相席

 今日も私は、同じ喫茶店で同じ席に座り、飲み飽きたフレントコーヒーを頼む。おそらく店長の遊び心で濁点の抜けたコーヒーは、旨味も一緒に抜けたようでただ苦い。
 私は待っている。偶然相席になったあの人を。
私の人生に彩りをくれた大恩人であり、それまでの価値観を破壊していった犯人を。
 分かってはいるのだ。偶然相席になっただけで、また同じ喫茶店で相席になることなど、あるわけがないのだ。
 だが、こうするしかないので、私は今日もあの日と同じ行為に勤しむ。もうすぐ日が落ちそうだ。

来店のベルが鳴る。

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