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食材を買えるスマホアプリから価格について考える

今回は、以下書籍の内容にポケットマルシェをあてはめて、気づいたことをまとめます。

第1章の「ポジショニングと価格設定」では、一見何かと比較して高いと感じる商品でも、比較するもの次第で価値が変わるということが書かれていました。

ポケットマルシェは全国の農家・漁師さんと会話しながら食材を買えるスマホアプリ。スーパーで売っている食材と比較すると、量が多いので1つや1個単位で計算すると安いものもあるが、たいていパッと見の金額も(特に一人暮らしの私は)購入するハードルも高い。

一方で、このサービスのメリットは『全国の農家・漁師さんと会話しながら』という点なので、スーパーの食材と比較するのではなく「食育付きの食材(生産者の顔が見れるため、食材のありがたみなどを子どもにも伝えやすい)」「最高に美味しいレシピ付きの食材(生産者おすすめの食べ方などを教えてくれる)」と比較すると、安く感じることも増えます。

・商品に対する顧客の価値(ベネフィット)は主観的で、状況におおきく左右される。
・価格分析では、それによって満たされるニーズを根源的な「楽しさ」「苦しさの回避」まで掘り下げる。
※「価格の心理学」P.31より引用

とはいえ、価格も第一印象で決まったり、価格に対する思い込みはなかなか変えられないとも書かれているので、購入に踏み込めない人も多いはず。

そこでポイントとなるのが、第11章の「ティーパーティー効果」。
異なる顧客グループとの交流やロイヤルカスタマーなどのクチコミが購入の強い後押しとなることが書かれていました。

ポケットマルシェでも、各生産者の方ごとに用意されているコミュニティがあり(掲示板のようなもの)実際に受け取ったユーザーから『みずみずしくて美味しかったです』『ジューシー!』などのクチコミ多く投稿されています。「美味しそうだけれど、ちょっと高い」「実際どのように届けられるんだろう」「本当に美味しいかな、後悔しないかな」と感じているユーザーの背中をおしてくれることが分かります。

余談ですが、このコミュニティはユーザーの背中をおすだけでなく、生産者の心の支えにもなるそうです。多くの生産者は、消費者の直接的な声が聞きづらいため、ここでの交流を好んでいると聞いたことがあります。

実際に、以前パセリ農家さんが食事の彩りと認識されて残ったパセリを見て「今年は特に美味しくできたと思ったのになぁ」と言っていたことを聞いたことがあります。そのパセリ農家さんも、ここでユーザーや消費者とつながって、美味しく食べている人の声が届くといいなぁ。

・消費者が新商品を詳しく知らない、あるいは支払うべき価格に自信がないときは、まわりの人たちの承認が強い後押しになる。
・その方法として立場の異なる顧客を集め、相互に接点を持つようにすればよい。あまり価格に敏感ではなく、すでに高い価格を支払っているグループと商品を試すつもりになっていないグループとの交流が効果的である。
※「価格の心理学」P.171より引用

そして、第17章で書かれている以下について。

・顧客層にあわせて価格設定を変えれば利益は増えるが、低価格の商品を購入して高価格で販売する第三者の「裁定取引」が生じる可能性がある。
・その直接的な対応が困難な場合は、明確に商品を差別化し、正規の購入ルートを守るような心情にさせなければならない。
※「価格の心理学」P.258より引用

「正規の購入ルートを守るような心情にさせる」は、結局熱狂やファンマーケティングの考え方に落ちるのかなとも思いました。自身が差別化し『よし、ここではなく正規ルートで!』とはなかなかならないと思うので、企業・ブランドへの愛着をますことが回り回って一番近道なのかなと。


商品や製品戦略も含めて、体験価値や心理的な充足がキーワードになるし、ファンを軸にした考え方に戻るあたり……めぐりめぐって戻ってきた感がすごい。