メディア業界分析(顧客の意思決定からの考察)

目的

メディア業界は「情報を売ることが一つの価値である」。現在は情報化社会となり情報が非常に重要になっている。また、誰もがスマートフォンから情報を発信することが出来、本来のメディアの役割が曖昧になっている。そのため、この記事では広告主(企業)、視聴者(消費者)、メディア企業の三社の意思決定の視点から、メディアの役割を考察した。


メディア業界について

メディア業界とは、製品を知らせたい企業(広告主)と製品を知りたい人(消費者)を結びつけるサービスである。いわば、広告主と消費者の情報のマッチングをする役目である。昔から存在をしている新聞などがその役目を果たしており、現在ではテレビCMやインターネットなどデジタル化がされている。


日本の広告市場

2020の広告費全体の内訳は総額6.2兆円である。内訳としてデジタル広告が36%。テレビ広告費27%、新聞広告費6%ダイレクトメール広告費5%、雑誌広告費2%である。驚くべきことに、近年では、テレビ広告費よりもデジタル広告費の方が上回っている状態である。

テレビ広告費をデジタル広告費を上回ったのは2018年~2019年にかけてであり2010年のころは約二倍の差があったが、そこから10年かからずに逆転をされてしまった。その理由として、現在のテレビとインターネットの利用状況を確認すると、テレビは減少傾向にあるが、インターネットの利用率は年々伸びている。メディアはいかに視聴者に情報を届けるかどうかが重要となるので、このような状況を仕方ないと考えた。

スクリーンショット (135)


内閣官房デジタル市場調査https://www.soumu.go.jp/main_content/000750217.pdf

画像3

平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書
総務省情報通信政策研究所
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01iicp01_02000082.html


メディア業界の意思決定のビジネスモデル

以下からは、メディア業界がどのような広告主と視聴者の意思決定のニーズを結び付けているかを分析したものである。広告主の意思決定とは、「どのような要素を満たせればメディアを活用して広告を出すと決断をするのか」である。消費者の意思決定とは、「どのような情報を求め、どのような情報を受け取った時に購入をする決断をするのか」である。


「顧客の意思決定タイプ」

広告主の意思決定タイプは大きく分けて4タイプである。

・一つ目、ある程度の費用を投下出来、広く認知を生みたい広告を載せたい広告主。

・二つ目、費用をあまり投下したくなく、広く認知を生む広告を載せたい広告主。

・三つ目、あまり費用を投下したくなく、狭い範囲の人にダイレクトに届けたい広告を載せたい広告主。

・四つ目、費用をあまり投下したくなく、興味がある人に届けたい。費用対効果を気にする広告主。


「高コスト掲載型」

〇広告主

一つ目のお金を持っており、広く認知を生みたい広告を載せたいタイプである。このようなタイプは莫大な金額を使ってでも、一気に自社の事業やサービスを認知させたい顧客である。広告を載せる理由として、自社のサービスメージアップをはじめ、多くの人に認識を持ってもらう事である。

このタイプはテレビCMや新聞などの「掲載型」を活用している。その理由として、新聞やテレビCMは比較的に昔から存在しており、どの年代をとっても馴染みがある。そのため、老若男女問わず誰もが目にすることが出来る。特にテレビは、映像として視聴者に広告を出すので製品のイメージが付きやすい事がメリットとして挙げられる。

〇メディア

このような広告主の意思決定者に対して、テレビCMなどのメディアのビジネス構造は、放送時間とCMの長さによって対価を得る仕組みである。

例えば、「ゴールデンといわれるテレビの視聴者が多い19-22時の時間帯のCM料金は一本につき200万円ほどだが、深夜のCMとなると40万円ほどの差がある。」視聴者が多い時間帯になればなるほど、CMを放送する売り上げを上げることが出来る。

そのため、テレビのビジネス構造上売上を上げるためには、いかにCMの長さを長くしてもらう、もしくは、視聴率を上げる事によりゴールデンの時間帯のように放送時間そのものの価値を上げる事である。したがって、テレビなどのメディアは視聴率を稼ぐために面白い番組を作る事に必死になっている。(最近では鬼滅の刃無限列車の広告料は高そうである)テレビをCMを活用する企業は人材業界だとリクルートである。

〇視聴者

また、視聴者側の意思決定は、基本的に受動的であり、商品のイメージに左右をされる。そのため、自らの意思で商品を購入するというよりも、CMなどの出来により左右をされる。

例えば、テレビをたまたま見ていた時に、良い香りのしそうな柔軟剤のCMが放送されていたから、次回購入してみようなどがあげられる。

視聴者側の意思決定を偶発的に生むことが出来ることが強みである。

〇まとめ

まとめると、メディアを通じて大量の人に情報を届け、偶発的な意思決定を大量に生むことに強みを持っているビジネスモデルである。


「低コスト掲載型」

〇広告主

二つ目は、お金を持っていないが、広く広告を載せたいタイプである。広告主の思考としてお金はないけど、幅広い人に届けたい人である。目的として多くの人に目を触れる機会を創出することにフォーカスをしている。このような広告主の場合は、「成果報酬型」のインターネットのメディアを活用することが多い。無料で掲載をすることが出来るため、広告主はメディアに広告を出すことが出来、その結果、認知を広めることができる。さらに、費用の面は成果報酬型のため、成果が出るまで金銭を払う必要が無い。

このような形態を行っているビジネスモデルはマッハバイトなどが上がられる。人材では採用をしたときにはじめて対価を払う仕組みである。

〇メディア

このメディアのビジネスモデルは、いかに広告を載せた人が採用数を増やすのかと広告の表示の仕方により、金銭を稼ぐ必要がある。

例えば、無料で広告を載せることが出来ても、自分の広告が何番目に、表示されるのかまではコントロールすることはできない。広告が上位表示されればされるほど、閲覧者が増えるため、応募に繋がりやすくなる。そのため、無料での掲載プラントは別に、広告が上位表示になるための有料会員プランなどを用意して、採用が出来たとき以外にも、利益が出る仕組みを作っている。

〇視聴者

この場合は、広告を見る側の意思決定はテレビCMなどと違い、ある程度能動的である。また、多くの選択肢から比較検討をしてから意思決定をしたいという心理を持っている。

例えば、バイトを選びたいけど、そもそもどんなバイトがあるのかが分からない。家から近いバイトは何があるのだろう?などの意思はある。その中から、自分に合ったバイトを探している状態であり、掲載をされている選択肢の中から選びバイトをするという意思決定をする。

〇まとめ

まとめると、ターゲットを絞り、ある程度能動的な視聴者に対して、費用をあまりかげずに、認識をしてもらうことが出来る構造である。(ただし、大量採用などをしてしまうと逆にお金がかかってしまう場合がある。)


「成果報酬ダイレクト型」

〇広告主

三つめは、広告主の情報を、狭い範囲の人にダイレクトに届けるインターネット型のメディアである。これはビジネスのモデルでは成果報酬型を取っているが、形態は異なる。ある程度ターゲットを絞り、今までは広告主がメディアで広告だし、視聴者が広告を見て、購入するかの意思決定をしている。しかし、今回の場合は、視聴者も広告主もメディアに情報を記載し、広告主が視聴者を選別して、広告を直接届ける仕組みである。

例えば、オファーボックスなどがその体制を取っている。学生などの本来であれば視聴者側が自分の情報を記載する。そして、本来であれば広告主が学生の情報を閲覧してから、広告を視聴者に届けるかどうかを判断する。構造は同じ成果報酬型のため、内定承諾をしたときに、メディアは利益を得ることが出来る構造である。

〇メディア

メディア側が利益を出すためには、広告主が視聴者にアプローチをする方法を有料にすることで、企業側がアプローチをするたびに利益が発生する。また商品を購入する時に利益が発生するため、メディアは、視聴者の数と質を増やす事と広告主のアプローチを増加させることにより、売上が変動する。

〇視聴者

このタイプの視聴者の意思決定は、選択肢が多すぎるため自分では意思決定ができない人。もしくは、スカウトをもらう事により、自分では絶対にしないであろう選択肢を取ってみたいと考えている者である。

〇まとめ

まとめると、広告主と視聴者を結びつける仕組みが成果報酬型のスカウト型のビジネスモデルである。


「低コストクリック型」

〇広告主

四つ目は費用をあまり投下したくないがなるべく広く広告を打ち、興味がある人に見てもらいたい広告主が活用するメディアである。

費用は投下したくないが、認知をしてもらいたい。さらに、費用対効果を知ることにより、本当に広告が機能をしているのかを知りたい広告主である。

広告がどれくらい機能しているのかの計測は難しい。テレビCMであえば、なおさらである。そのようなブラックボックスとなっている部分がある限り、メディアに記載をすることはむずかしい広告主が存在する。

このタイプには合わせるために、インターネットを使用したクリック型のメディアが存在する。広告主がメディアに広告を載せる事にはあまり費用が掛からないようにし、視聴者が広告を見て「クリック」をしたときにはじめて料金が発生する仕組みである。

このような仕組みであるため、広告主は比較的安価で広告を載せることが出来る事。さらに、実際に「クリック」をされた数や広告を見ている時間の長さで広告主がメディアを通じて広告した効果を観測することが出来る。

〇メディア

ビジネスモデルを運用するメディア側は、広告の大きさやクリックするにより自社の売り上げが変動する。そのため、広告主になるべく大きめの広告を作ってもらう事や、メディアを閲覧してくれる人を増やす事が売上アップにつながるビジネスモデルである。さらに近年では、視聴者の特性を分析してその人に会った広告を展示する仕組みがあるので、それらの技術の向上も売上アップに貢献をしている。

〇視聴者

視聴者側の意思決定として、あまり能動的ではなく、気になったから購入をしてみようという意思決定をして購入をする人が多い。AIなどが分析をして購入しやすい商品を提示してくれるため、テレビなどよりも偶発的に商品を購入する可能性が高い。

北の達人などがFacebookなどを通じて広告を出している。

〇まとめ

まとめると、効率よく広告を出したい広告主に向けたサービスであり、現代が主流となりつつある。

(参考までに)

スクリーンショット (136)

内閣官房デジタル市場調査https://www.soumu.go.jp/main_content/000750217.pdf

筆者がメディアの視聴者として考えた事

「テレビCM」

製品が映像として現れるため、製品に対して良いイメージが付きやすい。また、テレビCMが出来るくらいなので、企業としても資金力がある。もしくは、この商品にかけている思いが強いのだろうと考えた。また、CMの効果で周囲の友人もほとんどの人がその商品を知っている状態である。

しかし、購買意欲はそそられるものの、実際に自分に必要なものがCMとして見れるわけでないので、あまり購入をしようとは思わなかった。


「マッハバイト」

画像6

マッハバイト https://j-sen.jp/

多くの企業が乗っているため、バイトをするうえで探しやすいと思った。また、マッハバイトの特徴として、過去に祝い金をもらうことが出来るため、マッハバイトで申し込みをした方が良いのではないかと考えた。企業側に何とかして採用をしてもらおうという工夫も見られ、ビジネス構造をある程度理解しやすいと考えた。


「オファーボックス」

画像5

OfferBox https://offerbox.jp/

スカウトが来ることにより、スカウトが来ない限り自分では選択をしないであろう企業を知ることが出来て良かった。ただ、プロフィールの充実度合でスカウトの数などがだいぶ変わるため、プロフィールを充実させることは必須である。そのあたりを、コストだとかかる人もいる可能性がある。また、プロフィールを充実させればさせるほど、多くの企業からスカウトがきすぎてしまい、結局選ぶことが出来ない事が発生した。


Facebook広告」 

画像4

Facebook https://about.fb.com/ja/company-info/

自分の興味が在る広告を表ししてくれるので、他の広告とは違い興味は持ちやすかった。しかし、広告自体が邪魔になる時があることがあるため、不便になる時がある。

実際に私は一度もクリックをしたことが無い。(他のサイトで広告が巨大に表示されて、広告を消すボタン小さすぎて誤って押してしまったなどはある)



考察

ここまで分析をして考えた事として、情報が商品であった、メディア業界の競争は激しくなると考えた。IT化が進み情報化社会になり、どの企業もメディア事業を出来るようになり、競争がさらに激しくなると考えた。消費者の意思決定を分析しているときに、偶発的に目に入った広告から商品を購入する場合と、ある程度自らの意思で広告を見に行く場合がある考えた。

それに対する各企業の傾向として、近年メディア事業を始めた企業は、後者のある程度自らの意思で広告を見る人に向けにターゲットを絞って、ある特定の専門分野のメディア事業をしていると考えた。

一方で、ターゲットをあまり絞らずにテレビCMなどの様に、対マスに一気に広告を出すメディア企業は、大企業がメインであり、この傾向は変わらないのではないかと考えた。理由として、不特定多数の対マスにアプローチをする事が難しい事。偶発的にしか購買意欲をそそることがメインである事業に手を企業はあまりいないからだと考えた。また、IT化やAI化が進み、不特定多数という不確定要素に対するアプローチが今後は減少していくと考えた。


参考文献

・web担当Forum https://webtan.impress.co.jp/n/2020/10/16/37826

・公正取引委員会 デジタル広告の取引実態に関する中間報告書https://www.soumu.go.jp/main_content/000750217.pdf

・内閣官房デジタル市場競争本部事務局https://www.soumu.go.jp/main_content/000750217.pdf

・エンタメウィーク https://ent.smt.docomo.ne.jp/article/1204191

・ビジネス+IT https://www.sbbit.jp/article/cont1/33307?page=2

・サイバーバス https://www.cyberbuzz.co.jp/2020/10/research2020.html

・総務省コンテンツ市場規模https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd251910.html

・総務省 情報通信政策研究所 https://www.soumu.go.jp/iicp/chousakenkyu/data/research/survey/telecom/2014/2014media-soft_report.pdf

・ネオキャリア アルバイト求人サイト

 https://www.neo-career.co.jp/humanresource/knowhow/a-contents-parttime-arubaitokyuzinsaitohikaku-181116/

・PRTIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000007447.html

・NRI 2025年度までのICT・メディア市場の規模とトレンドを展望 https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2019/cc/1127_1

・マッハバイト https://j-sen.jp/

・OfferBox https://offerbox.jp/

・フジテレビ https://www.fujitv.co.jp/index.html

・Facebook https://about.fb.com/ja/company-info/



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?