策課が窓口となっておりまして、医療職であります保健師が現在の症状を確認し、副反応をはじめ、救済制度の概要及び申請方法などの説明を御相談者の体調に配慮しながら、丁寧に対応しているところでございます。そのため、現時点では新たに救済制度に関する相談窓口を設置することは考えてございません。

(木村淳司)青森市新型コロナワクチン接種専用コールセンターを設置している旨が記載されています。新型コロナワクチン接種専用コールセンターというと、通常は接種の仕方だとか、予約の方法、こういうものを尋ねる窓口と捉えるのが一般的です。副反応に関すること、打った後のことに関しても相談できる窓口だとは分からないおそれがあります。組織改編や新たな人員を配置しなくてもいいんです。ワクチン接種後の副反応相談窓口というような名称で既存の窓口と併設で設置し、その旨を「広報あおもり」などの広告媒体で市民に周知することを強く要望します。

令和6年3月議会一般質問でのやりとり

この結果、令和6年4月には、市のホームページ「新型コロナウイルスワクチン接種に関するお知らせ」「問合せ・相談先」の項に「(接種後の副反応の相談、健康被害救済制度の相談など)」と注記がなされました。

また、予防接種後健康被害救済制度についての記載も詳しく分かりやすくなりました。


青森市ホームページより
青森市ホームページより
青森市ホームページより

引き続き、市民の方々が、ワクチン接種の後遺症や、救済制度についてさらなる周知を求めていきます。



2 市における独自の救済制度創設について

(木村淳司)救済制度の申請から国の認定まで、長期間を要する。そこで、国の認定を待たずに、救済申請にかかった費用を、市が独自に助成する制度を新設する予定はあるか。

(市側答弁) 本市では、救済制度を申請される方に対しまして、申請に必要な書類及び申請書の書き方などを説明する際、特に体調に配慮するとともに、体調がすぐれない場合には、この同制度は申請期限がございませんので、症状が落ち着いた後でも申請できる旨をお伝えするなどして、負担軽減に努めております。加えて、本市といたしましては、新型コロナワクチン接種による健康被害への対応、これは救済制度により国の負担において実施されるべきという認識でございまして、現時点では申請手続に要した費用の一部を助成する制度を創設することは考えてございません。
 しかしながら、引き続き救済制度の周知に努めるとともに、制度の申請を検討されている方には、御本人に寄り添いながら適切に対応してまいります。

令和6年3月議会一般質問でのやりとり

 市としては、制度の新設をするつもりはないという答弁でした。

 多額のお金を救済として給付することを市に求めるものではありません。制度を新設することで被害者の方に寄り添う姿勢を示すことが重要です。
 申請には、医師の診断書など、第三者の発行する書類が必要です。ですから、助成金を得るためだけに虚偽の申請はできません。また、費用助成対象を、例えば行政書士など専門家の方に委託した場合に限れば、むやみに多数の申請が来るということはないと思います。
 地域の保健行政を担う市が──中核市ですから、青森市は保健所が市にあるわけです。市民に寄り添う姿勢を示すことに意義があると考えます。

 また、令和6年3月議会では、専門家に救済申請を委託する場合に、補助する市独自の制度を創設することを求める請願を提出しました。

新型コロナワクチン接種における予防接種健康被害救済制度申請に係る費用の補助を求める請願 
        
(請願の趣旨)  
 新型コロナワクチン接種の副反応による健康被害は、極めてまれだが、不可避的に生ずるものである。予防接種を受けた人に健康被害が生じた場合、給付が受けられる予防接種健康被害救済制度が設けられている。
 この救済制度の申請手続は医療機関での診療記録や受診証明書をそろえる必要があることなどから非常に煩雑である。体調の優れない中で申請手続をすることは非常に困難であり、行政書士など専門家の手を借りることも、費用の面からちゅうちょする状況が生じている。 
 こうした状況を改善するため、救済の申請を受け付ける市町村が相談窓口を設け、その情報を十分に市民に周知し、申請に関わる費用を補助するなど、健康被害に苦しむ市民の苦痛を物心ともに軽減するような対応が必要である。
 以上のことから、青森市において救済制度の申請に関わる費用に独自の補助制度を設けることを求めるものである。
(請願事項) 
 青森市において、新型コロナワクチン接種に関する予防接種健康被害救済制度の申請手続きを行政書士など専門家へ委託した場合、申請が受理された際に、専門家への委託に係る費用を助成する制度を創設すること。

令和6年3月議会 青森市議会議案


 この請願は、賛成10反対20で不採択となってしまいました。しかし、市側が各議員に対して個別に「制度の創設は不要と考えている」旨を説明した状況にも関わらず、10人の議員に賛成していただいたことは、制度創設の必要性が青森市議会でも徐々に理解されつつあると感じます。

一方、一部に「自分で申請できるのではないか。行政書士など専門家に委託する必要はないので補助制度は不要である」との声もありました。

 しかし、4月に大手法律事務所がワクチン接種健康被害救済制度の申請の代行をはじめると発表しました。成功報酬は得られた補償金の14.6%とのことです。大手の法律事務所が、大々的にそのようなサービスを開始するということは、ワクチン接種後の健康被害に悩み、救済制度を申請したいが、手続きが煩雑で困っているので、専門家の手を借りたいという隠れたニーズがあるということに他なりません。

令和6年6月議会一般質問では、これを受けて下記のように質問しました。

(木村淳司)専門家に救済制度申請を依頼した際の補助制度を創設をする考えがあるか、改めて市の見解をお示しください。

(市側答弁)本市における新型コロナワクチン接種に係る健康被害救済制度の相談等については、保健部感染症対策課が窓口となっており、医療職である保健師が現在の症状を確認し、制度の概要及び申請方法などの説明を、相談者の体調に配慮しながら行っている。相談者が申請を希望される場合は、必要書類や申請書類の書き方など、丁寧に説明するとともに、令和6年3月末までに行われた新型コロナワクチン接種の特例臨時接種における同制度については、申請期限がないこともお伝えするなど申請される方の心情と体調に配慮しながら手続きが取れるよう努めている。このようなことから、本市としては、申請について専門家への委託を必ずしも要するものではないと認識している。
 また、新型コロナワクチン接種による健康被害への対応については、救済制度に基づく、国の負担において実施されるべきとの認識であり、市独自の補助制度を創設することは考えていないところである。
 今後とも、市のホームページで救済制度の周知に努めるとともに、申請を検討している方がいる場合には、引き続き、適切に対応してまいる。

(木村淳司)相談を受けた場合「必要書類や申請書類の書き方など、丁寧に説明する、令和6年3月までに行われた接種については、申請期限がないこともお伝えする」そうした努力をしているので、専門家へ委託しなくても申請できるという趣旨のご答弁と理解しました。
 これまで、申請に至らなかった方が、申請できるように、ご答弁いただいた市の姿勢を、聞かれたら教えるのではなく、市からしっかり広報していただくことが重要と考えます。

令和6年6月議会一般質問

残念ながら、独自の制度創設には至りませんでした。しかし、市側からどのように救済申請をサポートするのか、非常に具体的な答弁を引き出すに至りました。


3 他自治体の動向

 他の自治体では、副反応が生じて予防接種健康被害救済の申請を行った場合に、その申請にかかった費用の一部を、実質的に自治体が負担するような措置を講じているところも多く出てきています。
 まず、愛知県では、新型コロナワクチン接種後の副反応などの治療に要した自己負担分の2分の1に相当する額を、大阪府泉大津市では、国への健康被害救済制度申請のために要した医療費や文書費用などの4分の3について、千葉県市川市では3万5000円の見舞金を、いずれも市町村が申請を受け付けた時点で、国の認定を待たずに、独自に給付する措置を実施しています。

4 終わりに

 国策として強力に推進してきたワクチン、そのワクチンが原因で、体調不良や、重篤な後遺症、ましてや亡くなってしまうようなことがあれば、被害者やそのご家族からすると、行政に対して責任を問いたいという気持ちになるのは当然のことです。

 国の救済申請での認定数は増え続けています。申請の窓口となる市でも早期に、独自の申請にあたっての補助制度の創設など目に見える形での体制が整備されるよう、今後も活動してまいります。

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