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vol.5 海外のお客様に聞いた「日本の飲食店への要望トップ5」

 こんにちは。前回のvol.4では飲食店に外国人観光客を集客する前に私たちが知っておくべきことを紹介しました。観光地としての日本の現状や、私たちが外国人観光客を迎える上で大切な心構えはおわかりいただけたでしょうか?
 では今回vol.5では海外からのお客様を日本の飲食店に求めることをランキング形式に紹介し、そのご意見の活かし方をお伝えします。

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※こちらの結果は、「株式会社華ひらく」が2015年11月~12月にかけて、都内4か所で500名の海外の方(訪日・在留・定住を含む)を対象に行った聞き取り調査を元に作成しました。

◆第1位 メニューに英語・写真・食材情報を入れてほしい

2位を大きく引き離し、ダントツで多かったのがこのメニューに関する要望です。
 中でも1番「あると嬉しい」と答えていたのが英語のメニューでしたが、「写真さえあれば問題ない」とおっしゃっていた方も多くいらっしゃいました。
 こちらは、前章の最後にお伝えしたように、「もし自分が海外に行ったら」を考えていただければ納得の回答なのではと思います。

海外から日本を訪れる方の中で、日本語が読める・話せるという方はごくわずかです。
 写真も英語表記もないメニューでは、
「日本語が読めない人は来店しなくて結構!」
 と言われているような気にすらなるかもしれません。
 しかし、英語の記載や料理の写真があるだけで、彼らは1番楽しみにしていた本場の日本料理を頼み、食することができるのです。

メニューに英語で食材情報を入れよう

 聞き取り調査を行った上で、数としてはそれほど多くなかったものの、英語のメニューや写真以上に強い要望として感じたのは、「英語での食材の情報」です。
 これは、食物アレルギーやベジタリアン、宗教の関係で口にできない食材をお持ちの方から、切実なご要望としていただきました。
 日本では食物アレルギーをお持ちの方は少数派とされていますが、World Allergy Organizationの資料によりますと、世界には2億2000万人~2億5000万人の方が何らかの食物アレルギーを持っているとのこと。
 世界の人口が約73億人なので、単純計算で約30人に1人に該当する人数になります。
 食物アレルギーは特にお子様に多いとされていますので、親としては子供が口にする料理に何が入っているのかをきっちりと把握したいですよね。
 同じように、ベジタリアンやイスラム教徒の方々も、日本では少数派ですが世界にはとても多くいらっしゃいます。

「食」に1番求められるものは「安全」です。
 今はまだ、日本語のメニューにも食材情報を入れているお店は少ない様に見受けられますが、これからの時代、お客様は「日本人」だけではなく、「世界中の方々」です。
 多くの方に安心して皆さんのお料理を食べてもらえるように、お客様のニーズに応えたメニューを作っていきませんか?


◆第2位 従業員の英会話力を上げてほしい

まず日本と欧米には接客システムに大きな違いがあると考えています。

1. チップ制度
2. テーブル担当制度

サービスに感謝の意をこめる」チップ制度

 ご存知の方も多いかと思いますが、特に欧米ではフードサーバーに「あなたのサービス、よかったわよ。どうもありがとう」という感謝の意を込めてチップを払います。
 金額はお客様によって様々ですが、基本的にはチェックの合計金額の15~20%くらいをお支払いするのが目安と言われています。
 フードサーバーがお店からもらえるお給料は少ないので、このチップで生計を立てているようなものです。


お客様の要望を聞き取る」テーブル担当制度

 各フードサーバーには担当テーブルがあり、基本的に自分の担当テーブル以外のお客様のオーダーは取ってはいけません。このような担当制になっているのは、「自分のチップは自分で受け取る」ということの他に、「フードサーバーとしての仕事の責任をもって果たすため」だと考えています。
 欧米では、どのお客様が何をご注文されたかを担当フードサーバーがきちんと把握することが求められています。
 なぜなら、多くのお客様は「自分流の食べ方」があるからです。

 日本では「メニューに記載されている料理を頼む」のが当たり前ですので、それ以外の物を注文しようとしても、お店側からお断りされるケースも多々あります。しかし欧米では、お客様が料理をカスタマイズするのはよくあることなのです。

 また、「お客様との何気ない会話」もフードサーバーに求められる仕事として含まれています。
「お客様と店員がフランクに話す」と聞くと、日本では居酒屋で酔っ払っているサラリーマンが若い店員の女の子に話しかける様なイメージですが、海外では担当テーブルのお客様と雑談するのはよくあることです。

 フードサーバーと会話をしながら注文する習慣が彼らには根付いているため、日本に来られる方の中には
「(英語が伝わるのなら)注文の際に要望を出したい」
「(英語が伝わるのなら)店員さんともっと話したい」
 と望んでいる方も多い様です。
 実際に、お答えいただいた聞き取り調査の中で、
「サービス自体はすごくいいと思うけど、もっとフレンドリーに、おすすめなども知りたかった」
「『この食材をこれに変えて』という要望を受け入れてほしかった」
「食べ方を教えてほしかった」
 という回答がありました。

 前述しましたが、中には食物アレルギーの様に「絶対に食べてはいけない食材」がある方もいらっしゃいます。
 仮に、私の子供が深刻な食物アレルギーを持っていて、旅行先のフードサーバーと会話が通じなかったら、注文する時にとても不安になると思います。
 海外の文化や習慣を理解し、受け入れ、お客様に安心をご提供する為にも、ある程度の会話力は身に着けておきたいですね。

◆第3位 店頭にも英語のメニューや写真を置いてほしい

 聞き取り調査では主に
「日本の飲食店への改善案や不満、要望はありますか?」
 という質問を投げかけました。
 そして、同時に
「その飲食店はどうやって見つけて、どういう理由で入店されたのですか?」
 とも聞いてみました。
 すると、意外な答えが返ってきました。

「歩いていて目にとまったお店」に入る

 2位の「インターネット」や3位の「家族や友人からの紹介」との差を大きく引き離し、ダントツで1位だったのが「歩いていて目にとまったから」でした。
 個人的な予想としてはもう少しガイドブックや事前にインターネットで調べていらっしゃる方が多いのかなと思っていたのですが、どうやら海外からのお客様は行き当たりばったり(その時の気持ちで決める!)という方が多い様です。

店頭のメニューや値段で判断

「数多く飲食店がある中で、どうしてそのお店に入店したのですか?」
と伺ったところ、こちらもダントツで1位だったのが「お店の前にあるメニューや値段を見てよさそうだったから」でした。
 店内に入る前に、お料理の内容やお値段、お店の雰囲気を見て、「よさそうだ」と判断してから入店する、という行動は、私たちが海外旅行に行っても同じですよね。
 そして面白いことに、お店の決め方の2位が、「お客(特に地元の人)がいっぱい入っていたから」でした。
 第1章でもお伝えしましたが、世界では空前の日本食ブームです。
「せっかく日本に来たんだから、よりおいしいお店(=人が多く入っているお店)で食べたい」
 という心理の表れなのでしょう。

上記の結果をまとめますと、海外からのお客様は、どこで食べるかを決める際、
 インターネットやガイドブックからの情報よりも、近くにあるお店の中から、メニューや料金を見てよさそうな所を選び、入店するという傾向が非常に強いことがわかりました。
 ですので、海外からのお客様を集客したいお店には、店頭にメニュー(料理のお写真と料金)を設置することを強くおすすめします。

◆第4位 店内は全て禁煙にしてほしい


 皆さんは、日本以外の先進国では、飲食店内での喫煙が法で禁止されていることを、ご存知でしょうか?
 まずは、こちらの「主要国の受動喫煙防止法の施行状況(2012年時点)」をご覧下さい。
(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット 「進んでいる世界の受動喫煙対策」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-05-002.html)

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注目していただきたいのは、1番右の「レストラン」の項目です。
 上記16か国中、飲食店での受動喫煙防止法(他人のたばこの煙を吸わされることを防ぐ法律)が実施されていないのは日本だけです。
 つまり、日本以外の国ではレストランでの喫煙は法律で一部・もしくは完全に禁止されています。
 よって、先進国である日本の飲食店で、喫煙が許されていることに驚く海外の声は少なくありません。
 実際に、聞き取り調査では
「飲食店でたばこを吸えるなんてあり得ない!!」
 と語尾を強めて主張される方も複数いらっしゃいました。
 それくらい、世界では飲食店での喫煙はNGとされていますので、
「日本はたばこ対策後進国」
「喫煙者にとっては天国のような国」
 としばしば揶揄されている程です。
 そのような方が入店されてから驚くことがないよう、
「All smoking seats」(全席喫煙)
「Smoking/Non-smoking seats」(喫煙席と禁煙席をご用意しております)
「All non-smoking seats」(全席禁煙)
 という看板やステッカーをお店の外に出してはいかがでしょうか?
 このように先回りのサービスをご提供することで、
「たばこの煙がひどかった……」とがっかりされたり、誤解やトラブルは防げるはずですから。

※2016年10月12日、厚生労働省は2020年の東京五輪・パラリンピックに向けた受動喫煙防止の規制強化案を明らかにしました。飲食店は喫煙室以外の禁煙を義務化する方向で、早ければ2017年の通常国会に改正案か新法案を提出する方針です。

◆第5位 無料Wi-Fiを設置してほしい

 私の個人的な経験談で恐縮なのですが、4年前にスペインとスイスに旅行した時のことです。
 初めて訪れる異国の地でしたので、地理がちんぷんかんぷんでした。
 バスや電車で移動するにも何線のどこ行きに乗り、どこで降りればいいのかわからない。
 道を歩いていても、目的地を見失うことも多くありました。
 そんな時、すぐに助けを求める相手はGoogle大先生です。
 日本から持ってきたスマートフォンを無料Wi-Fiに接続し、現在位置と行きたい場所を検索すれば、どういうルートなのか、いくらかかるのかがすぐにわかります。
 知らない土地を訪れる際、インターネットは欠かせないとつくづく実感しました。

 もしかしたら皆さんの中には、
「飲食店は食事をする場所なんだから、別にインターネットに繋げなくてもいいじゃないか」
「無料Wi-Fiなんて設置したら、長居されて困る」
 とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
 でも、そこは「もし自分が海外を旅行したら」と考えてみて下さい。
 無料Wi-Fiがとってもありがたい2つの理由が見えてきますよ。

1. 飲食店は休憩場所でもある

 飲食店のメインはお食事を楽しむことですが、お料理を待っている間や食後は、
「次はどこに行こうか?」
「○○へはどうやって行くんだっけ?」
 等、次の旅のプランを話し合う絶好の場です。
 皆さんも海外に旅行中は飲食店に入って休憩を取りながら、次の予定についておしゃべりを楽しみますよね?
 それは彼らも同じです。
 そんな時に、入った飲食店が圏外でインターネットに接続できなかったら……普段からスマートフォン等でインターネットをお使いの皆さんであれば、それがどんなに不便なことであるか、おわかりですよね?

2. その場でSNSなどにクチコミを投稿してもらえる

 そして、Wi-Fiを設置することで、その場でブログやSNS、クチコミサイトに写真をアップし、評判を広げてもらいやすいという、お店側にとっては非常に嬉しいメリットがあります。
 日本でも大流行しているSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)。
 これらを使い、
「私は今、○○(場所)でこんなことをしているよ!」
 と近況を報告するのが、毎日の日課となっている方も多いでしょう。
 ましてやそれが、海外旅行先でとってもおいしいご飯を食べているタイミングなら………、
「日本の○○(店名)のお寿司、本当においしい!!」
「△△(店名)のラーメンはクセになる! 間違いなく東京でベスト!!」
 等、写真付でアップしたいと思うことでしょう。
 このように個人のブログやFacebook、Twitter、インスタグラムに投稿してもらうだけでも、
「おいしそう! 私も日本に行ったら絶対にこのお店に行こう!」
 と、その書き込みを見た別の人への宣伝となります。
 海外のメディアに取り上げられる可能性だって広がります。

上位には上がらなかったが多かった意見

「正しい英語を使ってほしい」
「椅子を高くしてほしい」
「ベジタリアン向けの料理がほしい」
「ハラール対応してほしい」
「券売機にも英語表記を」
「(安いお店でも)使えるクレジットカードの種類を増やしてほしい」

少数派だが海外の方ならではの意見

「食べ終える前にチェックを置かれた。これ以上頼むなってこと?」
「明らかに避けられている(中東系の方)」
「もっとフレンドリーに、おすすめなども教えてほしい」
「こちらが日本語で話しているのに、英語で返ってくるのはなぜ?」
「『この食材をこれに変えて』という要望を受け入れてほしい」
「英語のメニューに全ての料理を掲載してほしい」(日本語のメニューと英語のメニューで掲載している内容が違う)
「小さい日本食店は、外からでは何を提供しているお店なのかがわからない」
「タイでは、先に注文してから座る。日本では案内を待つべきなのか、先に座るべきかわからなかった」
「ご当地の文化や食事を紹介してくれると嬉しい」
「せめてローマ字で書いてあるといい。(Fried pork ではなく、tonkatsuと書いてくれるだけでも)」
「iPadなどで注文できたら、オーダーミスがなくなるからいい」
「サイズがわからない」
「冷たいものか温かいものかがわからない」
「外に喫煙・禁煙に関する看板があるといい」
「子供の入店を断られた/追いやられた」

(内木美樹『英語に強い飲食店になる。』より)一部引用

 いかがでしたでしょうか?ランキングを見て「なるほど!」と思うものはございましたか?海外からのお客様に、日本の飲食店での常識が伝わると思ってはいけません。日本の常識は外国人の方にとってはチンプンカンプンかもしれないし、海外には海外の常識があります。自分の想像が正しいと決めつけず、海外からのお客様が本当に求めている事柄を理解して、お客様が「みんなに教えたい!」「また来たい!」と思ってくださるような飲食店を目指しましょう!

次回は実際に海外からのお客様に伝わるメニューの作り方を紹介します!



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