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vol.4 海外のお客様を集客する前に知っておくべきこと

こんにちは。2020東京オリンピックを目前にし、街中で見かける外国人観光客が増加していますね。外国人観光客が増えるということは、もちろん国内の飲食店で食事をする外国人も増加する、ということです。

 しかし、読者の皆様は現在の日本への観光客事情を知っていますか?「外国人観光客が日本で一番楽しみにしていること」はもちろん、「観光地としての日本の現状」などは飲食店経営者の皆様は念頭に置いておいた方が良いでしょう。

よって今回vol.4では、外国人観光客を集客する前に知っておくべきことを簡単に説明させていただきます。

◆増加する海外からのお客様の1番の楽しみは「日本食」

2016年4月~6月期の報告書として観光庁から出された、海外からのお客様が日本に来る前に1番期待していたことは、複数回答でも単一回答でも、「日本食を食べること」が1位に輝いています。

(出典:観光庁「訪日外国人の消費動向 訪日外国人消費動向調査結果及び分析」http://www.mlit.go.jp/common/001139309.pdf)


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「え!? あれだけ『爆買い』って言われてるんだし、買い物なんじゃないの?」
「てっきり温泉とか観光かと思っていた……」
 と驚かれた方も多いかもしれません。
 確かに、国や地域によって、楽しみにされていることは違います。
 アジアの方々の多くは買い物を1番の楽しみに挙げられていますが、欧米やヨーロッパ等を含めた全体では、「日本食を食べること」が1位に選ばれています。

 これは、飲食店関係者の皆さんにとって、とても喜ばしい結果なのではないでしょうか?

 農林水産省の調査では、2015年7月の時点で世界各国にある「日本食」とされる飲食店が、約8万8650店に上ったとの報告も出ています。この数は、前回調査の2013年1月時点に比べて1.6倍で、健康志向を背景にした日本食ブームが、店舗数の大幅な伸びにつながったとみられています。

 つまり、世界では日本食が大人気で、「ぜひ本場の日本食を食べたい!」と願っている方々が多く来日されていることになります。
 では、最近ではどれくらいの方々が日本に訪れているのでしょうか?

◆2020年・東京オリンピックまでに海外からのお客様は2倍へ!?


 まずはこちらのグラフをご覧下さい。

(出典:株式会社華ひらく)

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こちらのグラフが表しているもの……それは、海外から日本に訪れた方々の数です。
 2006年は733万人でしたが、それから10年後の2016年は、2403万9000人でした。
 10年で3倍以上増えたことになります。
 急増ですね。いや、激増していますね。

 これだけ激増した主な理由は、
・クルーズ船の寄港増加
・航空路線の拡大
・燃油サーチャージの値下がりによる航空運賃の低下
・継続的な訪日旅行プロモーションによる訪日旅行需要の拡大
・円安による割安感の定着
・ビザの大幅緩和
・消費税免税制度の拡充
 等と言われています。

 「日本に来て下さい!」と訪日プロモーションに力を入れていた日本政府は、「2020年までに訪日外国人数を2000万人に」と目標を掲げていました。
 しかし、2016年に既に達成することができました。
 そこで急遽、2020年までに「2000万人」から「4000万人」に目標を変更しました。

もしこの目標が達成できれば、単純に考えると、今の倍、街に海外からのお客様が増えることになります。

 東京オリンピック・パラリンピックに向けて、街がどれだけ海外からのお客様で溢れ返るか、楽しみですね!

 しかし待って下さい。
 日本への来客数が増える理由は、東京オリンピック・パラリンピックだけではないんですよ。

◆日本はまだ「観光後進国」


 ソロモンブラザーズやゴールドマンサックスの銀行アナリストとしてご活躍され、「伝説のイギリス人アナリスト」とも呼ばれているデービッド・アトキンソン氏は、著書『新・観光立国論』(東洋経済新報社)の中で、このようにおっしゃっています。

 実は日本という国は、世界でも数少ない『観光大国』になりえる国の1つなのです。
 そう聞くと、日本はすでに「観光大国」になっている、と胸を張る方もいるかもしれません。それはマスコミが、京都などに多くの外国人観光客が訪れており、過去最高の1300万人※超になったなどと報じているからでしょうが、残念ながらそれは大きな勘違いです。日本ほどの国で外国人観光客が1300万人しかこないというのは、驚くほど少ない数と言わざるをえません。世界を見渡せばこの2倍、3倍は当たり前です。日本は“観光大国」とはほど遠い、「観光後進国」なのです。
※1300万人とは2014年の外国人観光客数です。

 つまり、
 1300万人くらいで喜んでるんじゃねぇ!
 日本の潜在能力はこんなもんじゃないんだ!
 ということです。

では、日本の潜在能力とはなんでしょうか?
 アトキンソン氏によると、日本は「観光大国」に欠かせない4つの条件(気候・自然・文化・食事)を全て満たしているそうです。
「気候」とは暑すぎず寒すぎず、湿度も高すぎず低すぎず、雨季も長くなくて、過ごしやすい気候であること。
「自然」とは山や海等の雄大な自然があり、ウィンタースポーツや登山、マリンスポーツ等、それぞれの場所で楽しめるレジャー施設も整っていることを指しています。
「文化」には法隆寺や金閣寺などの歴史的遺物・建造物から、ディズニーランドやユニバーサルスタジオといったアミューズメントやファッション等、最新のエンターテイメントまで含まれています。
 そして「食事」は日本料理やフランス料理、中華料理等、国名に「料理」をつけたものが認知されている国のことです。


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(出典:国連世界観光機関(UNWTO))

では、他の国の「4つの条件事情」と比較するために、外国人訪問者数ランキング(外国人が多く訪れている国ランキング)上位国を見てみましょう。
 世界から最も多くの観光客が訪れる国・フランスや、3位のスペインは気候・自然・文化・食事の4つ全てを満たしていると言われています。
 しかし、2位のアメリカは「料理」の項目で劣るため、該当する条件は3つに留まっています。
 4位の中国も4つ全てを満たしている様に見えますが、近年の空気汚染で「自然」が足を引っ張っていると分析されています。
 アトキンソン氏の出身国・イギリス(8位)に至っては、日本の約3倍の3260万人(2014年時点)の外国人客が訪れていますが、「気候」と「食事」で分が悪いため、あてはまる項目は「自然」と「文化」の2つのみです。

このように、上位国でも4つの条件を満たしているわけではありません。
 それでもうまく外国人客の誘致に成功し、「観光立国」としての地位を確立しています。

 一方で日本は、全てを満たしているにも関わらず、過去最高を記録した2016年ですら2400万人にしか来てもらっていません。観光収入も平均より大幅に少ないので、「観光後進国」というわけなのです(2016年の外国人訪問者数ランキングは2017年1月時点でまだ発表されていません)。

 しかし、日本が本気で観光大国を目指し、今ある問題点を改善していけば、1位のフランスと同等の年間約8400万人(!?)が訪れるようになると、アトキンソン氏は述べています。
もしそうなった場合、単純計算で今の3倍以上の海外からのお客様が街に溢れ、飲食店で食事をすることになります。
 お客様の内、半分は海外の方なんてことも、近い将来あり得るかもしれません。

(『新・観光立国論』は外国人集客に取り組む方にとってとても興味深く、勉強になる本です。ぜひご一読を!)

◆あなたの店も先手を打つべし!


 私が本章でお伝えしたいのは、こちらの2点です。

1. 海外からのお客様は、日本で食事をすることを1番楽しみにしている
2. 日本には今後、現状の2倍、3倍の外国人客が訪れる可能性が十分にある

「いつやるか? 今でしょ!」ではありませんが、いずれ外国人集客に取り組むのであれば、他の企業より1足先に始めて、先手を打つことが勝利への第1歩です。

今後、今以上に訪れる海外からのお客様にとって、皆さんのお店が見つけやすく、入りやすく、居心地のいいお店になるよう、今から少しずつ、お店を改善していきませんか?

◆海外からのお客様を迎える時に大切な心構えとは


 次章では「海外からのお客様に聞いた日本の飲食店への要望トップ5」をご紹介しますが、その前にとても大切なことをお伝えします。
 これからどんな取り組みを始めるにせよ、忘れないでいただきたい海外からのお客様を歓迎する上で1番大切なこと。
 それは、

「もし自分が海外に旅行に行ったら」

と、自分の身に置き換えて考えることです。
 私たちが海外旅行に行って嬉しいことや困ることと、海外の方が日本に来て嬉しいこと・困ることに、大きな違いはありません。
 例えば、皆さんがスペインに旅行に行ったとします(スペイン語は話せない・読めないことが前提です)。
 ガイドブックに掲載されていたスペイン料理屋さんに入って、店員さんが笑顔でお迎えしてくれたら嬉しいですよね?
 日本語のメニューが置いてあれば、非常に助かりますよね?

仮にメニューは全てスペイン語だとしても、メニューに写真が載っていれば注文しやすいですよね?
 そして、店員さんが「コンニチハ」等、カタコトの日本語でも話しかけてコミュニケーションを取ろうとしてくれたら、「また来たい!」って思いますよね?
 これは日本を訪れる海外の方も同じです。

海外の方向けに英語のメニューをご用意されているお店はたくさんありますが、中には完全に日本人目線になっていて、海外のお客様にとってはわかりにくいメニューになっている場合もあります。
 また、邪険に扱うつもりではないと思うのですが、「英語が話せない」という理由からか、日本人のお客様と比べて、海外からのお客様を避けるような態度を取ってしまっているスタッフがいる(少なくとも、海外の方にはそのように映ってしまっている)という話も耳にします。

 されて嬉しいこと・悲しいことは万国共通です。
 もし自分が海外に行ったら、何をしてもらったら嬉しいか?
 逆に、どんなサービスなら悲しいか?
 を常に考えて行動することができれば、皆さんのお店は間違いなく、海外のお客様から人気の高い飲食店になりますよ。

(内木美樹『英語に強い飲食店になる。』より)

 いかがでしたでしょうか?日本の観光事情を把握した上で、海外の方が日本に求めていることを知ることで、外国人観光客に対する意識が変わってきませんか?また。「自分が海外に行ったら?」と、相手の立場になって店側にお願いしたいことや求めることを考え、実行することで多くの外国人が安心して飲食店で日本食を楽しむことができるようになるのではないでしょうか?

 この記事を読んで、外国人のお客様を増やせば、売り上げアップは間違いなしです!


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