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KG/Projectのあらまし

プロジェクトの発足 2019年~
KG/Projectは2019年7月に発足した。
このプロジェクトが目指すのは、ユーザーの中にある『クーロンズ・ゲート』(ゲート)のリブートである。
再起動、ないしは再評価──ともあれ、「ゲート」はSMEからリリース直後、「中の人」が誰もいなくなり、販売権利もSMEから他社へ売却、部署も解体され、長らく管理者不在の「元公式サイト」だけが粛々と動いている状態に陥っていた。
「ゲート」のように属人性の高いコンテンツは、当事者が散逸すると二度と同じものは作れなくなる。
結果として「ゲート」は、25年にわたりユーザーの中で静かに発酵を続けることになる。十人十色に染まるユーザー内コンテンツには安易に手を付けることはできない。

クラウドファンディングの実施 2020年~
「ゲート」のリブートのために何をすればいいのか──
まずはクラウドファンディングで「支援者」を募ろうと考えた。ただこのときにリブート云々という話は冗長になるということで「続編新作」と銘打った。
しかしながら、一義的な目的としては支援者に「半分中の人」になってもらうことだった。事業的には「リゾーム」のプリプロダクション版(PP版、評価版)の開発援助だ。
こうした事情から、プロジェクトテーマには「共創」を掲げた。そこには啓蒙的なニュアンスを含んでいた。

元々、「リゾーム」は「ゲート」の伏線回収と設定強化を目指すコンテンツとして位置づけていたため、「半分中の人」向けに「シナリオ全編(第一項)」と「設定資料LITE版」をリターンに含むプランも用意した。
クラファン開始時点で、全編シナリオがほぼ完成していたし、設定の基礎固めもできていたこともあるが、普通、ゲームリリース前にシナリオ全編を開示してしまうことなど絶対にありえない。
「リゾーム」はいわば「ゲート」のサブテキスト的な位置づけなので、紙ベースのシナリオが「動く」ものになっていればいいという考えだった。
シナリオや設定資料を配布、それにプレイ動画の共有から構成される「オンラインセッション」も開催した。
こうしたことからも「リゾーム」が通常のゲームとは異なるスタンスにあることが理解されると思う。

第1の仕様変更 2021年8月
評価版の制作は2段階あって、先ずUnity3Dでのベースダンジョン制作、次にUnity3D上でのゲームスクリプト開発──これらはいずれも外部委託で進めていた。
なお、内製業務としては、2021年上期はクラウドファンディングのリターンアイテムの作成に忙殺されていた。

2021年7月、ベースダンジョンが完成して、ひと月ほどかけて慎重に精査した結果、コンシューマー機への移植は想定を超えて大掛かりになることが判明した。
というのも、「リゾーム」を構成する九龍城ダンジョンの殆どを占めるアセットがコンシューマー機に対応していない構造だったためだ。プロジェクトの基礎であった「アセット利用による効率化」が裏目に出た格好になる。
単に3D技術でどうにかするという話ではなく、見た目のクオリティにかかわる課題が多く、トライアンドエラーを繰り返し、いつ終わるのかさえわからない作業工数を導出せざるを得なかった。
結果的に、2021年8月時点でコンシューマー対応を見送ることになる。
ちなみに、構造精査に先立ち会話スクリプトだけを仮実装し、「プレイ動画」としてオンラインセッション向けに公開した。

第2の仕様変更 2022年3月
コンシューマー機は無理でも、せめてPCで「3Dプレイ」を実現することを念頭に、その後もフラグ管理などゲームスクリプトの発注は続けた。
2021年10月、ようやく3D版開発ベースとなる評価版が完成、以降は内製でシナリオ実装、評価版プレイを繰り返した。
しかし、結果的に2022年3月、3Dプレイでの提供を諦めることになった。
なぜ3Dを諦めたのか──それはたったひと言、「つまらない」からである。
2019年の企画作成時点で「絶対に面白い」と確信していた「3Dクーロン」に対して「つまらない」と評定を下すには、半年という時間を要した。

つまらなさの理由
「リゾーム」はシナリオと世界観を重視したゲームだ。シナリオ文字数25万字は「ゲート」(11万字)の倍以上である。「ゲート」の伏線回収と設定強化を標榜する以上、これくらいのボリュームは必要だ。
その膨大なシナリオは、ゲームでは会話イベントとして実装される。3D九龍城内を会話イベントを求めて歩き回る──3D版のこのプレイスタイルがことごとくつまらないのだ。
最初こそ、周囲の造作に目を奪われるが、すぐに慣れる。それよりも次の会話イベントの取得座標ばかりが気になる。そして会話イベントの場所へ向かって歩くことをひたすら繰り返す──これが億劫というか退屈だ。やはり3Dゲームには空間を攻略するアクション性が不可欠だ。

浮遊するプレイヤー
例えば、目的地はわかっているがフェンスで仕切られて通行できない、ならばビールケースを積み上げてフェンスを乗り越えて到達する。あるいはエレベーターを呼んでビル上階の通路を経由して目的地へ向かう──主観視点でもこうした簡単なアクションは実装できる。
ただ、前作「ゲート」のゲーム性を顧慮すると、ビールケースを積んでフェンスを乗り越える行為自体にかなりの違和感を覚える。
「ゲート」の本質は、異邦人が、まるで思念体のごとく空間を「浮遊」しているというものだ。歩いているという実感さえ希薄だ。主体的に、フィジカルに、空間=九龍城に働きかけをすることなく、目的の場に居合わせることでシナリオが進行していく──それが「ゲート」のゲーム性だ。主体(プレイヤー)が陰界という空間の中に溶け出していくような感覚である。
アクション性を加味することにより「ゲート」らしさが損なわれるとなれば「クーロン」という共通項では括れなくなってしまう。これはもう全くの別物になってしまう。

ムービーノベルのゲーム性
ネット上には様々なUnityスクリプトが上がっている。試験的に会話イベントを終えたら、すぐ次の会話イベント座標へワープできるスクリプトを入手して実装してみた。
結果的に、これはビジュアルノベルではないかと考え、ムービーを組み込めるビジュアルノベルツールである「ティラノビルダー」に行き着いた。
移動や演出シーンにムービー、会話シーンに静止画、これらの組み合わせで「動くシナリオ」&「動く設定資料」という「リゾーム」ならではのゲーム性が明確になった。「ゲート」の伏線回収と設定強化という所期の目的はそのまま担保される。

2022年4月、ムービーノベル化の下準備をはじめ、第1巻の実装対象シナリオをムービーノベル向けに組み直すなどして、5月頃から実装作業を始めた。
だが、まだ内製で制作するダンジョンがいくつか残っていたため、シナリオ整理とノベル実装、ダンジョン制作、それにグラフィック制作など複数のタスクを内製で行うことになった。

冒頭画像:
3Dダンジョン内で既定のルート(線路)上を強制移動する初期のマップ案(2019年8月)。思えばこれも3Dによる擬似的な「ムービー移動」表現だった。

KG/Projectの経緯
2019.07:KG/Project発足──「リゾーム」の企画書作成
2019.12:「ゲート」サントラアナログ盤発売を記念しゲリラライブ開催
2020.01: 1月から10ヶ月ほど要してシナリオ全編(第一項)を執筆
2020.10:「共創」をテーマにクラウドファンディングを実施
2021.02: クラファンリターンアイテムの作成と設定資料の制作開始
2021.03: 蓜島邦明氏プライベートスタジをライブ配信
2021.09:メルマガを残しクラファンリターンアイテムを終了
2021.10: 評価版が完成し実装と評価プレイを重ねる
2022.03: ムービーノベルへとシステム変更
2022.10:「ゲート」リリース25周年記念として超級路人祭を開催
2022.11:「クーロンフォトコンテスト」作品募集(パイロット版掲出用)
2022.12: 超級路人祭補講オンラインセミナー(第1回)開催
2023.02: 超級路人祭補講オンラインセミナー(第2回)開催(予定)
2023.02: BOOTHにて「リゾーム」パイロット版をリリース(予定)

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