見出し画像

ご存知ですか? 着物や帯のフルオーダーができることを。

着物や帯が、きもの専門店でフルオーダーできることをご存知でしょうか?
そのことを着物業界では、「おあつらえ」と言っています。
地色を変えたりするのではなく、図案を一から考え、ゼロから創り出すことができるのです。


今回は、お馴染みの「まさこ様」と、2人羽織でお創りしている「ミモザの染め帯」のことをお伝えさせていただきます。
着物ライフを楽しむ一つの方法として、ぜひ知っておいてください。


1)出会い

まさこ様との出会いは、かれこれ15年以上前のことでしょうか。熊本県伝統工芸館で「染織工芸作家展」にお越しいただいたのが初めてでした。その際、素敵な百入茶(ももしおちゃ)色=黒緑色の「飛びの結城紬」(100細工)のご縁をいただきました。

織物が大好きなまさこ様。みさやま紬・士乎路紬・大島紬など、ずっと変わらぬご縁を頂き、昨年の僕の還暦パーティに2回もご参加頂いた、和の國にとってはかけがえのないお客様のお一人です。

)「ミモザの帯を締めてみたいの!」

画像5

「私、可愛らしいミモザかアザミの帯を締めてみたいの。」とのお声を頂戴しました。
早速、京都の仕入先4件に電話を入れました。しかし、「昔、アザミの帯は見たことあるけど、ミモザは最近見ないですね!」ということでした。

そこで、「よし、無かったら創ろう!」ということになりました。
それこそ20年以上前に、長男が書いた「ごんぎつね」の読書感想画をモチーフに製作した染名古屋帯の記憶が蘇ってきました。その帯が、和の國で初めての別注品でした。

3)一番大切なのは、染の職先選び

画像6

フルオーダーする中で、最も大事なのが、京都の「染の職先」を選ぶこと。美智子上皇后さまご愛用の「のり糸目友禅」の職先もあれば、「ろうけつ染」などをなさる職先もあれば、「型染め」や「色無地染」が得意な職先もあります。
そのような中で今回は、何度もオーダーをお願いしている「京都・染の川勝」さんにお願いすることにしました。その一番の理由は、阿部さんというローケツ染めの繊細で美しい絵を描かれる方にお願いできるからです。


4)まずは、お写真。そして下絵を。

画像1

まずは、どんなイメージなのか?
ネットで、図案になりそうなミモザの写真を3点選び、まさこ様にご覧いただきました。
お好みの柄がありました。それが、この上の写真です。

「ミモザだけでは面白くなく、猫ちゃんをどこかワインポイントで入れたい!」とのこと。「たれ先(お尻にくる場所)にどうですか?」とお話したら、「それ素敵!」と即決。ご要望を染の川勝さんにしっかりと伝え、図案紙に下絵をかいてもらいました。
もちろんネコちゃんの絵も、ネット検索の中で、お好みのシルエットを選んでもらったのが、この写真です。

画像4



約一週間後、図案が届いたのでご連絡すると、早速ご来店いただきました。
大きい四角の下絵がお太鼓の柄です。
「私小柄なので、もう少し全体を小さくしてほしい。」から会話がスタート。そして話がこのようにまとまりました。

1)図案の中にミモザが入るように。(左横に、はみ出ない)
2)柄を少し小さ目に。(80%〜90%に縮小)
3)ネコちゃんは裏から見た形にして、ミモザを見上げるように。


画像2


下記の写真は、前の柄。ちょうど上腹の場所となります。
真ん中の線が、名古屋帯を半分に折る場所となります。

画像4

その要望は、二つです。
・こちらも小さく(80%)
・関西腹(写真下の方)のミモザを左にずらし、夫婦ネコちゃんのシルエットを入れる。

5)図案を持って、早速京都へ。

まさこ様にお越しいただいたのは、過日・1月10日成人の日。その日の夕刻から京都に入る予定をしていました。ナイスタイミング。まさこ様からお聞きしたご提案を胸に、図案を持っていきました。

翌日は、早速染の川勝さんと、ひざを突き合わせての会話です。
図案を、90%と80%に縮小してもらい、お太鼓の柄は90%ぐらいが一番ベストであろう、前腹は80%ぐらいで、再度書いてもらうことになりました。もちろん、その他の要望も伝えました。


6)2回目、出来上がった図案がコレ!

それから5日程経ち、2回目の図案が一昨日、京都から届きました。
まさこ様も、時間をマネージして、本日お越しになりました。

画像7

画像8


7)大事なのが、染める生地です。

前腹のネコちゃんの場所を少しずらすだとか、ほぼ、図案は決まりました。そこで、もう一つ大事なのが生地選びです。
生地も様々。塩瀬羽二重というつるんとした生地から、凹凸があるちりめん生地、そして紬の生地など様々あります。

まさこ様にお尋ねすると、「型絵染の大橋保太さんの帯が締めやすかった!」とのことでしたので、その生地風は覚えていますので、真綿紬ではない、少しシャリ感のある紬の帯地で染め出すことにしました。


8)「地色」ですべてが違ってきます。

最後に、もう一つ大事なのが「地色」です。ミモザのお花の可愛らしい黄色に対しての地色のバランスはとっても大事です。「透明感のあるグレー系もお洒落だし、水色系も、、、」と思い、似たイメージの反物をお借りしてきました。

「水色系の方が、私が持っている着物にも合わせやすい!」とのことで、目出度く、柄・生地、そして地色も決まりました。
まさこ様は、「こーんなに我がまま言って良いのかな?申し訳ない気がします。」とおっしゃいました。

しかしながら、僕たちも楽しく、コトが運んでいてとっても嬉しいです。
我がままなお客様、大好きです!
ご要望をカタチにしつつ、より良いものを作り上げていくのが、私たちの役目です。

9)3月には、フルオーダーの帯完成します!

今回は、私たちがやっている裏側のこと、お伝えさせて頂きました。
3月には、帯が出来上がってきます。
ぜひ、ご一緒に、楽しみにしていてください。

あなた様が、誰も持っていないモノを創るとしたら、どんなものをモチーフに生み出していきますか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?