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【企業案件がもらえる絵のスキル】イラスト上達の道しるべ【その7】


商業イラストを描きたい!


皆さまはいわゆる企業案件をお受けしたことはございますでしょうか?

わたくしは若いころアニメーターをしておりましたので、絵のお仕事としては商業がスタートでございます。個人様のご依頼を受け始めたのは最近のことです。

最近はXなどで神絵師なる方々が人気のVtuberさんを描いたり、イラスト展をされたりと、華々しいご活躍を目にしてとても素晴らしいですね。

しかし、皆さまはご存じでしょうか?

実はイラストレーターというのはそういった華やかなご活躍をされている方はごく一部で、表に出ない方々がほとんどなのだということを。

イラストの個性やご本人のカリスマ性で売っている方々のイラストをいくらご覧になって、マネしてみても、なかなか商業のご依頼が来ない・・・ということになっておりませんか?

せっかくバズったのにお声がけが個人様ばかり。フォロワーが万超えしているのに来月のお仕事が決まっていない・・・。

商業のイラストを描くというのはちょっと特殊でございますので、ただバズるような絵を描ければ良いとはなりません。

今回は「商業案件が欲しい!」といった方向けに、必要な条件や商業案件を頂きやすい絵について考えて参ります。

お役に立てば幸いでございます。


こちらの記事はIP案件のことをメインに取り扱っております。企業案件にもたくさんの種類がありますので、これだけがすべてではありません。

分析の方法としてお役立て頂けましたらと思っておりますので、誤解なきように宜しくお願い致します。



商業で必要なスキルのポイント

さて、常々申しておりますがわたくしあまり画力が高くございません。笑

というのもずっとアニメーターをしておりましたので、「早く効率的に描く」という部分を追求しており、美しい一枚絵を描くという訓練が不足しております。

最近は少しずつ良くなっておりますが、それでも客観的に見て神絵師の皆さんほどはまだ描けてないのではないでしょうか?(自分では素晴らしいと自画自賛しておりますし周りにも言ってますが。笑)

ですが、企業様とお仕事を致しますと必ず2回目のご依頼がございます。

初めは人手不足が深刻なんだなー・・・と思っておりましたが、イラストの仕事をしたい人は山ほどいらっしゃるので、それだけが理由だとちょっと変だなと思われますよね。

疑問に思ったことは分析しますのがわたくしの利点。

人気のあるskeb絵師さんなどで商業はされてないと思われる方のイラストを分析し、次に商業のイラスト(ゲームやグッズなど自分が受注している関連のもの)を分析して違いを書き出してみました。

・線画の違い
・塗り方の多様性
・平均との差
・時間

このあたりが如実に違いましてございますのでご説明致しましょう。

1.線画

こちらは単純に「線が綺麗かどうか?」でございます。

これは一般的に魅力的な線とかそういった話ではなく、拡大してみても乱れずに機械で描いたように描けているか?といった点でございます。

こちらはわたくしのイラストも参考になりますのでご覧下さいませ。

商業以外の作品の線

こちらが普段のコミッションなど商業以外の線です。勢いやその時にしか描けない一筆を意識しており、拡大すると乱れがございます。絵としては魅力溢れる仕上がりにもなりますしわたくしは好きな描き方です。


商業用に納品する線

続いては商業で描いた時の線。こちらは拡大しましても滑らかで、液溜まりもなく、均一な線が引けています。若干の強弱もございますがあくまでも均一な状態から逸脱しないような線です。これは長い線や緩いカーブなど描画ツールを上手く使って描いているのでそうなっております。

線が綺麗だと何か良いかと申しますれば、「統一感が出せる」「次工程以降の編集や加工が簡単になる」「修正がしやすい」といったことが挙げられます。

特に商業で必須な事柄として特徴的なものが「統一感」です。これは同じ作品に何人もの人が関わる以上必須の条件となります。

この立ち絵はすごい線ががっしり太くて勢いがあるけど、こっちの立ち絵になると急に繊細なタッチになる、等ということがありますと違和感がございます。世界観の統一というのは作品を作り上げるうえで重要です。

では、何に合わせるのが簡単か?と考えますと「一般的に綺麗である」状態に合わせるのが一番簡単であると言えます。

2.塗り方

商業のイラストで一般的に多いのがIP案件と呼ばれるものでございます。メインイラストレーターではなくて、社内イラストレーターさんや外注の方が作業するのが主にこちらでしょう。

絵柄寄せと申しましたらわかりやすいでしょうか。元々あるキャラクターを魅力的かつそっくりに描くというお仕事でございます。

この「そっくり」というので一番目を引く部分が塗りでございます。

どんなに形がそっくりに描けていましても、塗りの印象が違いますと全く違うキャラクターに見えてしまいます。ですので、塗りを合わせる技術が非常に大切になって参ります。

特にゲームなどのお仕事でメインのスチルやレアリティの高いキャラの仕事をもらおうとしますと、ただ寄せて塗れているだけではなくリッチに見栄えがするように描けないとなりません。

さらに、会社にお勤めでない方の場合は恐らく練習期間はございません。その会社にお勤めでしたら、会社のデザインを描けるようにと練習する事はかも知れませんが(アニメーターの時に最初クリンナップの仕事をこなすような感じで)、いきなり塗らなくてはならない場合が多いです。

わたくしもいつも一発勝負ですので、苦手な塗りですと差し戻しや大幅な修正を頂くことがございます。

特に、影、ハイライト、目、色調整、が大切になって参ります。

影塗りはメインイラストレーターさんの個性が出る部分ですので、ここが真似できないと厳しいと思われます。どのように影入れをされているのかよく観察して、ブラシの使い方やぼかし方などを真似る必要がございます。

ハイライトは描き方が決まっていることがほとんどです。間違えると全然印象が違いますし、上手く入ってないとダサくなってしまいます。

目は言わずもがなで、一番修正されがちなところです。塗り方を教えて頂けたら一番良いのですが、普通に資料にあるのを真似してね!ということがほとんどでございます。レイヤー分けされたイラストを頂けることは外注ではほぼございません。(情報漏洩を防ぐためにも致し方ないですね。)

色調整は最終的な世界観の合わせでございます。色相を調整したり明るさを出したり、こちらは会社様のほうで最終的に合わせて頂く事が多いですが、あまりにも色調が違う場合は調整にも限度がございますので差し戻されるでしょう。

そして一番苦労致しますのがレイヤー構成でございます。

こちら指定がある場合が多く「ここに特殊レイヤーは利用しないで下さい」「構成は必ず髪、顔、肌、の順になるようにファイル分けして下さい」「肌に乗算レイヤーを利用しないで下さい」等など・・・。

普段の塗り方が使えない!という場合も多く、特に特殊レイヤーがNGのものがとてもきついですね。通常レイヤーでどうやって同じ色を表現するか、工夫する必要がございますので大変時間がかかります。

3.平均との差

これは何かと申しましたら「いかに平均に近い絵を描けるか」という事でございます。

皆さま、絵は個性的であったほうが良いと思い込んでおりませんか?もちろんそれも一つの魅力であり技術でございます。が、商業の方に行かれるならば平均的な絵を描ける能力が必要でございます。

「デッサンがとれている」「誰が見ても違和感がない」「みんなが描けるデザイン性」「整っていて綺麗」こういった部分がクリアできるかです。

実はこれがとても難しいのです!

何故ならば、平均的な絵というのは全部平均以上できなければ描けないからでございます。要するに「絵が上手い」人でないと描けないのです。

イラストレーターさんは皆さま絵がお上手です。ですが、実は個性的な絵柄の方はいわゆる「上手い」と違うことがございます。ご自身の芸術性を高められているので、確かに素晴らしいのですが他の人が真似できないものは本当の「上手い」ではないのでございます。

それは個性であり魅力でありカリスマ性ですが、平均というのはそことは違った才能が必要となります。

わたくしは画力は高くはございませんが、平均以上は描けているということだと思われます。デッサン、パース、レイヤー構成など、とりあえず「仕事で使えるレベル」に達しております。

ひとまずは「正しく絵を描ける」レベルまで持って来れましたら、ある程度営業をかけるなりすればお仕事ゲットでございます。

偉そうにと思われるかもしれませんが、営業をかけたりSNSでバズを量産しても企業の担当者様からご連絡がない・・・という方は恐らくこのレベルにまだ達してないのではと考えられます。

とりあえずは、まず冷静にご自分の素晴らしいイラストをよく観察し、一般的に商業で使用されている絵のレベルと照らし合わせてみましょう。

あなたの絵は素晴らしいには違いないのですが、技術面やテクニックで少々スキルが足らないかも?と感じましたら、そこをできるようにすれば良いだけです。頑張って参りましょう!

4.時間

兼業でやっておりますとものすごく時間が足りません。取引先の方はご理解下さっており、納期も長めにして下さいますがギリギリなのに変わりございません。

参考までに、わたくしが時間が無くて受けきれなかったご案件をご紹介致しましょう。

その1. webtoonの漫画案件
5回くらいお話し頂きまして、本当に申し訳ないと思いつつお断り致しました。こちら平日締め切りで、単位も数日など非常に短期間となっておりましたので「無理だな」と判断致しました。ちなみに線画でお話を頂いておりました。他の工程はどうか分かりませんが、ペースはイラストより早いと思われます。

その2.小説表紙系
実はやったことがあるのですが、ありたいていに申しまして揉めましてございます。別に怒ったりはしておりませんし良いのですが、事前のお話と実作業の量が違っており、徹夜したり有休を使用したりして何とかしたにも関わらず追加の料金も交渉に応じてもらえませんでしたので以降お断りしております。

その3.配信者様の専属イラスト
こちらは企業様経由のお話でしたが、スケジュールがそれを入れると全振りという感じで他のお仕事やコミッションができず、報酬も絶妙なラインでしたのでお断り致しました。もしかしたら公開案件となっていたかも知れませんので実績としては低価格でも良いお仕事かも知れませんね。兼業でなければやっておりました。

その4.限定イベントなどの特急依頼
恐らくイラストレーターが見つからないか企画段階でスケジュールがギリギリになったかで大急ぎで描かないといけない案件でございます。社内の方が対応されることが多いのではと思いますが、それも無理だと外注に回ってきます。1週間など超短期でスチル絵などを仕上げないとならず、お力になれない事が多いです。

このように、時間との勝負というところがございます。

お仕事のチャンスを逃す事になりますので、本来は全力でお受けすべきと思いますが、わたくしは会社員でもあり主婦でもあり、イラストレーターはわたくしの一部分でしかございません。

そんなに頑張らなくても、楽しんでできる範囲で良いと思っておりますのでゆるーい感じでございます。

本業一本で食べていかれる!という方はわたくしのスタイルは真似されませんように。全力でお受け致しましょう。

最後に一番大切なこと

ここまで色々と書いて参りましたが、何より大切なことがございます。

報・連・相!でございます!!

これは以前からわたくしずっと申しておりますが、これができないとご自身も困りますし、お取引様も困ります。わたくし本業が事務方ですので、部下にもこれは厳しく教えております。

ミスがあったり、遅れが生じたり、そういった時こそいち早く連絡すべきなのに怒られるかも・・・と連絡を入れないともっと事態は悪化します。

お取引先のご担当者様の電話番号が分かれば、まずかける。出なかったらSMSで一報を入れて折り返しを待つ。メールも同時にしておく。

こういった事をできない方が本当に多いと感じます。クリエイターの方は会社に勤めた経験がなかったりするので、フリーランスの方は特に意識をしっかりされた方がよろしいと存じます。

わたくしはかなり密に連絡を取りますし、お取引先が不安に思う要素が極力ないように気を配っております。そういった事ができるだけで、信頼を得ることができるのです。簡単なことでございましょう?

絵を描くスキルを身に付けるよりずっと簡単に誰でもできます。今日からしっかりご連絡を致しましょう。


実は以前からこういった事を聞きたいとメールを頂くことがございました。せっかくなのでシェアしようと記事に致しました。以前も度々書いておりますが、より詳細にしたつもりです。

この記事で一人でも商業案件をゲットして、人生のステップアップにお役立て頂けましたら幸いです。

お読み下さりありがとうございました。



https://twitter.com/yuapple241


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