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イタリアの朝、コーヒーと、ビスケットと。

 イタリア・ナポリからシチリア島まで、寝台夜行列車で移動した時のことでした。ゴトゴトと、古い車両の揺れが心地よくてぐっすり眠っていたのですが、相部屋していたご夫婦がごそごそと起きて、ぺちゃくちゃとおしゃべりをしている物音で目を覚ましました。カーテンからは明かりが漏れています。

 そういえばおなかが空いた、朝ごはんにしよう。ルームサービスでもらったジュースとお菓子でも食べようかとしていたら、奥さんが大きな袋を開けて、私に差し出しました。中には大きなビスケットがたくさん。「あげるわよ」と、ジェスチャーをしてくれたので、グラッツェと、カタコトイタリア語で言いながらひとつ取りました。「え、一個だけ?もっと取りなさい」と奥さんは言いながら、片手にいっぱいビスケットをつかんで、私にくれました。
 ザクっとした食感のビスケットは、小麦ふすまの味がしました。シリアルビスケットかなぁ、こういうの、オーストラリアでも食べたっけ、穀物の味がおいしい。奥さんに「This is ぶぉーの」と、これまたカタコトで伝えたら「あら、それはよかったわねぇ、もっと食べなさい」と言ってビスケットひとつかみと、バナナを渡してくれました。「朝に食べると良いのよ」旦那さんもうんうんと相槌を打っていました。

(外国に行くと、言葉はわからなくても伝わってくるのが不思議だなぁと思います。思い込みや思い違いはあるかもしれませんが、相手の反応を見ていると、解釈はあながち間違っていないんだろうなぁと、勝手ながら思ったりします。)

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 このイタリア旅は、コロナウィルスの感染の猛威がイタリア北部から南下し始めていた2020年2月中ばのことでした。当時は、アジアから生まれたウィルスであるから、アジア人には気をつけろというざっくりとした風評が世界中に広がっていた時期でした。そんな中で、見知らぬアジア系の旅人に対して、こんなに親切にしてくれる人がイタリアには居るんだと、心底感動したものでした。
 日本語に「旅は道連れ世は情け」という言葉がありますが、同じような意味の言葉とスピリットがイタリアにもあるのかもしれないなぁ。

 奥さんと旦那さんが荷物をまとめ始めました。私の目的地よりも手前の駅で降りるようです。私は急いでインターネットで言葉を調べて、ふたりに伝えました。"Grazie per la tua gentilezza. Buona giornata." 親切にしてくれてありがとう、よい1日を、と伝えたかった。彼らは笑顔で手を振りながら「チャオ」と言って部屋をあとにしました。きっと、私の気持ち、伝わったよね。

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 イタリアの人たちは、朝ごはんにコーヒーとビスケットや菓子パンなどの甘いもので済ますことが多いそうです。宿泊施設での朝ごはんコーナーにも、お砂糖をまぶしたパンやお菓子、ジャム、甘いスプレッド、フルーツ入りのヨーグルトなどがたっくさん置かれていました。私も見よう見まねで、ビスケットをカプチーノに浸して食べてみたら、まぁおいしいこと!
 帰国した後も、イタリアのレシピブックに載っていたビスケット「カントゥッティ」(次のお写真)を作ることがあります。私なりにアレンジしたものを紹介します。

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【材料】薄力粉:125g、お砂糖:85g、たまご:1個、アーモンド:20g、くるみ:20g、レーズン:20g、ベーキングパウダー:小さじ1/4、バニラエッセンス少々(なくても大丈夫)。

【作り方】①アーモンドとくるみを乾煎りして、風味が出たら火を止めて別の容器にとっておく。②レーズンは大きかったらカット、ナッツ類も大きめにカットしておく。③振るった薄力粉にベーキングパウダーを入れてフォークで混ぜる。卵を溶いておく。④粉類に材料を入れて、生地がまとまるまで混ぜる。⑤ナマコ型にまとめたら、180℃のオーブンで20分焼く。⑥生地が冷えて硬くなる前に包丁などで1.5cmくらいの幅にカットして、160℃で15分焼く(二度焼きでカリッカリに仕上げます)。⑦生地が冷えて固まったら出来上がり。

 今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。おいしいお料理を毎日作るように、毎日書き続けたいと思います。少しでも、読んでくれたあなたに伝わりますように。それでは、また明日。

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