ことの発端_その1

お金に汚い人と一緒に仕事をしてはいけない。
特に、経済的に困窮していて、お金に汚い個人事業主とは絶対に一緒に仕事をしてはいけない。
何らかの形で金銭トラブルが生じる危険性が高いからだ。

神奈川で、大島紬の機織りをしている女性がいる。
彼女は、奄美大島で3年半に渡り修行を積んだあと、地元に帰って築50年の小さな平屋を借り、奄美大島から持ち帰った織機で機織りを続けている。
大島紬は、世界三大織物の一つと言われるほど緻密で素晴らしい織物であるが、職人の置かれた状況はとても厳しい。
3か月かけて1反織っても、工賃は数万円から10万円程度であり、機織りだけで生活をすることは非常に厳しい。
それでも大島紬を愛してやまない彼女は、アルバイトをかけもちし、爪に火をともすように切り詰めた生活をしながら、機織りを続けている。

ある時、彼女は商工会の異業種交流会で知り合ったコンサルタント(以下「コンサル」)に仕事を依頼することとなった。
また、それから少し経ってから、コンサルの発案で「応援アワード2023」というものにエントリーすることになった。
応援アワードはコンサル名義でエントリーしているが、内容は「1300年続く伝統工芸を事業として確立させたい」というものであり、彼女に対する応援を呼びかけるものであった。

エントリーした者と応援対象が異なっていたことが「まさに応援アワードの趣旨に添うものである」として審査員の共感を呼び、2人は見事にグランプリを獲得したが、後々これが原因でややこしい事態となった。

授賞式でも受賞後の祝賀会でも、彼女が注目の的となった。
グランプリを獲得したプレゼンの応援対象が彼女だったのだから、この結果は当然であろう。
しかし、賞金の30万円はエントリー者であるコンサルに手渡された。
賞金の名目は「応援活動費」であり、主催者としては、コンサルがその30万円を何らかの形で彼女を応援する活動に使うことを想定していたのであろう。

しかし、後日コンサルは「今回は僕の発案なので、30万円のうちの10万円は僕が貰います。10万円は今渡すので生活費の足しにでもしてください。残りの10万円は大島紬のことに使いましょう。」と勝手に決めた。
そして、グランプリを獲得したことをきっかけに出資者を募ることができそうだと見込み、自分が事業計画を書くと言い出した。
ただし、「事業計画なんて書いたことがありません」という言葉を添えて……。

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