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梅雨でも安心! 木綿の着物

明日7月3日から、しばらくお天気はぐづつく見込みだ。
僕は、28年前の「着物宣言」当初、梅雨の時に着物を着るのに一番困った。
正直、何を着ていいか分からないのだ。

その当時は、凄いこだわりがあって、6月は透けない着物、そして7月・8月と透ける着物という風に考えていた。というか、聞き伝えで、言われて通りにやっていた。ゆえに、風通しの良い小千谷ちぢみなどの麻の着物は、7月に入ってからというか、梅雨明けからと思っていた。

梅雨に着る着物は、雨に濡れても良いのがいい。
正絹の着物は、縮んだりするので不安だ。
京都の仕入先は、サマーウールをすすめてくれた。
買い物好きなので、まとめて5反買った。
着物を自分で着ない問屋さんは、嬉しそうに伝票を切った。
自分用の着物だが、「急品」扱いで仕立に回した。
首の周りがチカチカして、着る気にもなれなかった。


京都の別の問屋さんより、福岡県久留米市の「久留米絣」の着物を勧めてもらった。「文人絣/ぶんじんがすり」だ。それは、書生絣(しょせいかすり)などとも呼ばれ、男物の着物地として使われることの多かった柄だ。 もの書きさん(作家)などが好んで着られていたことから、この名前がついたといわれている。

木綿の中でも、とろんとした感じで風合いがものすごくよい。
薄手の生地なのに、生地自体にハリがある。
ずっと着ていても、ヒザが浮くわけでもない。
もちろん木綿なので、小じわがよるが、その小じわも愛らしい。

この文人絣に出会ってから、梅雨の恐怖が無くなった。
「着物が雨に濡れても大丈夫」という安心感に変わった。
この着物があったからこそ、梅雨を過ごせたのかもしれない。
汗も吸ってくれるし、十何年も丸ごと水洗いしてもほとんど縮まない。
日本の風土に合った綿100%の着物は、誠に心地よい。

文人絣などの木綿の着物は、手ごろで本当に着やすい。
しかし、大手デパートなどの呉服店から姿を消しているのは寂しい限りである。正直、木綿の着ごこちの良さを知っている店員の方が珍しいかもしれない。
「雨垂れ石を穿(うが)つ」という諺がある。どんなに小さな力でも根気よく続けていれば、いつか成果が得られるということのたとえだ。雨にも負けず。着物が暮らしの中に、溶け込んでいくその日がくるのを願ってやまない。

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